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それぞれに大切なひと。

誤字報告ありがとうございます

ウチには、と言うかレストランには王妃様は良くいらっしゃる。

それこそ、飛び込みでいらっしゃる。

そうすると、高確率でリード様もいらっしゃる。


しかし。アラン様はレアである。

読者の皆様は、メリイさんやアンちゃんがアラン様と会ってる場面をご存知かも知れないが、

私自身はそうそうお会いしない。


お偉いひとなので、こちらも緊張する。

妙に私に甘い王妃様や、多少の無礼はさらりと流して下さる、リード様とは違うのだ。


―そのアラン様が。


私の前で、

「レイカさん、この度はすまなかった!」

と頭を下げていらっしゃるではないか。

やめて下さいよう。何でだ。 


「頭をお上げくださいませ!」

怖いから、ねっ。


「私は!」

頭を上げたアラン様の瞳は濡れている。

おお、久しぶりに近くで拝見すると、相変わらずの色気に満ちている。


「アンディには長生きして欲しくて!

引退を勧めておきながら、今回のことで警備とかのアドバイスが欲しくて!つい、牢屋にまでついてきてもらって!」

うん、それがつとめですから。


「も、もう少しでアンディを失うところだった。

妻子もいるのに。レイカさん、申し訳ない。」


うわっ、マジ泣きば、しとんさるバイ。


あの、お腹が黒い殿下が。

確かに、私は未亡人になる所であった。

それを思うと怖いし、悲しいし、腹ただしい。


だけど、私も貴族の娘。

王家への忠誠心はたっぷりと叩き込まれているのだ。

それに。ここの所の展開が早くて実感があまりないのだ。

後からじわじわと怒りが湧いてくるのだと思う。


「いえ、アンディがアラン様を庇うのは当然の事ですわ。」


「ううっ、アンディ。本当にあの時、オマエを失うかと思った。」

「ア、アラン様!」


抱きつくアンちゃん。二人でひしと抱き合う。

アンちゃんに浮かぶ恍惚と愉悦の表情。

何を見せられているのか。

やはり二人の間には何かしらの愛情があるのではなかろうか。薄い本が出来そうですか、そうですか。


すすり泣きが聞こえる。レストランのスタッフ、つまり影の皆さんがみんな、泣いている。

「アンディは幸せものだわ。」

「あのクールなアラン様が。」


本当にそうだよね。アラン様も千年の孤独を胸に持つ御方。

以前、心から信じられるのは王妃様とアンちゃんだけだと言っていた。

今はお妃様とお子様もいらっしゃるけど。


その二人は絶対に裏切らないからだ。


私がアンちゃんをじっと見てると、その視線に気がついたアンちゃんが、慌てて身を離した。


「だ、大体。シンゴ、ヤマシロ!お前達が、咄嗟に盾とならずに、どうするんだ!!俺は引退した身なんだぞ!」


「それは、誠に。」

「申し訳ありません。」

二人の顔色は悪い。


「なかなかお前の代わりはいないんだよ、アンディ。」

おお、アラン様が切なげにアンちゃんを見ている。

もう一度言う、何を見せられているんだ。


「で、ですが。」

「そうだな。側にいて欲しいのと、長生きして欲しいとでは、やはり長生きして欲しいなあ。

よし、シンゴにヤマシロ、そしてロンド。

これまで以上に励め。やがて国王となる私の盾となれ。」


「は、はっ!」「有難き幸せ。」

「充分につとめます。」


「では、またな。レイカさん。

おお、こちらが私が名付けたお子たちか。

可愛いなあ。うん、ウチの息子の嫁にしても良いんだぞ。」


冗談でもそんな事を仰らないでください。

恐ろしい。グランディの王妃なんて。

ノーサンキューでございます。

あいまいに笑う私。


アラン様は上機嫌で退出された。

半泣きになりながらアラン様に付いていく、影の軍団。


何だか、どっと疲れましたわ。

「ああ、アラン様♡」

アンちゃんが幸せの余韻に浸っている。


じいいいいいいん。


と言う音が聞こえてきそうだよ。

(昔の漫画の表現みたい。)


その後、メリイさんが龍太郎くんを連れて現れた。

「ワルイケド、レイカさん。なんかハイドに作ってやってクレナイカ。」

「あら、固形物が摂れるまで回復したのね?」

「ウン。」

「テイクアウトで?」

「ソウソウ。ハンバーガーセットなんか、イイネ。」

「三人分?」

「タノムネ。御礼はコレ。」

「あら、龍太郎、ここは私が。」

「イイヤ、ココは俺が。」

「いけませんわ。」


二人が、レジ前のマダムになっている間にどんどん作っていく。

最近ね、ウチの忍びの若い子が食べるのよ。

ハンバーガー。アンちゃんもだけどね。

バンズは特注。

パティとかポテトは用意してるのだ。

そうだよ!冷蔵庫と冷凍庫がうちにも来たの!


マ○クなみのオペレーションで、スピーディーにこなしていく。

ええ、マッ○で、バイトした事もありましたよ。

なんでも無駄な経験はないね。


「はい、唐揚げは私のおごりよ。」


「ヤッター!」


お代は、メリイさんからいただいた。

「お見舞いと言うことでタダでも良いんだけど。」

「いけませんわ。こういうことはちゃんとしないと。」


「そういえばメリイさん。お母様は初等科で礼儀作法の先生になられるんですって?」

「ええ、今度来た学園長。元グランディの、学園長なんですけど。

母の従兄弟なんです。是非にと声をかけて下さったみたいで。」


エリーフラワー様から、聞いて。

私自身はまだ母にちゃんと会ってないんですよ。と

メリイさんは寂しそうに笑った。

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