表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/288

料理人か包丁人か。

 九月が過ぎて、十月となった。

子供達も元気に大きくなって寝返りを打つようになった。


義母オー・ギンさんや、爆乳のショコラちゃんが手伝ってくれるよ。

「そういえば、ハイドくんは回復してきたの。」

「もうすっかり。キューちゃんの力はすごいですね。本当にもうダメだと思ってました。」

「ずっと龍太郎くんも付き添ってましたし。

二大神獣に好かれて幸せ者ですよ。」


うん?龍太郎くんがいるってことは。


「ええ、メリイさんも付き添ってますよ。」

そこでショコラさんが笑った。

「イリヤの話ではね、ハイドは、

『あー、シンゴが見たら拗ねる…。』って気をもんでるみたいですけどね、そんなの拗ねさせておけばいいんですよ。」

「だいたい、シンゴがメリイさんの相手と決まった訳じゃないし。シンゴは今、アラン様の所から離れてはいけません。」

オー・ギンさんが言い放つ。


「それに、メリイさんには研究所の人達からも人気があるみたいですしね。」

あら。モテモテなのね?


「メリイさん自身は今はハイドの方が気になるんでは。」

うーん。ナイチンゲール症候群と言う事象もあるしなあ。

まあ最後に選ぶのは龍太郎くんなんだろう。

ウチのランド兄貴の相手は、ツッチーが選んだものね。


何て話をしていたら、

「アネさん、ご心配をおかけしました。」

ハイドくんが現れた。

今日は黒髪だわ。目がぱっちりで、鼻筋も通ってるから、ビジュアル系のバンドの人の様だよ。

しかも怪我のせいかな。以前より顔がこけていて、美貌に精悍さがプラスだよ。

「金髪のカツラは血だらけになってしまったし、茶色のは龍太郎に咥えられてダメになったんですよ。」

「いいじゃない、似合ってるよ。」

「そうですか?まだ本調子じゃないから、頭冷やして風邪引くといけねえって、なんかかぶれってうるさくて。龍ちゃんが。」 

ほう、愛されてるなあ。

「エリーフラワー様なんか、レインボーアフロのカツラなんか出してコレはどう?なんて言ってくるし。」

ほう、いじられてるなあ。


「それでですね、アネさん。今度からエリーフラワー研究所の専属料理人となりまして。」

「聞いてるよ、おめでとう?」

「でも、今までとあまり変わらないんです。

見張りとかがなくなっただけで。

実際、龍ちゃんが守れば、護衛はいらないんですよね。」

そこでハイドさんはふふっと笑った。

「あの二人は心で会話できる。それは凄いことです。ま、メリイさんの返事は口にしなきゃいけないみたいですけどね。」

「それよね。メリイさんが一人言を言う危ない人に見られちゃうわよねえ。」

「そっすね。」

あははは、とハイド君は笑う。


屈託がないな。こう言うところが好かれるんだな。

ほら、足元に猫カフェの猫がニャーニャーまとわりついているよ。

うん、もしかして猫耳つきのカツラとか、いけるんじゃないか?

コスプレの人みたいにさ。リアルキャッツかな。

今度王妃さまに、言ってみるか。ふふふ。


「ところでねえ、アネさん。羨ましいと思いませんか。」

「何を?」

いかんいかん、妄想の世界に飛んでいた。


「彼らを見てると若い頃のね、プラトニックの綺麗な恋心を思い出すんですよ。

好きな人の側にいたい、自分の心がちぎれて、そのカケラがね、彼女にくっつかないだろうか。

いつも見守っていたい。寂しくないように。いつも寄り添っていたい。一人で暗い道を歩かせたくない。辛いことから守りたい。

一人で泣かせたくない。みたいなね。」


「ああ、うん。親心みたいな、無償の愛ね。」


気持ちはわかるのだ。実際にはストーカーや背後霊だが。


「それがね、彼らなんだな。」

「そうね、でもメリイさんはそのうち伴侶を選ぶでしょう。龍太郎くんもそれを望んでるし。」


「うーん、そうですね。切ないですね。

おっと、いけない。それで今日来たのはね、レシピをお教えしていただきたいと。」

「うん、わかった。でもね、だいたいもう知ってるよね?」

「例えばですね、揚げ出し豆腐ってなんですか?メリイさんが食べたいと。」

「ああ、あれね。」

「それから、揚げパン。龍ちゃんが、うるさくて。」

あら、懐かしいところをついてくるわね。

了解。


揚げパンはまあ、小さなコッペパンを植物油でカラリとあげて、グラニュー糖入りのきな粉にまぶすだけなんだけどねえ。

揚げると綺麗に膨らむよ。


「ソフトめんはわかります??」

「わかるけどちょっと無理かなあ。」

あれは実はうどんに近いものらしいんだよ。

なかなか製法がわからない。蒸すんだよね。

ああ、スマホがあれば。


「それも龍太郎くんなの?あの子本当に粉モンが好きだねえ。」

まあ、血糖値を気にしなくていいお身体だからなぁ。

おっと、そう言えば包丁あったかな。使ってないの。

「ハイド君。我が一番弟子として、これを授けます!」

「え、こんな立派な包丁いいんですか。」

「よかよか!包丁一本、サラシに巻いてえ♬修行に励みんしゃい!」



こいさんはいないだろうがね。



彼にも良い出会いがあればいいんだけと。


滲む月を見て思った。


グルメ漫画は包丁人味平、面白かったです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「こいさん」この時にはいなかったと思ったのでしょうが、後々こうなるとは、って感じですね。そこはかとなくハイドの思いを感じさせるお話でした。
>うん、もしかして猫耳つきのカツラとか、いけるんじゃないか? コスプレの人みたいにさ。リアルキャッツかな。 今度王妃さまに、言ってみるか。ふふふ。 …王妃様、ウッキウキで大暴走しそうですね ちょっと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ