朝はどこからくるかしら。光を越えて、トラブルと共にやってくる。
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その夜。
「ねえ、アンちゃん。マーズさんはラーラさんを気に入ってたよね?」
「あア、そうだな。良いんじゃないか?レプトンの野郎が放置するのが悪いのさ。
ただ、マーズさんはラーラの見かけを気にいっただけだろ。メリイさんタイプだもんな。
こう言うのは周りが突くとロクなことにならないからな。」
そのまま、スヤァ。と寝てしまった。
次の日。三月十四日。
朝の十時。猫カフェの猫がニャーニャー、騒ぎ出した。
「おはようございます!」
「あれ?マーズさん?」
そこにはマーズさんが猫カフェ中の猫にスリスリニャーニャーと懐かれて猫まみれになっていた。
「アンディ様!UMAのローテーションなんですけどね、兄さんがモスマンも混ぜたらどうか?と。」
マーズさんが書類を持ってきた。
「打ち合わせのお時間ありますか?あと、サインを頂く書類も溜まっていて。」
「あー、すみません。わざわざ持って来ていただいて。」
アンちゃんは頭を掻いた。
「ちょっとね、㊙︎の書類もありますから。昨日サイン漏れがありまして。三月締めもあるので、すみません急ぎなので押しかけてしまいました。」
「ヤダ、本当にごめんなさいネ。」
アンディちゃんが手で顔を覆った。
「良いんですよ!最近お忙しかったんでしょ。
フィジーさんかな?彼女のことも兄から聞きました。
さて、ああ、猫ちゃんに書類をイタズラされるな。
隣りの事務所に行きますか?」
事務所の窓からランディ兄さんとメアリアンさんが顔を出す。
今日は占いの仕事がなくて、事務所で事務仕事をしてるんだな。
「あら、奥のレストラン部分へどうぞ。
事務所も取り散らかしておりますから。」
「モスマンはマーズさんの言うことを聞くんですか?」
「ええ大丈夫です。それに最近は他のUMAも動物達も更に言うことを聞いてくれるようになりました。ひとつですが歳を取ってチカラがついたんですかね。
はは。あとはアンディ様の筋トレのおかげで迫力もついたのかも。」
「ヤダ。褒めても何もでないわよ。」
「それでですね、UMAのローテなんですが…。」
ふんふん。私も後でミノちゃんに頼まないとな。
「後、こちらにサインを。」
「はい、はいっと。」
「あ、いけない。お茶もお出ししなくて。
何にしますか?」
「コーヒーをお願いします。」
アンちゃんが奥に目配せをしたので、ラーラさんがコーヒーをもって来た。
「これは!ラーラさん!」
ぱあっとマーズさんの表情が明るくなる。
やはり半分は彼女目当てで、来たんだな。
「昨日は色々案内していただいてありがとうございました。」
「いいえ!親戚役としては当然ですよ。私もこんな可愛い妹分ができて嬉しいですね!
こちらで、ずっと働いているのですか?」
「あー、ネモさんから聞いてるでしょ。あまり外での仕事はね。とりあえずしばらくは。」
アンちゃんが説明した。
そこでマーズさんの表情が曇った。
「……それは、ご苦労をされましたよね。ええ、兄から聞いておりますよ。」
そうだった!ブルーウォーターの血筋は可哀想な女性に弱かったなあ!
でもさ、ここは駆け込み寺というかシェルターがあるから、可哀想な女性は多いよね。
というかここの世界はまだまだ女性の地位が低いよ。
と、世の無情について考えていたら、ショコラさんが顔を出した。
「マーズ様。イリヤはサーカスで元気にやってますでしょうか?」
「ああ、ショコラさん。はい、もう花形スターですよ。空中ブランコも評判で。
相方はギガントから流れてきた軽業師なんですけどね、彼と良い感じになってます。」
「それは良かったです。」
そこで、マーズさんは思いついた!と言う顔をした。
「そうだ、ラーラさん。サーカスは見たことはおありで?」
「いいえ、ありませんけど。」
「では、ショコラさんと是非観にいらっしゃい。
御招待しますよ、今度兄さんがやる特別公演があるのですよ。はい、どうぞ。」
ペラリとチケットを四枚出す。
「ま、まあ!これはプラチナチケットじゃないの!こんないい席!」
目を見開くアンちゃん。
「あとはアンディ様とレイカさんの分ですよ。」
「ラーラさん、是非行きましょう。
ブルーウォーターの人が出る回はレアなのよ。
しかもネモさんが。一見の価値ありなの。見たくても券はなかなか取れなくってよ!」
「レイカちゃん、食いつくワね。」
アンちゃんが苦笑した。
「レイカさんがそう言うなら。」
ラーラさんは頷いた。
「ええ!すごい回ですごい席ですよ!私もイリヤに会いたいし。」
ショコラさんも目を輝かせている。
「悔しいですが、兄さんと私らとは動物の反応が雲泥の差なんですよ。」
マーズさんは微笑む。
「それでもネ、ブルーウォーター兄弟が出ると出ないでは大違いヨね。」
「ところでなんで特別公演なの?」
「アラン様のお子様が一歳でしょ。内外の要人がお祝いにこられます。そのもてなしの一環なんですよ。
グランディもギガントを吸収して、強力な国になって来てますし。」
ああ、確かに。この世界は一歳のお祝いには力が入っている。
乳児の死亡率は高いからだ。
おや、それじゃ選び取りはするのかな。
チケットをみたら、三月十八日だ。
お誕生日の次の日かな。
「流石にお子様たちは来られませんが、アラン様ご夫婦が来られる。
アンディ様が来てくだされば護衛になりますからね。」
「くくく。ちゃっかりしてるわね。アラン様が来られるからもちろん護衛はするつもりだったけどネ。
ま、ロンドがメインに護衛をするとは聞いているよ。」
「え、では私が行ったらマズイのでは?」
ラーラさんが尻込みをする。
「ふふふ、大丈夫ですよ。私が隣りに座りますから。
貴女の出自を探るものは蹴散らして見せます。
私の身内には誰も手を出しません。」
うわあ、グイグイくるなあ!マーズさん!
「それにね、」とショコラさんが言う。
「貴女は正直言ってメリイさん似の美少女にしか見えないわよ。そちらのご親戚かと探られるかもしれないけどさ。
それに、私達が外に出さなかったのは顔バレより、貴女の心を落ち着かせる為よ。
あまり人混みに出たくなかったんでしょ。
ここにこもっていると安心だものね。」
そしてチラリとマーズさんを見て、
「レプトン様とのデートも、郊外であまり人気が無いところだから行ったんでしょ。」
と言ってのけた。
うん?あらら。波風を立てようとしてるの?
アナタ?
何の牽制??ええ?わざわざレプトンさんの名前を出すなんて?
アンちゃん、下向いて面白そうに笑ってないで収めてよっ。
朝はどこから。ですね。タイトルネタ。
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