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続 グランディ王国物語  作者: 雷鳥文庫


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210/288

彼女の選択。①

キャリーさんの一件も片づいた?と思って油断していた、10月のある日。


「え?何ですって?リード様。今からレイカと来て欲しい?エリーフラワー研究所の会議室に?」

アンちゃんが受話器を持っている。

それを置くが早いか、キューちゃんとネモさんが現れた。


キュー。


「アンディさん、レイカさん。リード様から呼び出しでしょう。キューちゃんがご一緒にと。」

「それは助かりますが。ええと、オー・ギン、ショコラ。子供達を頼むね。」

「ヤー・シチから聞いてます。リード様が動いたのね。厄介なこと。」

「?」

「レイカさん、行くとわかりますよ。」


会議室の前に行くとエリーフラワー様の金切り声が聞こえた。

「横暴ですわっ!」

「納得いかないでごわす!」

「うん、そうだよね。わかってるよ。」

メリイさん一家と龍太郎がドアの前で固まっている。

「ヤァ、朝からすまないね。」


エリーフラワー様がリード様に掴みかかっていて、

激しく、胸元を掴んで揺さぶっているのだ。

あらら。

彼女がこんなに怒ると言うことはアレか。

メリイさんの結婚問題に王家が茶々を入れたかな。


「だからさ、ね?私が根回しをしに来たんじゃないか。」

「え、エリーフラワー様。お離しくだされ。我が君が困っておられます。」

お、ピーターさんじゃないの。

「あ、ピーターさん。お久しぶりです。」

彼の顔が私を見てほっとする。

そして目で訴える。

仕方ないなあ。エリーフラワー様を止めるか。


「エリーフラワー様、どうどう。落ち着いて、離れて?

胸ぐら掴むのはやり過ぎですわよ。ホラ、リード様の服がはだけて無駄にセクシーになってますわ。」


「れ、レイカさーん!」

泣き顔で私に抱きつくエリーフラワー様。


「アンディ殿!」

ばしーん!がしーん!

エドワード様はアンちゃんに抱きついてるよ。

「うわ、逆だな。いつもと。エドワード落ちつけよ。

リード様あ?俺ら夫婦をエドワード夫婦のストッパーにするのに呼びましたねえ?」


「だってひどいのよ。」

「はい、エリーフラワー様。ある程度は察してます。」

「酷いでござるっ!」

「わかった。いや、他人の事をそれだけ怒れるお前は立派だ。」


「ごめんね。ネモさんと一緒に二人にも来て欲しくって、連絡したんだが。キューちゃんがみんなを運んでくれたんだね。」


そこでリード様は服装を整えられた。

ふう、とため息をついて、

「私は、昔から才女殿には頭が上がらないのさ。」

とおっしゃる。


うん、みんな割とそうですよ。

あのパワーにはなかなか勝てませんわ。

リード様が席につかれた。

「みんな座ってくれたまえ。」 

髪も乱れてセクシーさが倍増である。

相変わらず無駄にお美しい。


皆が席につき、お茶も配られてひと息ついてからリード様が口を開いた。


「先日、父の所に君達の父親の元公爵がいきなり謁見を申し込んだ。」

そこでグローリーご一家を見るリード様。


「彼は良くなったように見えたから、領地の屋敷に軟禁されていた。

そこに外国の要人達の使いが接触した。

まあ、あえて泳がせていたんだがね、

みんな君を娶りたいという申し出だ。」


メリイ様を見て、口元に困った笑みを浮かべておられる。


「君の父は君が自分で結婚相手を選ぶと言ったこと、王家がそれを保証していることが我慢ならないらしいんだ。それでメリイ嬢に求婚している国の内外の権力者の使いを引き連れて直談判に、来たわけだ。」

「そんな!」

「今更。なんで?」


「…多分ね、彼はもうあまり正気ではない。

それでまた、病院に戻っていただく。」


「あの、」

レプトン様がおずおずと切り出した。

「父は多分、寂しくなって。チヤホヤしてもらった人達に、良い顔したくてそんな話を。」


「そうだねえ。だけどこちらの話を反故にされてはたまらない。」


リード様は静かに怒っていた。


「父がね、公爵と外国からの使いに向かって、メリイ嬢はネモ公の養子とする!

そして婚約者は王家が選ぶ!!と言い放ったのさ。…それで渋々彼らは引き下がった。」


「そ、そんな。」

狼狽えるメリイさん。

「リードサン、ソレハ無いヨ。メリイ、俺と洞窟で暮ラスカ?」

龍太郎君。君の気持ちはわかるけど、巌窟王じゃないんだから。


エリーフラワー様が叫ぶ。

「龍太郎くん。私が反故にしてあげますわよ。ここに匿って守るわよ!」

流石だわ。本気の彼女は怖えぜ。とりあえず背中を撫でて落ち着かせる。


次に口を開いたのはネモさんだ。怒りのオーラが立ち昇る。

「ウチの養女になっていただくのは構いませんよ。

私の家族には誰もおいそれとは手が出せない。

――だけどね、王家の養女でも良かったはずだ。

つまりは、そう言うことですよね、貴方とアラン様がメリイさんの兄弟だと、マズイと。」


「え、それはまさか。」

あちゃあ。そっちかあ。


リード様の目も怒りで燃えている。

「そう、そのまさかだよ。父上は形だけでも、またはワザと求婚者達が誤解するようにしむけた。」


ふっ。くくく。


あ、アンちゃんが嫌な笑いをしている。

「凄いねえ。つまりアラン様かリード様の側妃にとお考えなんですね?王は。」

うん、キレてるね。困ったなあ。


「凄むなよ。アンディ。我ら兄弟にそんな意志がないのはわかっているだろう?」

リード様はため息をつく。

「側妃を父上が持ったせいで。母上が、亡くなるところであったのに。

私も兄上も妃は一人だけと決めているんだ。」


リード様はそのまま椅子に深く腰掛け頭を覆われた。

うん、マレー熊のツヨシくんの困ったポーズのようである。

仕方ないなあ。助け船を出すかあ。


「もちろん、王様はそれをわかった上であえて、求婚者達に誤解させているのでしょう?

わざとそう言う言い方をした。そうですよね。」


リード様が顔を上げる。

「その通りだよ!レイカさん!それに一応婚約者を探す、という事で、側妃の話は匂わせなんだ。

――ただ、父は我が息子たちは素晴らしいと思っているから、メリイさんが喜ぶと考えているフシがある。」

「マア、リードサンはお綺麗ダシ、神に愛されたヒトだしな。独身ならヨカッタのにな。惜しいケドネ。」

「そりゃあ、アラン様も素晴らしい御方。

だいたいさあ、まだこないだの襲撃事件の犯人の事でゴタゴタしてるのにさ。」

アンちゃんも落ち着いてきたね。


「そうですの。ではメリイさんを連れて亡命するのはやめてあげますわ。おほほ。

ねえ、キューちゃん。貴方と龍太郎くんがいなくなったらどうなっていたかしら。ほほほほっ。」


キュー。

エリーフラワー様とキューちゃんが圧をかけてる。

怖いよう。


さて、あまり語るのは好きじゃないが、人間関係には同意というのはかなり、有効なことがある。

「メリイさん。私も似た様な事があったから、貴女の気持ちは一番わかるつもり。

私の家は吹けば飛ぶような貧乏男爵家で、押し付けられた縁談はなかなか断れなかった。」


私はメリイさんの方を向いて静かに話す。


「それもね、酷いのよ。こないだ捕まった青髭野郎とかさ。隣のサイコパスとかさあ!」

「あ、その節はウチの弟もご迷惑をおかけしました…。」

ネモさんが消えいる様な声で言う。あら、飛び火したか。


「あ、あら。もう良いんですのよ。ほほほ。

ねえ、メリイさん。私達転生日本人だと受け入れられない価値観じゃない?お見合いもあったけど、ほとんどが恋愛結婚だったものねえ?

何で親の言いなりに無理ゲーな結婚しなきゃならんのよ。なんの罰ゲーム。

手に職をつけてりゃ、自分の口さえ養えればお一人様の方が幸せよねっ?」


「ま、まったくその通りです!レイカさん!」

ヨシ。メリイさんの同意を勝ち取った。この調子で心に入り込まなくては。


「流石ダナ、アネさん。」

龍太郎君の合いの手も宜しい。


「それでね、リード様はね、多分仮の婚約者、名ばかりの偽の婚約者を立てようとおっしゃってるのだと思うのよ。

側妃の話は無しで。そりゃ王様はそうなってくれたら、ラッキーくらいのお気持ちでしょ。

だからごり押しの前に婚約者をきめちゃう。

ちゃんと任務として割り切ってくれる人をね?」


「その通りだよ!レイカさん!

いやあ、私もアネさんと呼んでいいか?」



「やめて下さい、リード様。」

アンちゃんと私の声が揃った。


ノーサンキューです。


〇〇だったら良かったのにね、惜しいけどね。

は、日刊アルバイトニュースのCMですね。


タイトルはソフィーの選択から。

重い映画です。

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