私が、結婚するって本当ですか?
王妃様が目を見張る。
「アラ、二人ともお仕事を抜けてはダメじゃない。リード、今日はそちらに泊まるわよ。ヴィヴィアンナさんに連絡宜しくね。」
「はい。母上。」
まったく子犬のようである。後ろに振り切れんばかりのしっぽの幻が見える。
固まっているラーラさん。
リード様を見るのは初めてか?
「おや、そこのお嬢さんにはお初にお目にかかるね?」
チラリと流し目だ。本人にその気はないが立派なタラシである。
ラーラさんは真っ赤だ。
「は、はい。ブルーウォーターの蒼き星、リード様にご挨拶申し上げます。」
そうだったのか。蒼き星だったのか。覚えておこう。
「うん、宜しく。ははあ。君がレプトン君がご執心のラーラ嬢か。元キャリー姫のね。」
「あら、わかるのね?リード。」
「母上。私は見た人間は忘れませんよ。彼女は見た事がない。ここの領民ではなさそうだ。多分ここに来たばかりなのに、ここに出入り出来るという事は?
キャリーが名前と顔を変えてラーラ嬢になっていることと、アンディのところで働いているのは知っていた。
ほら、そことそこに影の者が潜んでいて彼女に視線を送っている。
それに先程、彼女を見るレプトン君が嬉しそうだったし。」
すげえ。名探偵だ。ビジュアル的には榎木○礼二郎だ。京○夏彦だ。
僕も神だと言いそうでこわい。
と言うか、ははうえー!といいながら瞬時に見切っているのか。護衛の配置もわかるんだ。流石に長年王族をやってきただけのことはおありになる。
見直した。
「ラーラ君。……ハイド君を君の仲間が僕と間違えて切ったね?」
ああっ、冷たい冷気が美貌の王子様からっ!
「も、申し訳ございません。」
蒼くなるラーラさん。
「リード様!彼女も被害者で!」
レプトンさんが割り込む。凄え。王子様に意見出来るとは。
「ああ、それは聞いているよ。どうだね?ハイド君より私の方がずっと美しいだろう?」
はい?
固まる一同。
「わかったなら、ヨシ。もう間違えないようにね。」
え?それが問題なの?もっと他に言う事があるのでは?
相変わらず常人には理解出来ないところを持つ御方だ。怒ってないのかな。
「まあ、君が悪いわけではないから。キューちゃんの禊が済んでるんだろ。」
なるほどね。
「さて、母上。レプトン君になんの御用だったのですか?」
「そうそう、ねえ、貴方のお兄様のサードさん。ご結婚なさるの?公爵家の後継ぎのご結婚ですからね。把握しておきたいわ。」
目を見開き本気で驚くレプトンさん。
「い、いえ?聞いておりませんが?」
王妃様がカレーヌ様を見る。
「噂が流れておりますのよ。グローリー家の御令息が近々伯爵家の御令嬢と結婚なさると。」
「え?私は存じあげませんが。」
まったく心当たりが無いと言う顔だ。
「サード様でなければレプトン様というわけでも無いわよねー。」
カレーヌ様の発言に頭を振るレプトンさん。
「違います!縁談なんてありません!」
「そうだよねえ、レプトン君はラーラさんに夢中だしね。私も君の事じゃないのはわかってるよ。」
「カレーヌ様、伯爵令嬢って誰か心当たりありませんか?勝手に語って周りを固めているような気がしますよ。その人。」
カレーヌ様は腕組みをして考えこむ。
「そうね、レイカ。……私の勘だけども。フィジーさんじゃないかしら。」
するとみるみるレプトンさんの顔が曇った。
「……そういえば、フィジー嬢から手紙が届いてました。あんまり気持ち悪いんで、最近は受け取り拒否のふせんをつけて送り返してます。」
王妃様が瞬きをした。
「気持ち悪いとは?」
「はい。良くわからないポエムを延々と書いてきて。
何を言いたいのかわからないんです。
自分が囚われの姫みたいな?攫いに来てみたいな妄想を延々と。」
うわあ。
「最初はなんの暗喩かと読みとこうとしました。
縦読みかな?と。そのうち炙り出しかと思ってロウソクで炙りましたが、焦げるばかりで。」
危ねえよ。
「ただの重たいラブレターじゃったのか?」
「しかし、王妃様。ろくに話したこともないのですよ。」
貴族のお嬢様特有の遠回しの表現の恋文かしら。
レプトンさんは察して?女が嫌いだと言ってたな。
だからラーラさんみたいなそのまんまの言動の娘さんが良いんだな。
「フィジー嬢はなかなか縁談が整わず焦っていると聞いておる。そなたを仮想恋人にして、お茶会で結婚について聞かれたら、お茶を濁しておるのじゃな。」
段々と王妃様がマジモードに。
「しかし、母上。本当に縁を繋ぎたかったら親を通じて申し込むものでしょう?」
「……。グローリー元公爵があんなだからのう。」
そこへ。
バサバサ!
「コンチワ。あら、筍ゴハン貰えるト聞イタのに。」
龍太郎君がメリイさんと入ってきた。
「そういえば呼んでたわ。ごめーん、レイカ忘れてた。」
王妃様がテヘペロになっている。
…はい、こんなこともあろうかと多めに作っております。
「ええっと。今お話の途中だから後でおにぎりにするワね。で、ちょうど良かった。龍の字、チカラを貸してちょうだい。」
「ナンダイ?アンさん。」
「王妃様、リード様。サード様にお越しいただき、事情を聞いた方がいいと思います。
龍の字、キューちゃんと連絡取れるでしょ。サードさんをメリイさんと迎えに行ってくれるかな。」
「ナルホドね、パイセンならひとっ飛びダネ。」
「頼むね、龍太郎君。後で私からもフルーツを届けさせようね。メリイさん、イチゴが好きだって言ったよね?」
「は、はい。」
「リードさん。ワカッテルジャン。」
オー・ギン義母さんから聞いた。
メリイさんは前世、イチゴが食べたいと思っていたと。
だけどもう、あっと言う間に病気が進んで食べられなかったと。
怪我をしたハイド君の看病をしていた時だ。
生きるのに投げやりなハイド君に喝を入れたんだってね。命を粗末にするな、いちごだって命がないと食べられないのよっ!いちごを浴びるように食べたかったのよ、私は!と怒って説得したと。
(※レイカの脳内補完が入っています。)
それをリード様が知っている。
…何でも王族には報告があがるんだな。
キュー。
龍太郎君が呼びかけたらしい。
キューちゃんが姿を現した。
「キューちゃん、久しぶり。お願いがあるんだ。
メリイさんのお兄さんをグランディから連れてきてくれないか?
うん、縁談について聞きたいと。グローリー家の子息が結婚するという噂が流れているんだよ。」
「ええ?!」
「エッ。」
「頼むね?君にもイチゴを用意しよう。」
キューコーン。
キューちゃんは頷くとメリイさんと龍太郎君を連れて消えた。
やはりリード様はキューちゃんたちとやり取りが出来るんだな。
ダ・カーポの歌の方ですね。元ネタは。
アニメは知りません。




