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素顔のままで。

誤字報告ありがとうございました。

 お白州ではなく、レストランの床に座らされたフィジーさん。ヘビに手と足を拘束されてるよ。

「殺して下さいませ。さあ!殺せ!」


くっ殺せではないのね。残念( ? )


「話にならんの。」

「とりあえずスネちゃま、軽く噛んでおやり。」

「……!」

見る見る大人しくなる。

「そなた、一体何がしたいのじゃ。家を出たのか、出されたのか。」

「大荷物だったらしいね。ウチの国に何の用だい。移住する気だったのか?神獣様達にケンカを売るとは命知らずだね。」

ネモさんが話しかける。

「…ですから、殺して下さいと申し上げました。」


リード様が前に立つ。


「ふうん。ではどう言う死因がいいかな?

このアンディに滅多刺しにしてもらう?」


アンちゃんがナイフをかざす。


「ネモさんに頼んでクマやハゲワシと遊んでもらう?ヘビに飲まれるのもいいかもかね?」


ネモさんが手を振るとヘビが何匹も現れる。


「あー、グランディの塀の外へ放りなげるかな?

ホワイトタイガーやオオカミや野犬がいるよ?

あとは、龍太郎君に火山に放り込んでもらってもいいんだよ。」


龍太郎君が羽を広げてる。俗に言うアジのひらきと言うポーズだ。鳥を飼ってる人にはお馴染みの奴だ。


リード様は凄みのある笑みを浮かべる。

「ねえ、誰がキミにグローリー家の事を悪く吹き込んだの?あ、ご婦人方は退室してもらおうかな。」


「…ここに来ると死ねると思いましたの。ダルカン家はグローリー家の事をあまりに悪く言ってしまって、グランディでは、もう居場所がありません。」


「ふーん、やはりねえ。アンタ変人のフリをしてたのでしょ。」

カレーヌ様から爆弾発言だ!

「あ、貴女はカレーヌ様!」

「お久しぶりね?フィジーさん。以前あちこちのお茶会で顔を合わせたわよね?」


「どう言うことじゃ?カレーヌよ。」


「王妃様。私が以前微笑みの姫と言われていた頃、あちこちのお宅に招かれてましたの。主にそこの御曹司にですけどね。

ニコニコとして彼等やその姉妹のお話を聞くのが主なお仕事でした、というかそう言うキャラで通してました。」

「ウチにも良く来て下さいましたね。」

サードさんが懐かしそうに話す。


「ホントねえ、あちこちの家で愚痴を聞かされてさあ。

私は痰壺じゃねえ!っつーの!

あ、グローリー家はそうでもなかったわ。」


フォローになってますかねえ。サードさんも、レプトンさんも引き攣っている。

「結構はっきり言うんだね!」

リード様が目をパチクリしている。

「ええ、リード様。貴方の前では特に猫を被ってましたわ。こほん、それでですね。

フィジー嬢。貴方の家はとにかく偉そうだった。

でも、それはコンプレックスの裏返しよね。

何代か前に男爵家から妻を貰ったことが瑕疵だと思っていて、それを指摘されるのが嫌で、先に攻撃してくるの。」

「なるほどね、それでお茶会でよそのご令嬢の婚約者の家柄に触れて貶めたのね?」

私の言葉にぴくりとするフィジーさん。


「…お茶会で外の世界に触れて、ウチの家が歪んでいるのがわかりました。そのお茶会でたしなめられた時まで自分達が素晴らしいと。なんの根拠もなく信じ込んでいたんです。

客観的に見るとウチはただの伯爵家。しかも大したことない。資産も領地もあまりない。

不遜な態度で人脈も人徳もない。

気がついたのはいいですが、入学しても学園でも孤立状態でしたの。」


彼女の縦ロールは乱れている。

「それでも、親達は現実がわかってなくて。何で婚約者ができないのだと責めるのです。」

ポツリポツリと言葉を吐きだす。

その態度は先程とは別人のように落ち着いている。


「とうとう、ハンカチ落としをやれと言われたのですわ。――とても嫌でしたが。兄が見張っていたのでやらないわけにはいかず。

そしたらレプトン様が拾って下さって。」


顔をレプトンさんにむけるフィジーさん。

「それ以上、恥ずかしいお家芸をやらずに済んだのと、素敵な方だと思っておりましたから、飛び上がって喜んだのは本当です。」

王妃様が考えこむ。

「其方の兄は先日結婚したな?」

「はい。兄は見かけは良いので。

ご実家で虐げられているご令嬢を、上手くたらし込んでなんとか結婚できました。」

おや、毒を吐いてる。

「ご存知の通りウチは豊かではない。早く嫁に出したい。それでハンカチを拾って下さったレプトン様にアピールをしろと。」


「こちらから断らせる為にあんな変な手紙を送りつけたのか。」

サードさんが腕組みをしながら問いかける。

「それもあります。それに私は以前からある男に目をつけられていました。父はそれが子爵で、三十近く年上だから、と断っていましたが。

私が10歳の頃から言い寄ってきたのです。」

「気持ち悪いな、それは。」

リード様が眉をひそめる。


「それもあって変人のフリをしたの?」

「カレーヌ様。ええ、そうです。」

「それにアンタその髪染めてるね?そばかすも描いてる。

眉もボサボサだ。わざとだね?」

アンちゃんの鋭い観察眼にフィジーさんは下をむく。

「……ご存知ですか。ハンカチ落としで先先代の伯爵夫人になった娘の、実家の男爵家。その家名はベリック家だと言う事は。

その次の代で戦果をあげて子爵になりましたけど。あちらも偉そうでしたわよね。」


え!そこでその話ぶち込んでくる!?

あのロージイの家だよね?ベリックって。

つまり親戚?遠い親戚なの?


「「「はあ?」」」

グローリー兄弟とメリイさんの声が揃う。

「オヤ!声が揃ったネ!ハッピーアイスクリーム!!」」


龍太郎君、気持ちはわかるがここで言う事じゃない。

それに君はハモってない。


「おほほほ!ハッピーアイスクリームか!懐かしいのう。

どれ、アンディやレイカが軽食を用意してくれてるのじゃ。続きは食べながらじゃ。」


「そうだね。その顔を洗っておいで。髪も洗いたまえ。染め粉は落ちそうか?」

「はっ。」

リード様の指示でスケカクさん達がフィジーさんを連れて行く。

彼女はもう、なすがままだ。

「おい、ショコラ。あとクノイチ。何人か来い。

この女を綺麗にするぞ。丸洗いしてやれ。全身な。

後は王妃様達へのお給仕だ。」

「ラーラさん、手伝って。」

「はい、レイカさん。」


みんなに軽食を出すのは良いが、お昼時だから。

王妃様も食べるのかな?さっき沢山食べたよねえ?

ま、フルーツサンドを出しておこう。


チラリと見るとアンちゃんやカレーヌ様やメリイさんが王妃様やリードさんと話している。


あのフィジーさんが変人の演技をしていたとして、そのうち演技が染み付いたのか?

それはいつからか?と話してるのが漏れ聞こえる。

「10歳の頃から変態に目をつけられていたとはのう。」

「聞いたことありますわ。お茶会で。昔美少女だったのに、何故あんな髪型をしてるのか、とか。

髪の色がコンプレックスだったにしても、あの色はないよなあと。

それに親が変人だったから、娘も変人になって、とか。」

カレーヌ様ばっさりだよ。


「ねえ、レイカ。」

お皿を並べてる私に王妃様が声をかけてこられた。


「はい、何でしょうか?」

「あの子の髪の色、どう思う?」

「濃い色ですね、黒までは行かないけど。光が当たるとビリジアンって感じです。」

「そうよ、染めてるのはバレバレよ。

多分、ベースは赤毛。それに黒い染料を乗せてる。

○ン・シャーリーよね。」

「あーあ、なるほど。赤毛を染めて黒髪にしたかったのに濃い緑になった話がありましたよねー。」


「ロージイの親戚なら赤毛の可能性ありますね。」

メリイさんが静かに言う。


「でもさ、レプトンさんの事が好きなのは本当だと思うわよ。貴方を思うことが、辛い現実からの逃避だったと思うの。」

「カレーヌ様、そう言われましても。」

レプトンさんは困り顔だ。

「色々詰んだお嬢様が、最後にそなたの顔を見たかったのじゃな。わざと暴言を吐いて神獣に焼かれておしまいにしたかったのであろう。」

王妃様はため息をつく。


皆様にサンドイッチを配り終えた。

キューちゃんにはりんごをハチミツで煮たコンポートだ。

りんごとハチミツはとろーり溶けてる。

(ヒデキ、かんげき!)


さて、皆様が(神獣を含む)軽食を済まして、食後のお茶を楽しまれて、だいぶ落ち着かれた頃。


アンちゃんがドアの向こうに声をかけた。

「さあ、入ってきなよ。」

ショコラさんと一緒にゆっくりと入ってきたのは。


誰かが服を貸したのであろう。先程までのゴテゴテした前時代的な服は脱がされ、白い清楚なワンピースを纏っている。

赤い髪は豊かにウェーブを描いて背中へと流れて美しい。

化粧品で描かれたそばかすを、落とした肌はあくまでも白く陶器のようで。

眉も整えられ、その下の青い瞳は涙で潤んで煌めいている。

すっと通った鼻筋。ぽってりとした唇は赤い。

うん、とても綺麗だ。美少女ではないか。


「「「そ、その姿は?!ロージイ!!??」」」


グローリー兄弟とメリイさんの声が揃った!


「ハッピーアイスクリーム!」



だから龍太郎君、アンタ、ハモってないって。

明菜と安田成美のドラマです。素顔のままで。

主題歌は米米CLUBの君がいるだけで。でしたね。

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― 新着の感想 ―
ああ、見てました。なんかひどい男にひどい進行だなって、夫にぐちぐち言って嫌がられた記憶が。 一瞬、ビリージョエルかと思いました。 やっと現在まで読了しました。今後どうなるのか楽しみです。 下手打っ…
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