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子供は親が思うようには育たない。

 それから二日後。アンちゃんが真面目な顔で言った。

「ねえ、レイカちゃん。双子の世話って大変?」

「いや?そんな事はないよ。まだ小さいしね。

歩きまわったりもないから。

それに授乳の間隔は開いてきたし。お手伝いもいるからね。」

六月に産んでいま、二月である。八ヶ月だ。

「うーん、そっか。いや、ほらね?託児所とかあるじゃない?預けてみたいとかある?」

「いや?全然?何で?」

「あー、三婆がね。特にグリーン婆さんが。シンディの子と触れ合せろと言うわけよ。」

ああ、そういえば一応従兄弟だったな。

「パティさんは、託児所に預けてホテルで働いてるんだっけ。」

「そう。」

うーん、真意がわかりかねる。

「託児所が定員割れして立ち行かないとか?」

「いいや?」

なるほどねえ、じゃあ。

「結局、手が足りてるウチが、シンディの子供も見ると言う方面に持っていきたいのね?三婆さんは。」


アンちゃんは嫌な顔をした。


「子供には罪はない。しかしなるべくシンディの子にはかかわりたくないと言うのが本音だね。」

「うん。メリイさんのお婆様達。よく出来たね。

従兄弟のローランドさんを引き取ったんでしょ。

確かに、生まれる場所は選べない。子供には罪はないわ。」


しかし。ルートやシンディのように何か欠けている人間も世の中にはいる。


「それとも?子育てとお仕事の両立が大変なのかしら。」

「さアなあ。」

うーん。シンママには同情する。

「ルートもさ。あんなに良くしてもらったのに、最後牙をむいたじゃん?俺は小さな頃からしつければ良くなると言う幻想は持ってないからね。」


「ま、とにかく。パティさんも、パティさんのお母様もいるし。大丈夫でしょ。」


ところがどっこいしょ。


「おい!なんでいきなりガキを連れてくるんだよっ!グリーン婆!?」

薄茶色の髪に黒い目の男の子の赤ん坊。

ウチの子とあまり変わらないはずの月齢だが、ひとまわり小さくないかい?

「あっ、くそっ!メロディ。」

アンちゃんが肩を落とす。夭折した妹さんに似てるのか。

「パティが流行り病にかかってのう。しかもそれが

パティ母にもうつったのさ。二人とも入院したのじゃ。」

困り顔のグリーン婆さん。

症状を聞くとインフルエンザの様だ。

ウィルスには龍太郎君のウロコ水は効かないのか?


「九尾の狐様はお気に入りしか助けては下さらぬ。弱いものは淘汰されるべきとのお考えじゃ。」


なるほどね。と言うことはそんなに悪いの?


「パティはともかく、その母は危ない。パティも少し回復したら、母親の看病につきっきりでのう。

この子まで手が回らんのじゃ。

ま、レイカさんに直接面倒を見れとは言わぬ、

だが、アンディ。部下の若者に手をかすように言ってくれないか。流石に私も高齢じゃからの。

―それに。メロディに似ておるな。」

「―わかったよっ!それ以上言うなっ!ああもう!」

アンちゃんが横を向いて吐き捨てる。

シンディとの仲は最悪だけど妹さんに似た赤ん坊には思うところがあるのだろう。


「この子の名前はなんていうんですか?」

「ガルディじゃ。シンディが以前、睦言で言っていたそうでな。娘ならカルデイ、息子ならガルディと。」


なんと。娘さんだったら某コーヒーチェーンの名前みたいになっていたのか。


「あいつ!好き勝手につけやがって!うちの血縁の名前ってバレバレだ!」

…もしもし?ウチの子は違いますよ、

ディディシリーズではなかですよ。アラン様がというか、王妃様監修ですたい。

…もしかして、ディディシリーズをつけたかったのかね。チミは。(カトケン風)


「アンちゃん、とりあえずこの子を預かりましょうか。グリーンさん、パティさんはご存知なの?」

「ええ。もうぐったりしてまして、お願いする、助かるとしか。」

まああ。気の毒。

「ふーん、これがシンディの子ですか?」

ショコラさんがマジマジと見つめる。

「痩せてますねー、栄養足りてませんね。

子供には、罪はない。どれ預かりましょう。

ラーラ、貴女も手伝ってね。」

「はい。調乳も慣れましたよ。」

そこにオー・ギンさんも来た。

「シンディの子か。不憫な。どれ、私も手伝いますか。グリーン婆さん、パティさんの世話は頼めるの?」

「ああ、うむ。病院に戻るわい。」


不憫はどこにかかる言葉かしら。生まれかしら。

痩せていることかしら。

アンちゃんは難しい顔をずっとしていた。

ウチの子と並べて寝かせて、段々とコロコロ太ってきたころ、パティさんのお母様は亡くなった。

やはり以前、夫から酷い目にあわされた時、内臓もボロボロになっていたのだと。

その後ツッチーで随分と回復したけども、ハッキーのせいでまた弱って。

その後も回復はしたけどやはりどこか悪かったんだと。インフルエンザがとどめになったんだ。

40代か。いやな話だがこの世界は日本より寿命は短いのだ。


パティさんは葬儀の後、打ちひしがれてやってきた。

「私が。出稼ぎに行かずに母の元にいれば。」

「いいえ、その時は二人ともとっくに亡くなっていたでしょうよ。」

「私があんな男と結婚しなければ。」

「…騙したシンディが悪いのよ。」


私とオー・ギンさんとで慰める。


「しばらくお子様は預かろうか?体調は平気?」

「レイカさん、ありがとうございます。

ですが、甘えてもいられません。

それにここにいたら、息子が忍びになってしまう気がします。」

え?

「…うーん、それは気が早いのでは?まだ1つにもなってないでしょ。」


「私は、息子は学者さんにしたいのです!!!」


…わかった。今度から貴女をチチと呼ぼう。心の中で。


牛魔王の娘のね。




「何だよ、あれ。」

彼女が出て行ったあと、アンちゃんがポツリと言った。

「グリーン婆さん。あんたのフライングだろ。

あちらさんはこちらとはあまり仲良くしたくないみたいだよね。」

「ちょっとねえ。あの態度はいただけないわ。

まずすみませんでした、助かりました、ありがとうでしょ。私たちにも。」

オー・ギンさんも怒っている。


「親が亡くなって動転してるのじゃ。」

「そうかもね。でも。ま、多分俺達忍びと関わりたくないんだろ。あきれたね。ま、いいじゃん。

あっちが縁を切ってくれるなら。」


アンちゃんはそう言って奥へ行った。

多分娘達と触れ合ってくるのだろう。イラついてる証拠だ。


「レイカさん、パティさんはアンディに対抗意識を燃やしているようじゃ。」

グリーン婆さんがため息をつく。

「はい?」

「シンディはな、一応念の為に遺書を残しておった。まあ忍びなら万が一を考えて書いておくものじゃ。任務ごとにな。終わったら書き直す。」

オー・ギンさんも、ショコラさんも頷く。

じゃあアンちゃんも書いてるのか。

「奴の遺書は私が預かっていたから、未開封のままパティさんに渡した。そしたらな、彼女が泣き笑いで遺書を投げつけてきた。」


あ。やだ。なんか展開が見えちゃった。

「…遺書にはな、アンディのことばかり書いてあったのじゃ。」


やっぱりーっ!どんなホラーより怖いわあ。


「自分の形見のコレコレ、貯金の全額、みんなアンディに渡してくれと。」


……馬鹿じゃないの?


「そしてな、子供は立派な忍びにしてくれと。」

「私らはその遺書は無かったことにした。

パティは泣きながら私と子供の生活は?どうするの!私達には何の気配りは無いの!って泣くのでな。」

「そうですね、それで良いと思います。」

「そのうち本当に兄弟なの?秘密の恋人ではないの?と疑い出してな。」


ああああああ。でしょうねえ。


「ではどうしてうちにガルディを預けたの。」

オー・ギンさんが聞く。本当、そう。


「本当にな、一時あの二人とも危なかったのじゃ。

アンディにしか私は頼れなかった。パティもレイカさんには頼りたいと。

それにあの子はメロディに似ていて、アンディに会わせてやりたかったのじゃ。」


「そうでしたか。」


ふうう。なんか疲れたわあ。


シンディは死んでからも厄介な奴だ。

とにかく子供には罪はない。ガルディ君、元気に生きるんだよ。

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― 新着の感想 ―
なんだか三婆、下手打ってばかりな印象。
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