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続 グランディ王国物語  作者: 雷鳥文庫


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231/288

彼女の未来予想図。

 フィジーさんが涙で潤んだ瞳で私をじっと見つめる。

その、まばたきに、た、す、け、て。のサインを読み取る。

(ブレーキランプ五回ならあ、い、し、て、る。のサインだったな。)


やはりヤケになって殺してえ、なんて言っても生きていたいわよね。

それならその見かけをなんとかしないとね。


「うーん、そうですね。髪を切る事に抵抗ありますか?

多分病院かシェルターに入ってそれから身のふり方を考えるのだと思いますけど。縦ロールはもうやめていただいて、印象を変えましょうね?」

「なるほどレイカ。ア○・シャーリーも染めを失敗したらばっさり切ったわね。」

「ええ。それに短くしたら濃くなった気がしたと本に書いてありましたね。」


「やはり生かす方向なわけ?レイカちゃんならそう言うと思ったけどさ。」

アンちゃんがため息をつく。

「うん。気の毒な娘さんだし。姿を変えてなんか仕事してもらえばいいじゃないの。

それにこれからの染髪とメイクはエリーフラワー様に相談しましょう。」

「ネエ、眼鏡っ子もイインジャナイカ?」

「ああ、そうね。印象変わるわね。」


レプトンさんが口を開く。

「ただ、母には会わないように気をつけてもらえませんか?」

「そうだね。その姿を見せると荒れると思う。

どこか塔にでも監禁されて、出てこないのが望ましい。」

サードさんも口を揃える。

マザコンどもめ。

「ううう。私だって好きでこんな姿に生まれたのではありませんのに。」


「その姿に生まれたのが、罪なんだっ!」


その途端、ものすごい冷気が漂った。


「…サード君だっけ。好きでそんな見かけに生まれてないのは、私も同じさ。…それは罪なのかい?」


「え、え?リード様?!」

「…リード。」

王妃様が眉尻を下げた。

美しい王子様の本気の怒りが伝わってくる。


確かに言ってたな。

(……そんな顔で私を見るなよ、アンディ。

私だってな。好きでこんな風に生まれたわけじゃないんだ。小さい頃からそれなりに嫌な目にあってきたんだよ。)と。

第89話の、誰にだって〜に詳しいよ。


サードさん、地雷を踏んだな。


あたりに怒りのオーラが立ち込める。

気温が下がって来た気がするよ。これが土地神に愛されてると言う事か。


「リードサン。落ち着きなよ。ナンカ冷エテキタヨ!」

「そうよ、寒いわよ、リード。」


「ああっ!母上!すみません!」

リード様の表情が緩んだ。

「アンディ、何か母上に温かいものを!」

「はっ。すぐに。」


顔を青くして震えるグローリー兄弟。

「予想はつくだろうが。私も美し過ぎたから、変態の大人に追いかけ回されたのさ。

護衛が付いてる私でさえ、そうだったから彼女はもっと怖かったと思うよ。」

お茶を飲むリード様。落ち着かれたようだ。

「わかってくださいますかあ〜〜!」

「ああ。あとね、ラーラさんもそうだろ?」

「……ええ。」


王妃様が私をそろりと見る。

ええ〜。また私に背負いなげ〜じゃなくて丸投げ〜。

「こほん。もうショック療法でいきましょう。

ここに、マリーさんと学園長を呼ぶのです!

ロージイの顔を知ってるのはこの国ではその二人だけなんでしょ!そこでオッケーなら良いじゃないですか!?」

「れ、レイカさん、それは。」

驚くレプトンさん。

「あ、いいと思います。いつかバレるなら早めで。

彼女のことを隠していたら、却ってお母様は傷つくわ。

どうせシェルターにはいるのでしょ。きっとどこかで顔を合わせますもの。」

言い切るメリイさん。


「サードくうん?何か不満があるのかね?」

うわ。怒りのリード様、また降臨だ。

「……いいえ。」

「そうかい。不満はないんだね。別にいいんだよ。

嫌なら嫌で。ただキミは、この国にもう入れないだけさ。」


「に、兄さん!お詫びを!リード様!私も失言しました!申し訳ございませんっ!!」

「あ、レプトン君はいいよ。キミには気の毒をしたね。」

「 ? 」

ラーラさんが拗ねてる事に、リード様は責任を感じてるのね。

 

サードさんの顔は真っ青だ。

「お、お許しくださいませ。母のことを思っただけなのですが、言葉が過ぎましたっ!

このまま母やメリイに会えなくなるのは嫌でございます!どうか、お許しくださいませっ!」


「え?サード兄さん?オレは?」

目を見開くレプトンさん。


「そうか、わかったよ。母上に会えないと辛いもんね。」


「リード様……ありがとうございます。」

サードさんは涙を浮かべてる。


「ね、ねえ、兄さん?お、俺は?ねえっ!」

あー、わざと無視していじってるなあ。

やれやれ。男兄弟ってよくわからないわ。


「じゃアさ。メリイと一緒に二人ヲ迎えに行ッテクルヨ。パイセン、頼んます。」


キュウウン。


キューちゃん達は消えた。

この隙に空になったお皿を片付ける。

「ご馳走様です、レイカさん。」

「フルーツサンドって初めて食べたけど、いいわね。」

リード様やカレーヌ様達がお礼を言ってくださる。

さて学園長夫妻のためにもお茶の用意をするか。


「ネモ。この国に入れなくて弾かれるものは年間何人くらいいるのじゃ?」

「はっ。王妃様。百人は下りませぬ。」

「その中の1人という事にしておくか?」

「そう言うことになりますかねえ。彼女がここにいると親族にわかれば面倒ですかね。」


「そうだわ、フィジーさん。このメガネ試してみる?」

「カレーヌ様、これは?」

「ふふふ。お料理をするときに、油のはねや香辛料の刺激から目を守るために使っているのよ。だからね、度は入ってないわよ。」


…すごく激しい料理法をなさってるわね?


「あら、似合うかも?」

「おお、アラレちゃんのようじゃの。斉藤祐子?の様でもあるな。」

今日は飛びませんねー。ですね。

(ハンバーガーのCMです。)


そこへ蒼い光が満ちた。


キュー。

「ほほほ。皆様こんにちは。お久しぶりでございますわ。」

「皆様お集まりとのことで。拙者も馳せ参じましたでごわす。」

「あら、エリーフラワーさんにエドワード。」

「王妃様。ちょうど母と義父と一緒におられたので。」

困り顔のメリイさんだ。


……勝手についてきたんだな。

エリーフラワー様は誰にも止められない。

それにキューちゃんがエドワード様にスリスリしている。お気に入りだからな。連れて来ちゃうよね、

うん、仕方ない。


「ちょうど良かったの。この娘のメイクを頼もうと思っておったのじゃ。」

「あらあ!新顔さんですわね?私はエリーフラワー。ご存知?」

「おお、宜しくな。エドワードでごわす。」

「宜しくお願いしま…」

「何と!君はフィジー君じゃないか?」

被せるように発言する、学園長ことミッドランド氏。


「ええ!おわかりになるのですか?いつもと違う私なんですけども。」


「もちろんだよ。だって願書や生徒名簿には素顔で載っているんだよ。」


あー、そりゃそうだった。


「ええと?この方はどなた?バーバラに良く似てるけども。目の色が違うし、自信なさげな感じは、ロージイではないわね?」


「あ、母上。これは。」


「すすすす、すみません。私、フィジー・ダルカンと言うものなんですが、お目汚しをっ!

この髪、赤いのが目障りでごさんすよね?

すーぐチョッキンしてですね、染め染めしますからっ!

そ、そしたら某女優さんとは、似ても似つかニャイ感じになりますです、はい。

個人の感想ですが、実践済みなんですので!」


焦って弁解しているフィジーさん。テンパって言葉使いが変だよ。


「……はあ。そ、そうなの?

ん?フィジー・ダルカンとおっしゃった?貴女。」


「は、ハイですう。」


タラちゃん?


ぷっ。

そこでマリーさんが吹き出した。

「プークスクス。あ、あのけったいなポエムを書いた人?くくく。ふはは。ほほほ。」


あら、ツボに入ったみたい。

それに、プークスクスっていう人初めてみたな。

「母上?」

「ほら、レプトン。あの面白いポエムを書いてたのはこの人なんだって!」

「はい、さっき本人に確認?したような。」

「へえ、それでレプトンに直接求婚にきたのねえ?」

「ええ、そうでござんす。いえ、ございます。」

「ふーん、バーバラの親戚なの?そのお顔は。」

「そうみたいなんです。あちらの家から、三代前にお嫁に来たんではないかいな?です。ものすごい遺伝子のチカラですね。」


「は、母上。この娘の顔を見ても動じないのですか?」

「なんで?」

いきなり真顔になるマリーさん。

「だって、この人。似てはいるけど、あの2人とは、まったく違うじゃないの。オーラというか、色気がない。覇気もない。人を惹きつける誘蛾灯のようなフェロモンがないのよ。」

なんか凄くディスってるな。

「た、確かに?胸も腰もありませんね?」


「きいっ!レプトン様!ナインペタンはコンプレックスなんですのにいいい!」


泣き崩れるフィジーさん。感情の振り幅が激しい人だ。

「ナインペタンとは古い言い回しじゃのう。」

王妃様が感心しておられる。

「女性の体型をイジるなんて。最低ですわ。」

ラーラさんが冷たい目をレプトンさんに送る。

あーあ、好感度がまた落ちたよ。


「い、いや、すみませんでした。」

しょげるレプトンさんを尻目にエリーフラワー様が彼女の前に立つ。

「なるほど!ほほほ。今ので大体の話が飲み込めましたわ!

ざ・ちぇんじ!ですわね。」


氷室冴子さんの懐かしい小説のタイトルの様な事をいい、エリーフラワー様はフィジーさんを奥へ誘うのであった。

氷室冴子さん、好きでしたね。

なんて素敵にジャパネスクシリーズも良かったけど、

お母様との確執を書いた母子草も時々思いだします。



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― 新着の感想 ―
サード・レプトン兄弟、失策続き。 マザコンでシスコンだからある程度は仕方ないのかもしれないけど。人柄は良いはずなので、何とか今後挽回できるといいのですが。 髪を染めて切った後は、「赤褐色」になってい…
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