許された者、許され無い者。
あけましておめでとう御座います。
今年も宜しくお願いします。
※人名間違いのご報告ありがとうございました。
訂正しました!
アラン様襲撃事件の一味にいた男装の娘。
その少女はキャリーと言うそうだ。どこかの恐怖映画のヒロインのようである。
(あの映画のラストには、ビビリましたよ、ええ。)
メアリアンさんが対面した。護衛にランド兄さんが付いている。
以下は、ランド兄さんとメアリアンさんから聞いた話である。
「貴女のお母様とお兄様がここに来ているわ。私は死者の声を聞く者。」
さっそくかますメアリアンさん。
「…評判は聞いたことがある。砂漠の王子が欲しがった巫女姫ね。」
「ええ、ガルダインは貴女の従兄弟になるのかしら?」
「いいえ。私の母はガルダインの異母姉。だから、姪になる。」
「なるほどね。貴女のお母様はこう言っている。
逃げて、と。キキ、逃げて。ハシナ国から。とね。」
「それは!何で知ってるの…母が私を呼ぶ愛称…。」
「お兄様はね、キリと。キリ逃げろ、ハシナ国に戻ろうと思うな。殺される!と。」
「…!それは兄様が私を呼ぶときの!
あ、貴女ホンモノなんだ!ああ!
で、でも!ここにいたって殺される!ここの王太子を襲ったのだから!」
「そうね。だけど貴女は特殊な生まれ。その貴女を処分したら面倒よね。」
「…何もかもお見通しですか。ええ、私は砂漠の国とハシナ国の血を引いてます。
そしてね、腹違いの姉達に疎まれている。」
メアリアンさんは痛ましそうな顔をしたそうだ。
「貴女のお兄様から伝わって来てるわ。
貴女達の母君は、王に寵愛されていたのですってね、
それで妬まれて殺された。お兄様も危険なお役目を押し付けられて、落命した。」
「ご存知なのか。何もかも。」
「貴女は美しいから縁談が降るように来た。それで姉君たちに妬まれたのね。」
「その中に姉達が懸想している者がいたなんて、言われても。」
今回のグランディ潜入も強いられたものだそうだ。
「私は多分どこかで始末される筈だった。」
「または、スダンに与えられる筈だった、でしょう?」
「…!」
「あの暗殺者は、すごい腕だったわ。グランディの王子を屠れば貴族にして貴女と結婚させると言われていたのね。お兄様が聞いていたわ。」
「父王は母には執着したけど、私達にはたいして興味が無くて。駒としか思ってなかった。
兄姉達に疎まれる私と兄が面倒になったと思います。」
「さて、彼女をどうしますか?アラン様。」
アラン様は影から現れた。
「うーん、今はもうハシナ国とは断絶した。
炎の柱が国境にあって行き来が出来ないんだ。
君達が牢に入ってる間にね。」
「炎の柱!?」
「神獣ドラゴンの怒りを買ったのさ。」
「君達にはそこの炎に飛び込んでもらうとするか。」
実際に、薬を撒いたりアラン様を襲撃したのは男達で彼女はただ監視されていただけだそうだ。
スダンが彼女を他の男から守ってもいた。
「君は何もせずに連れ回されていたと占い師が言うからね、君にはチャンスを与えよう。
炎に投げ込むのは君の服を着せた人形さ。」
「炎の中に?」
「そう。一瞬だけね、炎を鎮める。
その時に君の仲間達はあちらへ戻ろうとするが、
火に焼かれてしまうと言う筋書きだ。
―私の命を狙ったんだ。覚悟は出来ているんだろう?」
アラン様の笑顔は底冷えがするようだったと、ランド兄さんは語った。
「それでどうなったの?」
「アラン様がね、ネモさんとエドワード様を通じてキューちゃんに頼んだの。
炎を一部一瞬吹き消してって。」
「え、龍太郎君ではなくて?」
「ええ、レイカさん。だってキューちゃんなら姿を消せるでしょ。」
「ああ、なるほど。」
それで彼等は国境に来たそうだ。
燃え盛る炎に、恐れをなしたと言う。
「さあ、運試しだ。炎の合間を縫ってあちらへ行けたら無罪方面だ。」
影の1人に抱かれているキャリー人形を見て、
「姫は気絶しているのか?」
「まあな。誰か抱いて連れて行くか?」
…皆無言だったという。
アラン様の合図で国境の一部の火が消えた。
「すごいよね、キューちゃんがやってくれたんだ。あちらの国の連中も、見に来ていてね。
間者達が恐る恐る渡って、向こうに着くか着かないかのところで、また火が燃えあがったんだ。キューちゃんが押さえるのをやめたんだね。アラン様の合図で。
―みんな火に飲まれたんだよ。」
キューちゃんは、姿を消しているからハシナ国のものにはわからない。自然現象に見えただろう。
「人形は?」
「火は燃え上がって、国境ギリギリにいる姫にも襲いかかったのがあちらから見えた、と思う。
実際人形は焼け落ちたよ。ハシナ国のほうから悲鳴があがったね。
影も炎に巻かれて崩れ落ちたように見えたけど、本当は、キューちゃんに助け出された。
良くみたらシンゴさんだったんだよ。
アラン様とキューちゃんが打ち合わせたんだね。」
なかなかハードだわ。
「それから、彼女はブルーウォーターへ逃れましたの。」
「アラン様が言ったのさ。神獣に裁きをまかせる。
そなたが焼かれずにブルーウォーターに入国できれば、許されたものと見なすと。」
「へえ。」
ドキドキの松子ちゃんの入国チェックかあ。
それを潜り抜けたと言うわけか。
「彼女に寄り添っていたお母様とお兄様は昇天なさいましたわ。」
「メアリアンさんが力を貸したのね。」
「ええ、彼女に頼まれまして。何だかね、彼女の境遇は他人事と思えないんですの。」
それはそうだろう。
メアリアンさんも複雑な生まれだ。亡国の姫、アメリアナだとバレるとなかなかマズイのだ。
「ではシェルターに?」
「ええ、しばらく様子を見てます。ビッキーさんとはすぐに打ち解けましたわ。」
混ぜるな危険な二人ではないだろうな?
くせが強そうだぞ。
「彼女とも境遇は似てますわ。でもビッキーはガルダインが好きだった。
キャリーさんは、スダンのことは恐怖の対象だった。
同じく連れ回されて囲い込まれていても、そこは違いますわね。」
「でもね。メアリアンさんは顔を変えたでしょ。
キャリーさんはそのままよね?
見る人が見ればわかってしまうわよね。
彼女が生き残っていると。」
あのゴッドハンドの医者がいればなあ。
なかなか見つからないし、気が向かないとやってくれないらしいし。
こないだは、パンダ外交で攻めたよね。
「そうですわね。とりあえず今度彼女を連れてきますわ。誰でも入れる猫カフェの支店の方に。」
「あ、うん?」
「ビッキーがね、レイカさんに会いたがってますの。
アレ以来、会えてないでしょ。
彼女も貴女を慕っていますのよ。」
「レイカ。おまえ人気ものだなあ!よっ、みんなのアネさん!」
「ランド兄さん。ウザイよ。」
「それにレイカさんはキャリーさんを気にいると思うわ。」
メアリアンさんは薄く忍び笑いをした。
次の週。その言葉の意味がわかりました。
「うおおっふ。何この子?素晴らしい男役だわ!」
そこには男装の美少女がいた。
長いまつげ。黒の短髪。太いまゆ。通った鼻筋。
ああ、路線スターだ。東上公演待ったなし!
(宝塚の話っす、すいません。)
「ええと?自分の顔に何か?」
困り顔のキャリーさん。
「い、いいええ?何も。」
「レイカさんは男装の麗人がお好きですものね。」
メアリアンさんがコロコロと笑う。
「う、否定できない所が悔しい。」
「はあ。男に見えるのは嬉しいです。身を隠すのに努力しましたから。
ただ、シェルターで更衣室に入ったときに、悲鳴を、あげられたときは困ったっすね。」
「脱いだら大丈夫だったけどね。」
ビッキーがニンマリと笑う。
「レイカちゃんはクールビューティーな、ヴィヴィアンナ様に夢中ではなかったの?」
横でアンちゃんがあきれている。
ええ。不動のトップオブトップのヴィヴィアンナ様は別格ですとも。
王妃様。マジで宝○っぽいの作りませんか?
アンちゃんがじっと見ている。今にもハンカチを噛みそうだ。
何となく冷たい空気が流れて娘さん達が怯えてきたぞ。
コホン。仕方ないなあ。
コッソリと彼を隅に連れて行く。
「ねえ、アンちゃん。あの子アンちゃんに似てるわよね。顔の傾向が。」
―実際は髪の色と目の色と髪型が。
「あ、あら。そうかしら。」
ふっ。見る見る機嫌が良くなった。
「ま、まあ。そう言うことなら許容範囲かしら。
こちらの支店なら来てもいいわよ。時々ならね。」
一件落着かな。




