だから恋してみたい。夢見るように。シャランラ。
誤字報告ありがとうございます。
さて。室内を見回す。
ここにいるのはカレーヌ様、リード様、王妃様。
そしてアンちゃんとラーラさんとレプトンさんだ。
多分護衛が二人くらいいるな。
これから、メリイさんとサードさん、龍太郎君が来るのよね。
奥に行ってショコラさんにお茶を頼んだ。
「それから筍ご飯をおにぎりにして。龍太郎君に持たせるわ。」
「後さ、誰か市場に行ってイチゴの手配を頼むよ。」
あら、アンちゃんも来たのね。
「みんなに軽食を出せるかしら。」
今十二時半だ。早めのお昼を済ませた王妃様と違って、他の人は空腹に違いない。
「パンはあります。卵サンドとハムサンド、ツナサンド。あとはフルーツサンドにしますか?生クリームにキウイとバナナを挟みましょう。それから神獣様達にりんごを。」
ショコラさんが若い子たちに声をかける。
指示をしてレストラン内に戻ったら、
レプトンさんがラーラさんに話しかけていた。
「私には確かに彼女から手紙は来ていましたけども、それだけです。他にお付き合いしてるひとはいませんから。」
「はあ……。」
ラーラさんは居心地悪そうだ。
そこに蒼い光が満ちて、サードさんがキューちゃん達と姿を現した。
「お呼びでございますか、王妃様。リード様。」
そして、みんなを見回す。
「白狐様は凄いですね。あっと言う間に来れました。皆様お揃いなんですね。レプトンもいるのか。」
「とりあえず座りたまえ。」
リード様に促されて座るサードさん。
「兄さん、結婚話の噂を知っている?」
「グローリー家の息子が結婚間近と言うアレか。
具体的にはオマエがフィジー・ダルカン伯爵令嬢と結婚すると言う奴だな。」
レプトンさんが驚愕する。
「何だよ、それ?」
「どうも、こうも。彼女が勝手に吹聴してるのさ。
最初はただの匂わせだったらしい。
私にも決まった人がいますのよ、みたいなね。」
「ふうん。彼女はなかなか縁談が決まらないらしいよね。」
「はい、リード様。妙に高いプライドが邪魔しているようです。彼女の家、ダルカン一家は皆そうです。
無意識に人を見下すので敬遠されていた。
だから縁談もなかなかなかったんです。」
「聞いたことありますわ。」
カレーヌ様が引き継ぐ。
「彼女は素で偉そうなのです。特に意地悪なのではないのです。
それでお茶会にも時々呼ばれてました。
でも、やはり優位に立ちたいのか自分より下のご令嬢が集まるところを選ぶとの評判でしたの。
ある日、そこで他の令嬢達の婚約者を無意識に下げた。
そこで主催者の令嬢の怒りを買って、
フィジー様こそ、婚約者はいらっしゃらないじゃないの!と言われてしまいましたの。」
「それは私の耳にも入っておる。うおおおお!と泣きながら全力疾走した令嬢の話じゃな。」
聞けば聞くほどクセが強いお嬢様だ。
「それで我が弟に白羽の矢が立ったのですか。
ブルーウォーターに篭って出てこないから、婚約者役にうってつけだ。」
「何だよ!それ!」
「ふうん。それでみんなから探られて面白がられて、そのうち本当に恋人だったら良いのにから、
恋人なの!なんで会いに来ないの!?
と、なってしまったのね。」
メリイさんの分析だ。
「それで妄想いっぱいの手紙が来ていたわけか。」
レプトンさんは唇を噛み締めている。
「ソレサ、ご静養と医療の手が必要ナンジャネエノ。」
ギューンゴーン。
あら、神獣たちも引いている。
「レプトン、オマエが受けとらないから、最近はうちに転送されてるぞ。
沢山ある。持ってきたぞ、ほら。」
手紙の束を渡されて、恐る恐る1番上の手紙を読むレプトンさん。
「うわあっ!やはりわけがわからない、ポエムだあっ!!」
真っ青になって震えてる。
投げ捨てられた手紙をみんなで回し読む。
【ポッポッポッ。ポーッ。
私の心に火が灯る。
あなたが、付けた恋の炎よ。ほむらと読むの。
ほのおじゃないのよ。カンタンじゃないの。
だけどなぜ。あなたはいないの。
ブルーな国のドラゴンに囚われたのは貴方なの?
囚われの姫は私なのに。
何故、なぜ、なぜ?会いに来てくれないの。
今日もハンカチは涙でずぶ濡れよ。
貴方があの日拾ってくれたハンカチなのよ。
ああ、絞るたびに貴方の成分が抜けていく。
ああ。私の涙の塩がふいている。
式場のパンフは山積みなの。一緒に見てほしいのに。
予約しておくわ?】
「以前もレプトンから見せられた手紙もこんなポエムがびっしりと書かれておりまして。」
ふうう、とため息をつくサードさん。
「こ、怖い。」
引きつるラーラさん。
「レイカ。厨二病じゃな。」
「はい、私もそう思います。というか彼女幾つなのかしら。」
「私達のひとつ下ですわ。17ですよ。」
ううん。夢見る夢子ちゃんだ。
「何だよっ!式場予約って?!」
絶叫するレプトンさん。
「妙な才能があるような無いような。」
「縦読みではないですね?隠しメッセージは?」
リード様とアンちゃんは分析している。
「レプトン兄さん、ハンカチに心当たりは?」
「メリイ、確かに学園の廊下であの女が落としたのを拾ったよ。それだけだ!あの時オマエもいたよね?何か飛んで走って行った奴!」
「あ!兄さんが落としたのを渡したら、飛び上がって、うわお!と言って走り去ったあの人ね!
衝撃的だったから覚えてる!」
「あー、妖怪ハンカチ落としに引っかかったのねー。」
「カレーヌよ、それはなんじゃ?」
「はい、王妃様。女子学生の中で囁かれている伝説ですわ。ハンカチを落として拾ってくれたのが運命のひとだと言う、思い込みの激しい女生徒がたまに現れると。
コレは!と思う男子の前でワザと落とすと言うものですわ。」
レプトンさんの顔色はとても悪くなっている。
「そんな。ハンカチくらい拾うでしょ?」
「レプトン君。キミは良い人だ。私達王族は拾ってはいけない、と教育されている。」
「そうですね、リード様。アラン様もそうです。
王子様に見初められたい女生徒や、ハンカチに何か仕込まれているといけないから。」
アンちゃんが真顔だ。
「その伝説はの。以前そうやって伯爵夫人になった成功例があるからだと聞いておる。
男爵令嬢が上手く伯爵令息を攻略、つまり恋に落としたのだと。ハンカチを落としただけなのに。ってね。」
スマ○を落としだけなのに。みたいなフレーズですねえ。
「伝説がいつのまにか妖怪になっていたとはのう。
…うん?その伯爵家はダルカン家ではなかったか?!確か先先代の話じゃ。」
「つまりお家芸だったのですね。」
ラーラさんが口を歪めて言った。
「ああ、やめてくれっ!何だよ!俺の成分って!
あと、ポッポッポッって鳩時計かよっ!」
それ、私も思ったよ。
「でも何かクセになる可笑しさがあるわね。怖いもの見たさと言うか、他のも読んで見たいわ。」
「王妃様、実は私もです。」「私も。」
「ええー!王妃様、レイカさん、メリイ!正気ですかあ!?」
「レプトン、さあ、他のも見せよ。さあ、疾く疾く。」
渋々渡された手紙のたば。
どれも攻めている。
面白詩人としてやっていけるかも?
「ぷっ。なるほどなあ。メリイ、読み上げて皆に聞かせてやるのじゃ。」
「はい、王妃様。」
【ああ!とんとんからりと糸車が回るように。風車も回るの。くーるくる。
私は貴方の周りをまわる。踊り続ける踊り子かしら。
クルクルクル!やってクルわ!
愛の言葉はリフレインよ、繰り返しなの。
窓辺の星に向かって貴方の名を呼ぶわ。
瞬いて答えてくれたの。
花瓶の花にも祈りを捧げたの。
何故枯れてしまったのかしら。お水が足りないみたいなの。
私にも貴方が足りないのです。
鉢植え買ったらいいかしら、そうかしら。
花言葉はた、い、せ、つ、よ。】
「凄いのう。クルクル回るのかえ。」
「花瓶の花が枯れるのは当たり前ですよね。」
「あー、これは花言葉とか考えずにスノードロップの鉢植え買っちゃった、と言うオチですかね。
「どれ、もうひとつ。」
【ハニー、ハニーは、ハチミツなの?
いいえ、恋人ね。
甘いのよ。冷たい冬には下が白くなるの。
ジャリジャリ。糖分のかたまりね。
私の愛も沈澱してるのよ、どうか掬ってほしい。
貴方の髪はハチミツ色。やっぱりハニ、ハニ、ハニーだわ。
ああ、愛はハチミツなのね。貴方、幸せものよ。
みんなに嫉妬されてる?
舐められたら無くなるの。】
「確かに。私たちは薄い色の金髪ですけどねー。」
「やめて!読み上げないで!メリイ!気色悪いって!」
「なかなか凄いのう。出版すれば好事家が買うかも知れないのう。」
流石のリード様も無言だ。アンちゃんは笑いを堪えている。
グローリー兄弟の顔色は悪い。
その時。キューちゃんが顔をあげた。
キュ?
「ソウナノカ?白狐のダンナ?」
あら。嫌な予感がしますよ。
「フィジーと言うオンナが入国シヨウトシテ、揉メテルソウダヨ。」
ギュウウン。
「悪人でないから焼くワケにはイケナイけど。様子ガ変ダカラ止められてるんダッテ。」
グルル。
「レプトンが頼めば焼いてもイイヨッて。
白狐のダンナに愛サレテルナア、レプトンサン。
ドウスル?アイ○ル?」
龍太郎君。それ転生者にしかわからん奴だよ。
魔女っ子メグですね、エンディングの方。
シャランラ。歴代魔女っ子の中で1番美形だと思いますが。




