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顔を変えよ、町へ出よう。

 年が明けた。年末にコンサートがなかったのが残念である。

それは私だけではないようで、要望が王妃様の所へ山ほど来たそうだ。

「うーん。次の年末は考えようかしら。

リードの歌だけなら確約できるけども。」

王妃様。それだけでも客はぎょうさんくると思いまっせ。

そのうちプラチナチケットになるのではないか。


今日も王妃様はお孫さまと遊んでいらしたのかな。

「ほほほ。それだけじゃないのよ、レイカ。

さっきミッドランド家に寄ってきたの。学園長たちの漫画が出来たから、献本してきたの。ふふ。

私はね、モデルになった人がそれを見て赤面するのが好きなのよ。」 


悪趣味だなー。


「リード達は流石ね。喜ぶばかりだったわ。」

確かに。母上素敵です!としか言ってなかったわ。


「え、では。私には?アンディさんは赤くなってたんでしょ。」

「いやあよ。私はね、レイカには嫌われたくないから、見ーせないっ♪」


…おい。どんな事描いてるんでえ。


「コホン。そういえばメリイさん元気だったわよ。」

話題変えたな。

「今はミッドランドご夫婦と、レプトンさんと、

メリイさんに龍太郎君。

それにハイドもいたわよ、おーほほほっ。」

面白そうにお笑いになる王妃様。


「龍太郎君がね、ハイドが一緒に来ないと嫌だってゴネたんですって。

さっきお昼をご馳走になったんだけど、レプトンさんもミッドランド氏も、

二言目にはハイドに、結婚前には節度あるお付き合いだぞ、良いか。って締めてるの。

ほほほ。そのくせハイドが作った料理には

美味いわ、コレ。って舌鼓よ。ほほほ。」


わあ。なんか大変だ。


「そしたら龍太郎君が、ねえ、節度あるお付き合いって?どこまでって聞くもんだから、おっかしくって!おほほ。」


なんと。いやはや恋バナがお好きな王妃様にはたまらんだろう。


「やっぱ、Aまでだよな。って言うからさあ!

メリイさんは固まるし、他の人はポカンとしてるし!今時Aなんて、言わないわよォ。あー、可笑しい。」


それさあ。龍太郎君のリップサービスで王妃様を喜ばそうと?転生者しかわからんやつや。


「ははは。でも王妃様の前でも牽制するなんて。

ハイド君、居心地悪くないですかね。

ムコいびり?」

「それがねえ。なんかアイツぬらりひょんみたいに、するりと受け流してるのよ。

そしていつのまにかミッドランドさんのふところに入り込みつつある。流石だわ。


シスコンのレプトン君はなかなか攻略出来ないけどね。」


なるほどね。レプトンさんはマザコンでもあるけど、シスコンでもあるものね。


「ま、メリイさんがキレてたからそのうち独立するんじゃない?私も釘を刺しておいたし。

メリイさん、エリーフラワーがいつでも戻っておいでと言ってるわよ、と。」


ははは。


上機嫌で王妃様は帰っていった。


「ねえ、ショコラさん、どう思う?」

レストランのお片付けをしながら、

隣りに控えていたショコラさんに声をかける。

「あー、ハイドですか。彼は大家族とか、にぎやかなのが好きですからね。良いんじゃないですか?

彼だって暗部育ち。嫌だったらすぐに出ますよ、メリイさんを連れて。

それにレプトンさんだって本気でハイドを嫌ってる訳じゃなくて、母親と妹が離れていきそうで寂しいだけなんでしょ。」

「レプトンさんにはお相手はいないのかしら。」

「イリヤが頑張ってますけどね。脈無しですよ、あれは。」


ふーん。


「アネさん。」

ラーラさんから声をかけられた。

「あの馬鹿が来ましたよ。」

「馬鹿とはなんだっ!馬鹿とは!」

「シンゴ、怒らないの。」

アンちゃんに連れられてシンゴさんが入ってきた。

「あら、お帰り。王妃様はグランディに戻られたのね。」

今回は二人で姿を見せずに王妃様を護衛していた。

気配を消す訓練だそうである。王妃様、気がついてなかったよ。腕を上げたね、シンゴくん。


「だいたいなんだよ、ラーラ。その姿は。化粧か?

いつもと違ってゆるふわ女子になってるな。」

「え、わかるの。シンゴくん。」

「やっぱり声で?」

「シンゴ、合格よ。整形後のラーラさんがわかるとはね。アンタしか見破られていないのよ。」


「え。整形?」

「そう。白鬼が顔を変えたのを覚えてるでしょ。

あの先生がやってくれたの。」


唖然とするシンゴくん。

「そうだったんですか。」

「それくらい彼女は狙われる可能性があると言うことね。」

「メアリアンさんみたいにですか。」

「もう随分落ち着いたけどね。」

ラーラさんはキョトンとする。

「え。私は彼女みたいに特殊な能力は持ってませんから。」


えっと、それは。


「うーん、アンタだけ知らないのは不公平か。

他言無用よ。といっても周りは知ってるし。

変な奴に話したらすぐにバレて消されるわ。」


「ええっ。何ですか。」

アンちゃんは軽く息を吐いてラーラさんに向き直った。

「彼女も亡国の姫で死んだことになっている。

その血筋を利用されたら、厄介な存在なのさ。

アンタと一緒だ。」

あら。アンちゃんがマジモードだわ。


「カレーヌ様はそれを知らない。だから自分の所に引き取ろうとしたんだが。

わかったら二の足を踏んだろうな。」

「でもさ、アンちゃん。カレーヌ様にメアリアンさん的に厄介な事情がある、と言ったから察してるよ。」


「そうだね、レイカちゃん。カレーヌ様にもちゃんと話しとかないとな。

彼女はメアリアンさんと仲が良い。だいたいわかったんだろう。」


シンゴくんがじっとラーラさんを見る。

「この女にメアリアンさんのことを話すのですか?

信用できますかね。」

シンゴくんとラーラさん、二人で軽く睨み合ってるぞ。

「ま、他所から聞くより良いだろ。ラーラさん。

メアリアンさんはギガントのアメリアナだ。

アンタと同じで死んだことになっていて、顔を変えてる。

そう、アラン様のエラ妃の妹であり、叔母に当たるよ。」


ラーラさんは目を見開いた。


「えっ!アメリアナ様?!あの有名なギガントの溺愛されていた姫!?

でも、叔母?って。」

「もう、ほとんど関係者がこの世にいないから言えるがね。

アメリアナ姫は王太后がお気に入りの楽師との間に作った子供だ。もちろんエラ妃とは血は繋がっている。父親の妹になるからね。歳下の叔母という事だ。

王太后は元々王族で、従兄弟同士で結婚しているから、間違いなく王家の血はアメリアナ姫に流れている。」


ラーラさんの顔色が悪くなる。


「彼女はこないだのギガント戦のとき、命からがらこの国に逃げてきて、顔にも身体にも大怪我をした。

それを救ってくれたのが例の医者さ。彼はギガント戦の被害者の娘達の怪我を治す行脚をしていたんだ。」


「…そうでしたか。」

「今はレイカさんのお兄様と結婚して、くくっ。

私の義姉という訳さ。」

そうっす。私の義姉でもありますよ。


「ま、まあ。そうでしたか。」

彼女は驚きと戸惑いを隠せない。

なかなか重たい話だしね。


「彼女や君みたいな血筋は、なかなか厄介だ。

亡国の姫だからな。それに君はハシナ国と砂漠の国、両方の血を引いてる。顔も名前も変えたが気をつけることさ。」

「……。」

「ま、ココにいる限りは安全よ。カレーヌ様のところはカフェも併設されてるから。行かないほうがいいかも。

ほとぼりが覚めるまで接客業はしない方がね。」

との私の言葉に、

「それでね、ラーラさん。もうキャリーという名前は捨てて。貴女は死んだことにするから、ビッキーやらセティ君には初対面のフリをしてね?

あとのシェルターで働いてるのは、ほぼ忍びなので大丈夫だけどね。侍女長はこちらには来ないしな。」


アンちゃんも念押しをする。そして彼女に向き直る。


「ラーラさん。ちょっと市場とかショッピングモールに行っておいで。

念の為だが、アンタの顔を見て寄ってくる輩がいないとは限らない。ハシナ国の残党とかな。

一応この国には入らないとは思うが。」


「この顔でバレないか試すのですね。」


「ああ、じゃあショコラさんと行っといで。」

私も声をかけた。

横にオー・ギンさんが来た。子守り交代の合図だ。

「追加でシンゴ、お前も影から付いていけ。

怪しい奴がいたら捕まえろ。」

「はい!アンディ様。」


それから1時間後。

いきなりアンちゃんが立ち上がった。

何か聞こえたのかしら。そのまま猫カフェの方に行った。

「レストランは一応予約制なので、こちらで良いですか?」

ここは基本王家の方とエリーフラワー御一家くらいしか飛び込みで入れない。後はカレーヌ様くらいかな。

誰が来たんだ。恐る恐る覗いたら、あら、レプトンさん?

「母の披露宴の時はお世話になりました。

そうか、あのレストランは予約制なんですね。」


頭をかきながら立っていて、足元にはクロタとタマちゃんが絡みついていた。




元ネタは書を捨てよ、町を出よう。から。

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