芸術は爆発だ。
その後、すぐにエリーフラワー様がお子様を連れて遊びに来たよ。
「ああー!久しぶり。もうなんかここは実家気分よ。落ち着くわっ!」
「落ち着くわー。」
相変わらずの真似っこのミネルヴァちゃん。
可愛い。
ウチのリビングでぐでーんとくつろぐ御一行。
「まったくでごわすなあ。」
キュー。
「エリーフラワー様。学校は今、どこまで出来てます?」
「ふふふ。まず初等科が来春オープンでしょ。
もう、保育園というか託児所は待機児童もいなくて機能してるでしょ。
その子達がすぐ上がれる様にね。」
「まあ。」
「その一年後から、順次上の学校もオープンよ。
初等科は六年。中等科は三年。高等科は王立学園に準ずる奴ね。三年あるわ。」
「日本っぽいですねえ。」
「メリイさんの意見も参考にしたのよ。」
もちろん、中等科からや高等科から入学することも出来る。
「逆に初等科や中等科で辞めて、それぞれの専門学校に行く道もあるのよ。調理、看護、美容。」
「凄いですね。」
母は感心している。
「私の基金もだけど、レイカさんがカップ麺の売りあげを一個につき、1ギンずつ寄付してくれるのも大きいわ。」
「もうね、天引きされてるからわかりませんでしたよ。
エリーフラワーさま。うちの甥っ子が今10歳くらいかな。五年後くらいには高等科出来てますよね。」
「あら、あらあら。そうなの?出来るわよ!」
「ほう、甥っ子様ですか。どんな子でござるか。」
「私も三年前から会ってないし。ねえ、お母さん。
少しはおとなしくなってる?」
「うーん?どうかしら。」
「以前はアンちゃんに、なんで顔に傷があるの、っていってみんなを固まらせたんだよね。」
「おほほほほ!」
「あはははは!」
二人とも大爆笑だ。
「それは大物でござるな!」
「ひいー、ひいー、ああおかしい。」
「大丈夫よ。レイカ。その時よりは道理がわかるようになってるわ。」
そこでエリーフラワー様が真顔になった。
「そういえば、道理がわからない馬鹿モノがいたわよね。」
「ああ、メリイさんの。ルートとかいう若造の事でごわすな?
結局、城の女官を切りつけて、自分の妻、女豹の首を締めそこなって捕まったんでござるよ。」
「ええっ、結構ハードな話!」
「なんかね、ハシナ国の間者のせいみたい。
学園に潜り込んで、水に仕込んだんだって!薬を。
それで攻撃性があがって、あのロージイって女を突き落とした女官を切ったの。」
え、ごめん。情報量が多くて入ってこない。
聞いた話をまとめると。
メリイさんの元婚約者ルートは、恩知らずで自分のやらかしを自覚してない。
学園長がキミは騎士になったらどうか。とススメる。みんなにハブられてるし、寮のお部屋にも居場所がないから、剣の稽古に励む。
熱血教師のおかげで強くなる。
しかし、そこにはハシナ国の間者がいたのだ。
練習場の水樽に仕込まれていたのは、ヤバいお薬。
ドーピングで強くなる。他の子も強くなる。
お薬切れる。攻撃性が出てくる。
良くわからんけど、気に入らない奴らを殴りに行こうかと、チャゲアスの歌の気分になる。
そしてロージイ。
彼女はお城の女官になってる。いびられる。
ぶたれそうになったって、お洋服破られても頑張っちゃう。だけど涙がでちゃう。女の子だもん。アタックNo.1の気持ちで過ごす。
とうとう階段からつき落とされる。仕事を辞める。
意地悪はメリイさんの父上の仕込みだった!
怖えぜ。
そこへ、お薬でイッちゃったルート君の登場だ。
とりあえずロージイを突き落とした女を袈裟斬りにしちゃう。
ついでロージイに会いに行って、なんか知らんがクビをしめる。
それをパトロール中のシンゴくんとロンドさんが助けた。
ロージイがシンゴくんに惚れてまうだろ!のチャン・カワイ状態だ。
シンゴくんは、あ?メリイさんに意地悪したオマエなんか、嫌いだい、バーカ、バーカ。(龍太郎君のマネ)
と、ばっさりだ。
お分かりいただけただろうか。
それで馬鹿と女狐は離婚した。
馬鹿は獄中だ。もう出てくるな。
母は驚愕した。
「なんて怖いところなの!可愛いミルドルをそんな所に行かせるなんて!
あの子はブルーウォーターに進学させるわ!」
「まあ、ご本人の気持ち次第でござるが。コチラの方が安心でごわす。」
キュー。
「そうだよなあ!キューちゃんのおかげでごわすな!」
「カレーヌ様のクッキー食べる?極うまよっ!」
母がクッキーを食べさせる。
「あら、ほんと美味しい。」
「おいちい。」
大好評だ。
「新作なんですよ。私がリッチなクッキーが欲しいってリクエストしたんです。」
「Oh!なるほど!…もしもしカレーヌさん?私エリーフラワーよ、クッキー最高ね、それでね。」
いきなり部屋の電話を使ってクッキーを大量に注文するエリーフラワー様。相変わらず仕事が早えぜ。
職場のみんなに配るのだろうか。
「そういえばでござるが。王妃様がリード様のお子様が生まれるお祝いに何を送ろうか。と張り切っておられるでござる。」
エッ。また、いやげもの(みうらじゅん命名)、じゃなくて、センス溢れる昭和の民芸品っすか?
「こないだの松子ちゃんは私達もご協力したから。
材料集めとかね。連名にさせていただいたわ。
ほほほ。」
「エエ、ソノセツハ、ケッコウナモノヲアリガトウゴザイマシタ。」
棒読みになるが仕方ない。お気持ちだけいただきました。
「そ、それで今度は何を考えてらっしゃるのでしょうか。お雛様とか羽子板なんかいいのでは。」
羽子板はね、押し絵にしてね。
お雛様もみんなで手配したら間に合うとおもうの。
三人官女までなら。五人囃子までは大変かな。日にちもないし。
「それがねえ。こないだのハイド君を見て、インスピレーションがお湧きになったらしいの。」
「ハイド君をですか?確かに茶色のカツラが似合ってましたね?ア○ロ・レイっぽいと王妃様はおっしゃってましたが。
あとはメリイさん達がダビデ像っぽいと。」
(※ずっとあなたが好きでした。だけど卒業式の日にお別れですか。の第26話、母よ。にも書いてあるよ。)
「ええ、それでダビデ像を等身大で作るのはどうかしら?っておっしゃるの。
レイカさん、ダビデ像って何かわかる?」
「彫刻家を集めなくてはなりませんかな。」
かしゃーーん。
私の手からマグカップが落ちて割れた。
「あ!大変。」
「おお、こんな時こそ掃除機ですぞ。」
「何やってるの。レイカ。ミネルヴァちゃん、危ないからどいててね。」
「―はいいい?何ですと?等身大って??
ええええええええ?」
嫌な予感がするが、聞いておかねばなるまい。
「あのう、誰の等身大?というか?モデルはハイドくんですか?カツラをつけて?
本人は了解したんですか?せめて腰布を!!」
「え?なんか王妃様はありのままの芸術を追求すると。そしてリードの屋敷の入り口に飾ると良いわね、と。」
「ありのまま。」
ありのままの、姿を見せて、ありのままの私になるのか。
「モデルは、リードの方が美しいかしらと。」
「げへ。」
うぅ、さっき食べたクッキーを戻しそうである。
ローマやギリシャの神殿ではないんだから。
ここの世界はおヌードの神像を飾る文化はないのである。
「ダビデ像の目はハート形にくり抜かれてるんですってね、そこも再現したいと。」
そがんことはどうでも良か。
「ははあ、そうですか。やめた方がいいと思いますけどねえ。フル○○ですよ。」
おっと、口から不適切な発言が出てしまった。
「えええっ!」
「そんなっ!」
「いや、そりゃ芸術作品にはなると思いますよ、お二人とも見かけはすこぶる宜しい。
だけども、ハイド君もリード様もモデルになるのを了解してますか?いや断れないか。
それをリード様のお屋敷の前に置く?
あのう、その後ご本人に会う来客者もとても気まずいかと。
せめて腰布つけましょう、腰布。ねっ。」
なんで私が彼等の股間を心配せねばならんのだ。
だいたい、ダビデ像はナニがナニということで有名なのだ。ご存じであろうに。
「知らなかったわ。戦いに趣く男らしい像としか。」
確かに、布で作った投石器を持っているとされています。
「身体にピッタリのスーツを着けているのかと。
それをさらに腰布で隠せと言ってるのかと、理解しておりましたわい。」
私は真顔で言った。
「却下して、別案で行きましょう。羽子板にするのです。変わり羽子板という文化がありますから。」
私の提案で美しい御一家の変わり羽子板が作られた。リード様、ヴィヴィアンナ様、エドガーとフロル王子様。
「これは本当に玄関に飾って厄除けにするものなのです。」
お生まれになるまで関係者以外に詳細は伏せられた。
「えー!」
王妃様はご不満を漏らされたが、
「王妃様。王様をモデルにされたらいかがですか。
ご了承なさるのならお止めしません。」
と、目を見てお話した。
「あ!私が悪かったわ。やはり嫌よね。リードも。
ハイドも。」
しゅんとなってご理解いただいた。
ご自分の夫のおヌードは許せないのだな。
(リードは神がかって美しいから。本家ダビデ像にも負けないと思ったの。だそうです。)
後から事情を知ったハイド君からは、泣いて感謝された。
リード様は最後までご存じなかった。
平和である。