表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続 グランディ王国物語  作者: 雷鳥文庫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

214/288

秘密の話。

 シンゴさんとラーラさんは一時間ほど口撃しあっている。子供か。

「さっきから聞いていればこのヘタレ野郎が!〇〇ついてんのかよっ!」

ラーラさんはシンゴくんが、メソメソしてる理由が失恋だとわかってからは容赦なしだ。

「女のくせに何を言うんだ!貧乏国の男女おとこおんながっ!

だいたいオマエに言ってねえ!龍太郎とアンディ様に聞いてもらってるだけだろっ!」

「告る勇気もなくてトンビにアブラゲさらわれてんの。ちゃんちゃらおかしいんですけど!」

「この、くそったれアマがあっ!お情けで生かしてもらってるくせによ!」

「ふん!黒き狼と呼ばれた男がこんなヘタレとはね!」


面倒くさくなったから、おつまみとワインも2本程置いて、

「ご自由にね?さ、サマンサちゃん、ショコラさん。こっちでお茶にしましょうか。」


ギャアギャア罵りあう二人を置いて三人でお茶をした。

アンちゃんと龍太郎君は彼等の隣りで静かに飲んでいる。

「いざとなったら止めなきゃな、だけどさ多少のガス抜きもお互いさせなきゃね。」

と言っていたアンちゃんが、

「ヤダ、怖あい。」

と言うくらいだからねえ。


夜はふけてシンゴくんは、ベロベロになって眠り込んでしまったよ。

龍太郎君がちょっとだけデカくなって、

「俺ガ咥えて運ンデヤロウか?」

とのありがたい申し出をしてくれた。

「助かるよ、龍の字。隣りの寮にコイツの部屋があるから、運んでくれるかしら。」

「OK、アンディサン。」

「龍太郎君は酔ってないの?」

「ソンナことも無いケド。まだまだ平気カナ。」

「流石ですねえ。神獣様は。」

「ラーラ、アンタも強いジャン。」

「いつもあの男共に酒を強要されてましたからね。

気も抜けませんでしたから。貞操もですが命の危機も感じてました。彼等は最後は私を始末するはずだったからです。」

鬼みたいに強いスダンが彼女に執着してなかったら、とっくに始末されていただろうと。


「だから久しぶりに私も気が抜けて楽しかったです。あのヘタレ男と口論するのは面白かったですね。」

うん、ずっと見てたけどシンゴ君とラーラさんは親の仇かと思うくらい罵りあっていた。


「ラーラ、アンタ今日はウチの部屋に泊めたげる。

明日以降正式に仕事の割り振りとお部屋を決めましょ。」

「はい、ショコラさん。」


次の日一日寝て過ごして、シンゴ君はグランディに戻って行った。

「一件落着かしら。」

ラーラさんはすっかり馴染んでいる。


「こんにちは、アンディ様。姉さん。色々とご相談がありまして。」

入れ替わりにハイド君が現れた。

そこでラーラさんを見て、

「ああ、キミは。ハシナ国の人か。」

目を細める。

「? そうですが。貴方は。」

「わからないかあ。キミ達が切った、偽物リード様が私だよ。」

「ー!?あ、あの!あの怪我で助かったのですか。」

口を手で覆うラーラさん。

「彼はね、神獣様達に愛されてるのよ、ね、ハイド君。」

「やめて下さいよ、レイカさん。」

私の言葉に困り顔をするハイド君。

「…え、貴方があのハイド?一昨日シンゴが愚痴って、あの、その。

……これはアイツ勝てないわ。」

「?」

ははは。ハイド君困ってるよ。


「ところで私に相談って?」

「ええ、今度メリイさんのお母様、マリーさんとローランド様が入籍なさいますが、その披露宴というか。お食事会をここでお願いしたいと。」

「あら!おめでとう御座います!もちろんよ。

日程は?」

「だいたい十一月の末なんですが。それとメニューのご相談も。」

「うんうん。エビかしら。おめでたいから。」

「ええ、レイカさん言ってましたね。後は私も何か作りたいので。」

「ラーラさん。ハイド君はね、忍びなのに調理師免許も持っているのよ。」

ラーラさんの目が見開いた。

「すごい!師匠と呼んでいいですか!」

ハイド君は困っている。

「え、えーと。仕事で必要だったからね。料理人として潜伏するのに。」

何と、そう言う理由だったのか。


そこへ、エリーフラワー様が現れた。

後ろにキューちゃんもいる。


「レイカさん!こんにちは。あら、コチラが噂のラーラさんね?私はエリーフラワーよ。

ご存知かしら?」

「ええ、それは。お名前だけは。」

ラーラさんは、エリーフラワー様の圧に押されている。

「ふうん。なぁるほど。確かにレイカさんが気に入りそうだわ。美少年にしか見えないわね。」


やめてっ!人の嗜好に干渉しないでっ!


「でもね、お顔を変えないとヤバいわよ。いくら亡くなったことになっていてもね。

あ、そうだわ。つけぼくろ、いや、いっそのことメイクで?うん、ちょっといらっしゃい。」

そのまま、エリーフラワー様に奥の部屋に連れて行かれた。

「メイクで変身なのね。」

さて、どんな仕上がりになるのかな。

ハイド君がそっと近づいてきた。

「それであの、もう一つレイカさんにご相談が。」

「何?」

ハイド君が赤くなってモジモジしている。

「あちらの、世界でグッとくる、定番の。

求愛と言うか、プ、プロポーズの言葉はありますかっ!?」


キュー!

おお、キューちゃんもびっくりだ!


ゴホッ。

あ、コレはアンちゃんだ。ドアの外で入るに入れないでいるのだな。

ハイド君は気がついていないね。余裕ないんだ。


でもそうか、そうだったのか。とうとう君も一歩踏み出す気持ちになったか。おばちゃん、嬉しいよ。

 

こほん。では伝授しませう。

(何故か古典的表現になる私だよ。)


「多分、彼女も知っていると思います。もし、知らなかったら私が後日解説します。

レイカさんから聞いたと言って、こうおっしゃいな。

【月が綺麗ですね。】と。」


「はい?」

鳩が豆食ったような顔だ。いや違うか。豆鉄砲か。

豆ならそのまま食ってしまえるよね、美味しいし。 

閑話休題。

「日本人なら教科書で一度は習う、夏目漱石と言う文豪がおります。

彼は他所の国のことばで書かれた【貴方を愛しています。(I love you)】と言う言葉を何故か、日本語に訳すとき、

【月が綺麗ですね。】と訳したの。

まあ諸説あるけど。彼女は文学少女だから、グッとくるかもね。

もしすべったら、私が漱石がそう言ってたの、ごめーん!って謝るから。」


「そうね。どうせその披露パーティーで決める気でしょ。」

すっ、とアンちゃんが現れた。

「ちょうど月が出る頃に中庭に行きなさいな。

協力したげるワ。

そうだ、その時リード様に歌ってもらえば。みんな釘付けよっ!」


ナーイス!アンちゃん!


「は、はい。」

カラン。

その時ハイドくんのポケットから青い宝石が滑り落ちた。

メリイさんの目の色に似てる。

ブルートパーズ?

「エリーフラワー様に職人をご紹介いただきたいのです。

メリイさんに贈りたいと思って。元々は龍太郎がくれたものですけど。」


ええっ。

指輪をつくって箱をパカ!と開けてのベタなプロポーズをするつもりなのかしら?

いやだわ。フラッシュモブ必要?


「ペンダントが良いかな、と。この石大きいですし。」

確かにね。この後エリーフラワー様に相談だ。


するとドアが開いてエリーフラワー様が戻ってきた。

「ほほほ!出来たわよ、レイカさん!」

「おおー!!」

これは凄い。泣きボクロをつけたことによって印象がめちゃくちゃちがう。

一重の目が二重になっている。アイ〇チ?

「すぐとれるけどね。うちの新作化粧品。

レイカさんの話からヒントを得たの。」

それからウィッグ?

濃いブロンドの細かいウェーブヘアが、きらめく。

「めっちゃくちゃ素敵です!」


読者の皆さんは明日海りおさんが演じたエドガーを連想していただきたい。泣きボクロ付きで。

「でしょう?」

キャアキャア騒ぐ私達。ラーラさんは困り顔だが、満更でもなさそうだ。


「ところで、エリーフラワー様。今日は何か用があったのかしら。」

アンちゃんが水をさす。

「あ!そうそう。アンディ様。先日のね、メアリアンさんのドレスの端切れ。ソレイユ地方のシルクでしょ。」

アンちゃんは目を丸くしてうなずいた。

「あら、流石にわかるのね。」

「あれが少し手元に残っていますの。マリー様の披露宴のとき、それをアクセントにしたドレスを作りたいのよ。」


それは良い!もともとあのシルクはマリーさんがメリイさんの為に用意したものだ。


「その許可と。それからマリーさんのサイズを知りたいのね。まあふんわりとなだらかなラインにするけど、彼女のサイズをコッソリ調べたいの。

サプライズで贈ってお色直しで着てもらうつもりよ。」

「OK!早速クノイチたちに調べさせるわ。

あと、ホラ、ハイド。エリーフラワー様にお願いがあるんでしょ。」


ハイド君は赤面しながら、ブルートパーズを差し出した。


「―あら、まあ。うふふふ。」


ひとめで事態が飲み込めたエリーフラワー様は、にっこりと笑うのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ