王妃様は面白いのがお好き。
アンちゃんやリード様のサポートが良かったのか。ブルートパーズの輝きのおかげか。
お食事会の時、ハイド君とメリイさんは気持ちを確かめあって、本当の婚約者になったそうだ。
あの日は月が出ていたし、ちゃあんとメリイさんに意図は伝わったと言う。
おばちゃん、してやったりだよ。
「それでね、義父と母が一緒に住もうと言うのです。」
困り顔のメリイさんだ。
「え、だってお母様達新婚でしょ。二人っきりが良いでしょ。」
ねえ。やっと長年の想いが実っていちゃいちゃラブラブの毎日ではないか。
ジュテームとか、モナムールやモナミとかの世界じゃないのかい。
「私が嫁ぐまで一緒にいたいとか。家からお嫁に出したいとか。良くわからないです。
挙げ句の果てはレプトン兄さんも一緒にどうか、と。」
お母様は大家族に憧れてるのかしら。
「だってメリイさんはエリーフラワー研究所にお勤めでしょ。警備とか護衛とか。」
「龍太郎君が一緒なら良いでしょ、って。」
あらら、そりゃそうだけどね。
「すぐに私が結婚する訳でもないのに。」
メリイさんは戸惑っている。
「とりあえずお試ししたらどう?一週間くらい。」
まあ親の気持ちもわかるからなあ。
そうですね、と言ってメリイさんは出ていった。
それから何日か経って師走。もう子供達もお座りができる様になってきた。
春になったらベビーカーに乗せて、ハシビロコウを見に行くか。パンジーちゃん元気かな。
するり。みゃおん。
おや、猫カフェのタマちゃんが来てくれた。
アンちゃんが居住部分に連れてきたのかな。
相変わらずの美猫さんだ。
「あう、おおう、まうまう!」
ランとアスカが大喜びだ。
「猫もお嬢様達も可愛いですね。」
ショコラさんと二人で子供達の世話をする、
「ショコラさんはご兄弟いるの?」
「ええ、生き残ってるのは、私含めて二人ですね。」
あら。
「ウチは代々、影の家系なんです。六人兄妹でしたが、あとは怪我、病気とかで。」
「ではご両親は?」
「ああ、保養所に入ってますよ。といいつつ簡単なパトロールくらいはしてます。」
「ご兄弟は?」
「王宮かな?兄は王や王妃様の護衛の一人です。」
「そうなのね。アンディさんや、ハイドさんとかは身内いないから。貴女は良かったね。ご家族がいて。」
「まあ?そうかも。三年くらい会ってませんが。
アンディ様やハイドみたいに一家全滅も珍しくありませんからね。シンゴみたいに赤ん坊のときに、捨てられてたってのも多いですよ。だいたい戦災孤児ですね。」
シンゴ君は最初から家族がいなかったのか。
その時、ドアが開いた。
「おほほほ。レイカ。来たわよ。」
「王妃様。突然ですね。」
「さっき、エリーフラワー研究所に行ってきたのよ。そしてハイドとメリイさんを呼び出して、今回の恋バナを詳しく、微に入り細を穿つ様に聞いてきたわ!」
うわああ。何と言う気の毒なことを。
「ほほほ。リードに歌わせたのは私ですからね。
協力してあげたのだから、顛末を聞くのは当然でしょ!」
「まったくその通りでございます。」
私とショコラさんはうやうやしく頭を下げる。
「この手を…じゃなくてこのノートを見て。」
王妃様が胸元から手帳を出した。
この手を見て。スチュワーデス物語ですよね。
「ここにね。彼らのセリフを一字一句間違えずに書き付けてきたのよ。
メリイさんとハイドの記憶がずれているところは聞き合わせ、擦り合わせてね?
例えば中庭に出ましょうと言ったのはどっち?とかね。
後は決めのセリフもね?漱石の。うふふふ。」
げえええっ。何と言う辱しめであろうか。
「素敵なラブストーリーとして漫画化するわ、
王妃様のラブ♡ストーリーズとして好評なのよ。」
「きゃあっ、私全巻持ってます!大好きです!」
「私も!」
はしゃぐのはサマンサちゃんとショコラさん。
恐る恐る聞いてみる。
「リード様のとアラン様のは知ってますが。
他の人のもあるのですか。」
「モチのロンよ!レイカ達のもあるわ。」
ひええええ!
「うわっ、嘘だ。やめて下さいよ!」
「ほほほ。お庭番と貴族令嬢の恋。そこにストーカーの貴族令息が絡む。描くしかないでしょ!
あ、大丈夫。王子達と違って仮名にしてるから!」
ううう、対岸の火事ではなかったよ。
「今ね。初恋が実る学園長夫婦の恋を執筆中なの。」
「それって!まんまじゃないですか!?」
「うーん。一応気を使って別の国という事にしてるのよ。じゃ、教師同士の恋に変える?
ドジでノロマなカメと罵り、罵られながらも、彼等には愛があった。誰にだって欠点はある。
ププッピ ドゥ♪」
「原型を留めてないとは思いますが、それにマリリン・モンローの映画も混じってますが、それくらいの改変が御本人達も、ホッとするでしょう!
…大映ドラマがお好きだったんですね。」
「ええ、薄汚いシンデレラ。って言うのもインパクト大だったわね。何かに使えないかしら。」
「この子誰の子?はやめといて下さいね。タイトルだけでも波乱を呼びそうです。」
王妃様はニヤリと笑って、
「ホラーもいいわね。赤い髪の女のブロマイドにほんろうされる男たち。バッドエンドの恋。」
「……。」
その作品、「赤い髪の妖女の呼び声」は王妃様の最大ヒットとなったそうだ。
(マキリップもお好きだったんですね。早川文○FTか。)
ちょいと怖い悲恋ロマン。
メリイさんに忖度して、ルートこと、メルドはダサく、グローリー元公爵をモデルにした、グリーン伯爵はイケオジに描いてあるそうな。
見せてもらったが、メルドは劣化版ニール(キャンディ〇〇○ディの。)
グリーン伯爵はフェルゼンの様だった。
―ちなみに、私とアンちゃんをモデルにした漫画は見せてもらえなかった。
「ほほほ。アンディが真っ赤になって、キャアキャア喜んでいたわよ。」
…多分、それ、喜んでいたのと違う。
タイトルはお熱いのがお好き。から。
ププッピ ドゥ♪
妖女サイベルの呼び声は面白かったです。
漫画化されたコーリングも。




