大きいことはいい事かもしれないね。
誤字報告ありがとうございます
九月になった。ヴィヴィアンナ様のお子様がお生まれになった。
とても美しい女の子だよ。
お名前は「ディアナ」ちゃんだ。
「おほほ。ダイアナにしようと思ったのだけども、
アランの子、ダイアと被るでしょ。」
だそうで。
まあ、宝石と月の女神。結構ではある。
王妃様はリード様のところへ、お祝いに行かれて、それからウチにお食事に来られた。
龍太郎くんはお気に入りだから、メリイさんと呼びつけられた。
「王妃サン。お孫サン生まれてオメデトウ。
ハイ、コレ。」
龍太郎くんの合図でメリイさんが袋から出したのは。
虹色にかがやく食器セットだった。
「竜のウロコで作ったんです。こことかはちゃんと龍太郎が炎で曲げて細工して。」
「オウ。毒消シの効果がアルカラヨ。コレを使えば毒見要ラズダヨ!」
「まあ!まあまあ!すごいわ!嬉しい。
皿とカップとカトラリーが五セットあるのね!」
「ま、使ッテクレや。」
王妃様のリクエストで今回はカツ丼です。
「ああ、美味しいわ!」
「今度は牛丼ガ食べタイナ。汁ダクデ。」
「天丼も良いですよね。浅草に行ったら良く食べてました。ごま油を使って揚げるのがいいんです。」
「私も。大黒○とか並んだわ。」
「ところで。」
王妃様が切り出した。
「メリイさんのご両親は離縁なさったそうね。」
「はい、王妃様がご尽力くださったそうで。ありがとうございました。」
「良かったわね。お母さまとは、お会いしたの?」
「いえ。まだなんです。龍太郎と飛んだとき、目があったんですけどね。」
「そう。ところで、龍太郎ちゃん、このウロコって解毒に使えるのでしよ。一枚くれない?
城の井戸に投げ込んでおくわ。」
「イイヨ。」
龍太郎君は外に出た。
二階建てくらいの大きさになる。
身体を振るってウロコを二枚落とした。
「ハイ。大キイホウがイインダロ?」
大きいことはいいことだ。
某チョコレートのCMだ。山本直純だ、気球だ。
「ありがとう!」
「一枚は細かく砕イテアチコチに配りナヨ。学校トカ。」
もう龍太郎くんはインコ大の大きさに戻ってる。
本体が縮んでもウロコは大きいままなんだな。
「そうね。騎士達に代々受け継がれる毒消しの水筒ね。あれにハメられてる小さなカケラでも半永久的に効果があるのですもの。
アレが龍太郎くんのウロコだったなんてね。」
「オウ。千年モノダゼ。」
中に戻ったらハイド君がお茶を運んで来た。
「王妃様。あちらはまだ、きな臭いのですか。」
「そう。まだハシナ国の間者を排除しきれてないかもと、王とアランが対策を練っているわ。」
「そうですか。シンゴも大変ですよね、あちらに行きっぱなしか。」
「それだけでは無いわよ。ハイド。お前にも声がかかるかもよ。」
「は。」
「アンディもね、今アランが相談に乗ってもらってるから。行ったり来たりになってるわ、ごめんねレイカ。」
「いいえ。」
ハシナ国は元ギガント国と砂漠の国に接している。
グランディとは隣接していなかったから、今まで交流もなかったけど、その二国が崩壊したから、繰り上げてご近所さんになったと言う事か。
ギガントはグランディに、砂漠の国はマナカ王国に。
それぞれ取り込まれた。それで次はウチの国じゃね?と、疑心暗鬼になって潜入したのかな。
迷惑である。
だいたい、キューちゃんやネモさんの人智を超えたチカラで滅びたのだ。探られたってねえ、である。
「学園に薬を仕込んだ件。そいつが勝手にやった事になっているの。腹が立つわね。」
王妃様はため息をつきながらおっしゃった。
「これからね、ヴィヴィアンナのことが大好きなマナカ王国の王妃、アアシュラ様がお見舞いとお祝いにいらっしゃるのよ。」
うわあ、産後間もないのに。大変だわ。
「そこに私とリードが同席して、ハシナ国の事を話し合うわけ。」
うん政治だな。そうやって根回しをして行くのか。
その時カレーヌ様が現れた。
「王妃様。ご機嫌うるわしゅう。
お土産用のクッキーのご用意が出来ましたわ。お買い上げ光栄至極に存じます。」
「あら、ありがとう。貴女のクッキー美味しいわね。
さっきレイカのところで頂いたけども。
エリーフラワーが絶賛していただけの事は、あるわ。」
「勿体なきお言葉。」
「マナカ国への手土産にするのですか。」
「そう。」
それから王妃様はメリイさんをじっと見た。
「もしかしたらね、後で二人にもマナカ国のアアシュラ様に会ってもらうかもね。」
「はい?」
「きっとね、ドラゴンを従えている姫として貴女を婚姻で取り込みたい国が出てくる。」
「ええっ。」
「もう少し龍太郎ちゃんに大きくなってもらって、火でも吐いて貰えばねえ。大丈夫だと思うのよ。」
そこで王妃様はコロコロと笑った。
「マナカ王国のアアシュラ様はとても影響力があるお方。
彼女に広めてもらえば、ねえ??」
なるほど。
後日王妃様から聞いた話。
やはり、結婚話が出たそうだ。
アアシュラ様から。
「私の自慢の甥っ子なの。優しくて色おとこなのよ。歳は二十歳。ちょうどいいわね。」
まず、色おとこという言い方は昭和だ。
王妃様の脳内変換かもしれん。
でもま、身内のいい子なのよー。は当てにならない。
もちろん、龍太郎君がエミュー大になって威嚇したそうだ。
そこで王妃様が前世からの因縁と恋物語を披露。
「少し盛ってしまったわ。おほほ。」
という事である。少女漫画的に、浪漫溢れる物語に。
実際、一人と一匹はいたたまれずに下を向いていて、時々「違う、そんなんじゃ。」と、赤面して言ってたらしい。
するとその美しいお話は、マナカ国の皆さんの心を直撃したらしい。
「おお!」
「おおおっ!なんと美しい話じゃ!なんと言う悲恋じゃ!!」
「時を越えてめぐりあった!あの日あの時の約束を果たしに!!きっとキミを幸せにすると!」
え、そんな約束してたのでしたっけ?
おお!!おお!!と感嘆符のオンパレードだったら
しい。
そしてヴィヴィアンナ様が、そっとアアシュラ様に手を置いて、
「どうか、二人を見守ってあげて欲しいですわ。」
と、トドメをさされたらしい。
上目使いの熱い潤んだ瞳で。
(あれは、私もくらりとしたのよ、と王妃様。)
「もちろんよ!私が力になりますわよ!」
ヴィヴィアンナ様の色気に、コロリとやられたアアシュラ様は上機嫌で帰っていった。
聞くと半年振りにやっと、ヴィヴィアンナ様に会えたのだとか。
うん、その気持ちわかる。久しぶりに会うとクラクラしちゃうわよ。
それに龍太郎くんのウロコをお土産にもらったとか。
それは先程王妃様にあげたやつなんだけど、王妃様が友好のために一枚差し出したのだ。
「竜は十年に一枚しかウロコを落とさないそうなんですの。」(大嘘)
「まああ。そんな貴重なものを!」
「それでねえ、龍太郎ちゃん、悪いんだけど。」
「あー、ワカッタヨ。ウロコのおねだりネ。
チョット今、ゆすっても落チソウナモノ、ナイ。」
「もちろんよ、私待つわ。いつまでも。貴方のそのウロコが剥がれる日までー。」
あみんになった王妃様に、
「イヤ、飛ンデ、在庫ヲ取ってクル。メリイ乗る?」
と言って二人でランデブーと洒落こもうとしたらしいが、
「荷物モチガイル。」
ハイドくんも乗せたのだそうだ。
おや、タンデムもいけたのか。
「俺の扱いがひどい!」
ハイドくんは背中に大きなウロコをくくりつけられて帰ってきた。
「しかも、メリイさんの背中に抱きつく形で。飛ぶなんて。あーこんなのシンゴに見られたら。」
一人で心を痛めていたそうな。
「在庫の中で一番大きなのをくれたのよ。
大きいことって良いわね。」
王妃様はホクホクと喜んでらした。
そうですね、ジャンボブームでしたよ。
某チョコレートもだけど。ジャン○チョコもなかとか、ジャンボ宝くじとか、出始めは1970年代くらいかな。
ああ、いたな。ジャンボマックス。