失われた秘宝。
誤字報告ありがとうございます
メリイさんが龍太郎君に乗ってその辺を飛び回ったらしい。
彼女がドラゴンを使えることが、いやドラゴンが彼女に仕えていることが国中に知れ渡った。
御伽話みたいでいいね。薄い金色の髪をなびかせて。かっこいい。戦乙女みたい。
そして竜の宝を取りに行って、私にもお土産をくれたよ。
凄く立派なエメラルドなの。
「エリーフラワー様とミネルヴァちゃんとお揃いなんです。ひとつの大きな原石を割ったものなんです。」って。
嬉しいわ。
「ハイドがお供したんだけど。キューちゃんが乗せてくれてさ。
それでシンゴが拗ねちゃってさ。UMAに選ばれないのは仕方ないよね。」
うん。
アンちゃんがぼやく。
龍太郎君にメリイさんが乗って、危ないから誰かキューちゃんに乗って付いて行くとなった。龍太郎君が人を乗せるのは初めてなのだ。
そしたらハイド君が選ばれた。
「ハイドは動物に好かれるし。猫カフェの猫ちゃんにも、大人気ダワ。」
それは美味しいものをくれるからでは。
「まあ、俺もチーパ君がくるまでUMAに好かれなかったから。気持ちはわかるよ。」
アンちゃんは子供たちもあやしながら言った。
「そういえばさ、ツッチーとミノちゃん。仲良いんだっけ?」
「うん。何で?」
アンちゃんは照れながら言った。
「エドワードがさ、ミネルヴァちゃんと温泉に行ったらしいんだわ。それでね、パパ!傷だらけ!って言われてね。それから、特製軟膏やらツッチーに貼り付いてもらってね、美肌になったの。
だからワタシも、ねっ?」
「あっハイ。アンちゃんもツチノコに貼り付いてもらって美肌になりたいのね?
そして、そのうち娘たちと温泉に入りたいと。」
「そんな、はっきりと。イヤン。」
ははは。アンちゃんは傷だらけだからな。
どれ、呼んで見ますか。
「ミノちゃああーん、カモン!」
十五分後。
どどどどど。
「アネダン。ヨンダ?」
ミノタウロスのミノちゃんが息を切らせて駆け込んできた。
「うわ、プライベートエリアまで誰にも止められずに来た。」
誰がミノタウロスを止められようか。
「あのね、お願いがあるのよ。ツッチーを二、三匹紹介してくれない?」
「イイダスよ。アニダンヅケルノガ。」
ピイ――。
ミノちゃんが、口笛を吹くとぴょんぴょんとツッチーが二匹飛んできた。
そして。
ペタリ。ペタリンチョ。
「うわあああ?」
アンちゃんの背中と、肩から胸に張り付いた。
「おお?あったかい。染み入るよ、ジーンと効く効く!!」
フェルビ○クやフェイ○スのCMみたいなことを言って、感極まるアンちゃんだ。
「ありがとう、ミノちゃん、コレ。」
「ヴアォ。アネダン、アリダトオ。」
渡した新しい腰布は先日もしかしたら、ハイド君やリード様に必要になるかも、と用意したものだ。
無駄にならずに良かったである。
上機嫌でミノちゃんは帰っていった。
「時々ツチノコにはフルーツをあげると、ランド兄さんは言ってたわ。」
今は夏なのでブドウがある。
ひとつ口元に持っていくと、
ぱくり。
「あら、なんか可愛い♡」
文鳥やセキセイインコに挿し餌をした時みたいだよ。
ある程度あげると青く光って大人しくなった。
「いい感じネ。」
「この子たち、刃を通さないんでしょ。ヨロイ代わりになっていいね。
ハシナ国の間者が入り込んでいたんでしょ。」
アンちゃんは眉をひそめた。
「ウン、まあね。アラン様も大変みたいだよ。
またシンゴも行ったきりになるだろうなあ。
でもアイツはキューちゃん達から加護の指輪をもらったから、大丈夫かな。」
それからにっこりと笑って、
「ハイドの奴が俺にもコレをくれたのさ。」
ポケットから金貨を出す。
「龍太郎くんの宝でね。いにしえの金貨みたいだよ。龍の加護がついてる。今度クビから下げるよ。」
ああ、前世日本でも良く見た。コインペンダントね。
スペイン金貨とかの本物を下げるの。
流行ったな。
「あとネ。この純金のチェーンもくれたのよ。
少し太めだから、このままつけるのネ。ウフフ、似合うかしら。」
ええ、イキった兄ちゃんのファッションの変遷を見るかのようです。
アンちゃんはお仕事の時はとても目つきが悪いですから、
「ものすごーく、似合うよ!!」
親指を立てて置いた。
母も気をきかせたキューちゃんから、小さな金の指輪を二個も、もらって御満悦だ。
「龍太郎くんのところから、かすめてきたんですって。冗談よね。でも嬉しいわ。」
うん、本当に勝手にもらって来たんじゃないかな。
「こすり合わせたらキューちゃんが来てくれるんですって。」
それ、どこのアラビアンナイト。
龍太郎くんが、ネモさんとリード様の公宮に金貨と金細工をいくつか持っていったそうだ。
「ソレゾレの奥方ト王妃サンにアゲテヨ。」
ネモさんは大喜びして、
「おや、コレは!失われた大陸エルドラゴンランドのモノじゃないか!」
「ウン、ソウカモ!?」
「三千年前に一夜にして海に沈んだと言う!」
「アレ、ソンなに長生きシテイタカ。」
千年も三千年も一緒だよ、と笑って軽く火を吹いていたらしい。
「素晴らしいなあ!リード様!」
「そうだね!いくつか博物館にかざろうね。
幻の大陸の金細工の展示!客が呼べるね!」
「エ、チャント奥方にはアゲテヨ?」
「もちろんだとも!一番いいのは母上にだ!」
「ええ、それに異存はありません!」
そして、ツアーのチラシが各国に配られた。
「素敵なコテージと失われた大陸の秘宝。
秋のブルーウォーター公国へようこそ。
※※簡単な入国審査があります。
警告音を無視して入国された場合には生命の保障ができかねます。」
うん、ちょっと怖い。
王妃様は手の平くらいの大きさの、金細工の像をもらってご機嫌だったそうだ。
「ほほほ。入り口にレプリカの黄金の像を置いて、そこに入場券かわりのレプリカの宝石の目を入れたら、ピカリと光る仕掛けなんか、どう??」
王妃様、今までのアイディアで一番ナイスです。
「あとね、松子ちゃんの代わりに少年忍者たちに女装させて入れ替わらせるのは?
急に動きださせるの。度肝を抜くわよー!」
怖いからやめて。
あと、防衛の為にもダメ。絶対。
レイダース。失われた聖櫃からですね。インディジョーンズ。
ディズニー・シーでしか今の若い子は知らないかも。