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まちぶせて。好きだったのよ、きっと振り向かせる。

 レプトンさんが立ち上がった。

「彼女と対峙してきます、はっきりさせないと。焼くのはそれからにして下さい。」

「じゃア行クヨ。俺とメリイとレプトンとサードさん。白狐のダンナに掴マッテ。」

キュー。


「ところでね、ラーラ君は見届けなくて良いのかい?ついて行かなくても?」

リード様がおっしゃった。

「え?ええっと。」

ラーラさんが戸惑っている。


「リード様。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


レプトンさんの言葉を聞いてラーラさんの表情が消えた。

「……。」


リード様がしまった、と言う顔をする。

メリイさんが目を見開く。

「とにかく、我ら兄妹だけで片をつけます。白狐様、お願いします。」

レプトンさんは凍った空気に気がつかない。

彼ら兄妹は神獣達と掻き消えた。


「あいつ。下手をうったな。」

アンちゃんがため息をつく。

「ラーラさんを連れて行ってこの子と付き合ってると、婚約者ですと言えばいいと思ったんだがねえ。」

リード様が目を閉じた。

「メリイ嬢だってハイドにまず婚約者役をやってもらって、それからモノホンになったのじゃ。リードの発言は悪くないぞえ。」

王妃様は頭を抱えている。


「あのね、ラーラさん。レプトンさんは貴女を危険に晒したくなかったのよ。

ね、ちょっと危ない刑事デカじゃなくて、危ない女性って感じでしょ。」

「……はい、レイカさん。」

無表情のままのラーラさんだ。

何しろ壊れやすいものばかりを集めたガラスの10代なのだ。ガラスのウサギ、ではなくガラスのハートなんである。

彼女は多分自己評価が低い。きっと自分が否定された気持ちになっている。

レプトンさん。関係ない人ではなく、大事な人だから巻き込みたくありません、と言うべきだったね。

その後、兄妹だけで片をつけるってのもね。

アンタは部外者だと言外に言っている。


「アンディ、ネモに連絡を。伯爵令嬢が押しかけてきたのじゃ。しかも消されるかもしれぬ。それなりにマズイからの。」

「はい、王妃様。」

「まず、コチラへと。ラーラさんを引き合わせよう。身内にする事を頼むのじゃからな。」


その時、王妃様とアンちゃんの背中が光った。

「あ、母上?もうツチノコが連絡してくれてるのかも?」


そうだった。ツチノコは何よりも早いよ。

ウワサは光の速さより早いよ、と歌ったのはヒロ君だったか。


それから10分後。

外が騒がしくなった。アンちゃんが飛び出す。

「どうも。ツッチーから連絡受けて、モスマンに連れて来て貰いました。」

猫カフェの外にネモさんが立っていた。中に招き入れる。

「彼はシャイなんで帰ってしまいましたよ。あはは。」

「それで尋常じゃない気配がしたワケね。」

猫ちゃんも騒いだわけだわ。

「そういえば兄上のご成婚パレードにいたね!モスマン!」

リード様が目を輝かせる。

「失礼。上着に鱗粉がついてますよ。お預かりしてあちらで落としてきましょう。」

「すみません!ショコラさん!

王妃様、お呼びですか?ツッチーからラーラさんのことは聞きましたよ。」

「そうよ、ネモ。この子なのよ、宜しくね。」

ネモさんがラーラさんを見て微笑んだ。


「君がラーラさんか。宜しくね。」

「よ、宜しくお願いします。ネモ様。」


「うん、なるほど。私の母の従姉妹の娘と言う設定はいかがですか。確かそれくらいの子が居たはずです。

以前のギガントとの戦乱で行方不明ですがね。」

「そうか、お願いするわ。マーズ達やアリサにも言っておいて。

アンディの所で預って、子供の世話や猫カフェの手伝いをさせようと思うのよ。ここなら警備も充分でしょ。」

「はい、でも彼女はレプトン君のいい人では?」

だからすぐ結婚して龍太郎くんたちの庇護の下に入るのではと、言いたげだ。


「いいえ、違います!」

眉をひそめるラーラさん。

「無関係なんです。」


あちゃあ。言い切ったよ。拗ねているなあ。


「ま、まあ。どうなるかわからないからな。」

リード様がフォローをする。

「はあ。そうですか。」

ネモさんはポカンとしている。


「それでネモよ、困ったちゃん伯爵令嬢が襲来してるらしいわ。フィジー・ダルカン嬢。」


「はい。鳥たちからの情報に寄りますと、駅で大荷物を抱えて降りた。そして泣き崩れた、とあります。」


「へえ、御令嬢なのにお供がいないワケ?」

アンちゃんが苦笑してる。

「多分ね。家出か?家から追い出されたか?

シェルターで保護することになるかもね?ネモさん。」

「そうですね、リード様。」


その時ドアが開いた。


「アンディ様。ルリルリちゃんが来ています。」

猫カフェのクノイチの一人が肩にルリルリちゃんを連れて入ってきた。


「アンディ!ネモ!鳥タチカラ伝言!駅でレプトンが困ッテル!変ナ女ニ抱キツカレテル!

ドラゴンガ怒ッテ焼コウトシテルッテ!」


「ええ?!」


キュー。


蒼い光と共にキューちゃんが戻ってきた。

みんなを引き連れて。その口は龍太郎君を咥えて拘束している。

「邪魔するなっ!白狐のダンナ!こんな奴焼イテヤル!!」

こんな怒った龍太郎君は初めて見た。

おろおろするメリイさん。

「ええ、俺らを侮辱するこんな女焼き捨てて下さい。」

半眼で睨みつけるサードさん。

「はなせっ、この痴女がっ!」

黒っぽい色の髪の、縦ロール巻毛の女に抱きつかれているレプトンさん。 

彼女の顔はそばかすだらけで、眉の手入れもされてない。ちぐはぐな印象を受ける。


へえ。本当に見事な縦ロールだ。あんまり最近見ないな。いかにも悪役令嬢っぽいぞ?

「離しませんわっ!やっと会えたのですもの!

私がこの化け物達から救って差し上げますわ!

姑も、もうすぐこの小姑もドラゴンに食われていなくなりますわ!」


凄えカオスだ。どーなってるの。


周りの空気はどんどん冷えて行く。


ギューギュー。


キューちゃんは龍太郎君を咥えてるから、くぐもった声で訴えている。


「なるほどね、キューちゃんはレプトン君が巻き添えになるから、龍太郎君に焼くなと言ってるね。」

ネモさんの解説を聞きながら、

アンちゃんがナイフを構えるのを見た。

「王妃様。リード様。私にご命じ下さいませ。」


「スネちゃま。あの女を噛んでおやり。」

ネモさんの手からヘビが飛びだす。


「じゃア、ダンナが焼いてくれよ!俺ヨリ、コントロールが上手いンダロ!」

龍太郎君の発言に、キューちゃんがそうだな?と言う顔をした。

彼女の命は風前の灯火だ!


「女!控えよ!グランディ王妃様の御前であるぞ!」

低音のイケボイスが響きわたる。

スケカクさん達が天井から落ちてきた!

いたの?そこに?ずっと?

そして王妃様の左右に立つ。

「この王家の紋章が目に入らぬのか!」

ばーーん!と出されたものは。

なんと!印籠だよ?でもこの世界では必要ないよ?


「こちらはリード王子様であるぞ!」


「そしてこちらは、ネモ・ブルーウォーター公様だっ!」

「ええいっ!!控えおろう!頭が高いっ!!」


「は、はああああっ!」

「は、はいー!」

流石に平伏するフィジー嬢。

ついでに平伏するグローリー兄弟とメリイさん。

口調がやす子になっているよ。

「へ、へへへーっ!」

龍太郎君もつられて平伏だ!昭和生まれだもんね。



「おほほほ!一度やって見たかったのよ、コレ。」


……でしょうねえ。


「あー、スケカクさん達に良いとこ持ってかれたー。」


ぼやくアンちゃんだった。

石川ひとみのまちぶせ、ですね。

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