名付け親はゴッドファーザーで良いんだっけ。
「それでこちらのラーラさんは?どう言うお人なのですか?」
レプトンさんが恐る恐る聞く。
「その前にお伝えしますが、私の見かけと中身は違いますからね。ガッカリビックリされますよ。」
おっと、ラーラさん。喧嘩腰だよ、
「顔を変える前も見かけに惑わせられた男達と、嫉妬した姉達に煩わされたし。
なーんか、もう沢山なんです、外側を見て寄ってこられるの。」
「あらら。」
アンちゃんも絶句だよ。
「ふん。オマエの中身は口が悪いオッサンだよな。」
シンゴ君やめときなよ、と私が言う前に、
「ウーンマア、この二人はコナイダ何時間も罵りアッテイタネ。」
龍太郎君がさらりとバラす。
「聖龍様っ!?」
「龍太郎っ!」
「え?罵りあい…。」
「ハイハイ。彼女の過去をざっくりと説明するワ。
違ったら訂正してね!?」
アンちゃんの言葉に、
「あ、ハイ。」
頷くラーラさん。
「まず、この子は本当はキャリーというのさ。ハシナ国がこないだ騒ぎを起こしたよね?その中にいた。そして捕らえられた。
ハイドやオレを切ったスダンはその場でキューちゃんが消した。ここまではいい?」
「その時、オレがルートを燃やしタケドネ。」
龍太郎君がさらりと付け加える。
あー、そうだった。コイツ本当はヤバい奴だ。
とばかりにみんなの顔が強張る。
メアリアンさんが話し出す。
「それから、私はこの子を男装の令嬢だと知りましたの。
この子の亡くなった親族がやってきて訴えてましたから。」
「そのあと、巫女様が母と兄を成仏させて下さいました。感謝しております。」
ラーラさんが頭を下げる。
「ラーラさんの本名はキャリー。砂漠の国の姫と、
ハシナ国の王との間に生まれた王女ですわ。
ねえ、私達の境遇似てますよね。」
「え!」
流石のレプトンさんもビックリだ。
「ハシナ国の姫…。」
「ええ、私はあのスダンがグランディの王子を殺せば褒美として与えられる筈の、捨て置かれた姫です。
最悪いつ他のものに殺されてもおかしくなかった。」
「あとは、俺がこの女の死を偽装しました。白狐様のチカラを借りて。」
シンゴ君が口を開く。
「確かに、ハシナ国の残党は国境の火に飲まれた、と。」
「アラン様がね、この子は何もしてない。
誘拐された被害者の様なものだから、ブルーウォーターに送って、キューちゃんに焼かれなかったら許されたものとみなす。とおっしゃった。
それで彼女はここに来た。」
アンちゃんの説明に、
「やはり顔を変えるべきになったのですね?」
とメアリアンさん。
お。よかった。私の説明はいらなかったよ。
「わかりましたか?龍の乙女の兄君。
私はね、ルートという野郎をエサにして、大事な妹さんを攫おうとした奴等の生き残りなんですよ。
もう構わないでくれますかあ?」
軽く睨みつけるラーラさん。
「ちなみにラーラという名前はオレがツケタノサ。
エッヘン。」
「あら、そうだったわね、龍太郎君。」
私の肩に乗ってきた。
「ナンカ、ナッツない?レイカさん?」
「ごめん、持ち歩いてないなあ。」
「あ、オレが持ってるよ、龍の字。ルリルリちゃん用だけどね。」
アンちゃんからナッツをもらってご機嫌な龍太郎君だ。
「気分がイイから、名付け親からナンカ与えよう。」
尖った指で後ろから出したのは。
(まだ凹んでるのね。)
「ハーイ、オレが作ったダイヤダヨ。エリーフラワー様に加工シテモライナ。」
「ああ!ありがとうございます!聖龍様っ!」
大感激のラーラさんだ。
「イヤナニ。」
「まああ、加護を感じるわ!」
メアリアンさんが目を丸くする。
「ソウ。虫ヨケをツケトイタ。イヤな奴を寄せつけナイ。」
「ふーん、えいっ!!」
ばしゆ!だーーん。
そのダイヤをシンゴくんに向けると、シンゴくんが転がった。
「おい!何をする!」
「面白い!えい!えい!えい!」
「うっ、こら!ぐえ!うぐ!やめろ!」
コロリコロリと転がるシンゴ君。
空気の塊が当たっている様だ。
「やめろっ!このくそあまっ!うがっ!」
「あー、やめてあげて?シンゴ君が怪我しちゃうから。」
「はい、アネさん。」
「お、おまえ。レイカさんの言うことは聞くんだなあ!」
「だって、私に優しくしてくれたもん。レイカさんとショコラさんは。」
ケロリとした顔でラーラさんは言った。
「凄い!素晴らしいよ!ラーラさん!」
おや?レプトンさんは逆に満面の笑みだ。
「上品な外見なのに、強い中身に戦闘力!
ハキハキした言動!御令嬢なのに、察して?みたいなわざとらしさがありませんね!
素晴らしい!」
「……。」
無言になる私達。
なんか、察して?みたいな面倒な女に絡まれたのかしら。少なくともイリヤさんは違うタイプだなあ。
「そうなんだね。レプトンさん。貴方も真っ直ぐな思考の良い人だ!」
おや、ランド兄さんがにこやかな笑みを。
「確かにお二人とも腹芸が出来ずにそのままの御方ですわ。アンディ様と違って。」
「メアリアン義姉さん!ワタシを落として褒めないでっ!」
あら、アンちゃんに流れ弾だわ。
「アノサ、シンゴ。オレが指輪やったダロ?
それを向ければ跳ね返せるぞ。
ホラ、試しにラーラ、ウッテミナ。」
「ハイ…あ。」
しゅー!びっ!ばーん!
ラーラさんから放たれた空気の塊が、シンゴ君の指輪に跳ね返されて、ラーラさんが吹っ飛んだ。
「!」
「ハイハイ!っと。」
龍太郎君が大きくなって受けとめた。
「ネッ、凄いデショ。ちなみにメリイにも仕込んでアルよ。ハイドが渡した、アノ宝石ニネ。」
「凄いな。やはり君たち神獣は。」
感心するネモさん。
「やり過ぎだよ!龍太郎君も、シンゴ君も!彼女はか弱い女性なんだから!」
抗議をするレプトンさん。
「レプトンさん、彼女が気になるなら時々会いに来ればいいじゃないですか。
ただあのレストランはぶっちゃけ基本的に王室専用なんです。
猫カフェとかでお願いします。」
「あ、そうなんですか。」
赤くなるレプトンさん。
「そこで私が傍若無人に振る舞えばいいっすか?
アネさん、せっかくだけど貴族のボンボンの相手はしたくないですよ。」
「あ、そう。」
「え、そんなあ。」
泣きそうなレプトンさんだ。
「とにかく、ラーラさんはうちがいいのね?
とりあえずランやアスカの世話を続けてもらいましょう。ねっ。」
その日はそれで解散した。
ぱぱらぱらぱらぱららら〜♪
ゴッドファーザーと言えばコレですね。




