夢のあとさき。
お義母さんこと、オー・ギンさんが話を続けた。
「アンディ、話には続きがあるの。さっきのルートを龍太郎くんが始末した話ね、本人から聞いたのよ。」
そこでため息をついた。
「やっぱりそうだったのね。改めて聞くと、震えてくるわ。
キューちゃんが消し去るのは何度も見たけど。
やはり、彼も伝説の生き物なのね。
もう、龍太郎くん自身が、メリイさんには話をしてるの。」
「え?本人がきたの?」
「そう。ハイド君が気になるのか、多分粛正の直後に来たのよ。」
へえ。よっぽど気に入ってるのね。
「あのウロコ水?は良く効くのよ。水差しに入れたのを私も貰ったんだけど。
美味しいの。少し甘くて良いお出汁。」
うん?お吸い物?
「長年の腰痛が消えてね。
それは良いけどリード様が現れて、ハイドへ感謝をなさったのよ。」
相変わらずツボを押さえてるお方だ。
「そこにひと仕事終えた神獣様達が現れて。
ハイドを切った奴はキューちゃんが始末したと。
ルートは自分が焼いたと龍太郎くんが言ったの。
良いよね?って。
リード様は君達神獣がやる事には文句は言えないよと。」
「え、自己申告したのですか。龍太郎くん、なんかすごいなあ。」
ランド兄さんもびっくりだ。
まさか、褒めて欲しかったの?
「ねえ、アンディ。貴方、ハイドが生きる事に投げやりなのは気がついてたでしょ。」
「ああ、まアなあ。」
「え、いつも元気に、はい!ヤキソバ上がったよおっ!て言ってるイメージなんですけどね。」
「うん、オレも。」
「そうですね、ランドさん、レイカさん。
ハイドは若い頃に家族を亡くしてからね、空元気が本当の元気になったんです。
腹に一物もない。そんまんま、色んな感情が素通りの人間になっちまったんですよ。
それはそれで良い奴なので、みんなに好かれてきました。」
「あっ、ハイ。」
「問題は、本人がそれに気が付いてないこと。
自分の生命を粗末にしてること。
死んで妻子のところへ行きたいと思ってること。」
「妻子。」
「まあ、話すと悲惨な話なので。」
ここの世界は結婚早いから。
「その適当に生きてる感じがメリイさんに見抜かれてビンタ。」
「ええっー!」
「ま、あのお嬢様にそんな一面があったとはネ。」
つまり命を粗末にする奴は大嫌いだ。
ってことね。ゲ○戦記か。
「リード様は、そなた生命を粗末にするな。
この私が許さぬと、熱く説得なさいまして。」
ああ、またタラシこんでやがる、天然で。
すげえな、あの夫婦。
「ご自分の影武者でしたからねえ。
私に似て美しいからと災難であった、と。」
―死ぬな。そなたは美しい。
ものの○姫の方だったか。
ふっ、となんとも言えない空気が流れた。
ええ。リード様、貴方はお美しい。
その通りです。
結局、ハイド君は現役を引退してエリーフラワー研究所の専属料理人になったそうだ。
外で店を持つ、と言う話もあったけれど龍太郎くんの
「一緒にいなきゃ嫌だい。」
と、いう鶴ならぬ龍の一言で決まった。
「アイツは幸せな奴ですよ。」
「それに気がつくかな。」
オー・ギンさんと、ヤー・シチさんはしみじみとつぶやくのだった。
二日後。
とうとう母が帰郷することになった。
「あら、ご夫婦で引っ越してくればいいのに。」
アンちゃんがにこやかな顔で圧をかける。
そこへ、エリーフラワー様が
「こんにちは。お邪魔するわね。レイカ様のお母様には本当にお世話になって!」
にこやかにご挨拶にいらっしゃった。
「いえ、こちらこそ。お仕事をいただけて助かりましたわ。」
「少し、ご実家が片づいたらまた是非お仕事しに来ていただきたいわ。
お父さまもご一緒に、ねえ?」
「一緒に、ねえ?」
ミネルヴァちゃんが身体をくねらせる。
謎のポーズだが、可愛い。
「おや、可愛いお嬢様だ。」
父も相好を崩す。
「どうせ、甥っ子さんはこちらにいらっしゃるでしょ。
移住されてご自分のところから通わせるのも良いですわよ。」
「うーん、しかしグランディ王立学園にも魅力が。」
「おほほほ。ここだけの話ですが。
今の王立学園長は辞めて、こちらの新設校に来て下さいますのよ。」
「え、そうなんですか。」
「一連の事件の責任を取るのですって。」
そして、母達が帰郷した数日後。
元、王立学園の学園長。
ローランド・ミッドランド氏が入国した。
新設校の立ち上げ準備も兼ねて。
タイトルネタはさだまさしさんですね。
スピンオフ「ずっとあなたが好きでした〜」の方は、夢の続きというサブタイトルなので。




