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二人の騎士。

 久しぶりにタマちゃんとクロタと遊んだ。

「おー、よしよし。」

にゃー。

「クロタちゃん、覚えてる?おばちゃんよー、

久しぶりねえ。」

母が撫でまわす。クロタは母に一番懐いていたと思う。

猫はなんのかんのいっても、エサを一番くれる人が好きなんだ。


「今日はアンディさんいないのね?」

「そう。もう一つの猫カフェ見て、動物園に行ってる。なんだかね、最近マーズさんがアンちゃんに懐いていてね。」

「あら、良くご飯を食べに来ていたわよね、マーズさん。最近来なくなったけど。」

そう、メリイさんにくっついていたものね。

「それで身体を鍛えて強い心になりたいんです!と、アンちゃんに頼み込んだらしいよ。」


身体を鍛えて失恋の痛手を吹き飛ばそうと。

どこまでも健全だ。


「確かに。筋トレしている時は余計なことは考えないものね。」


え、筋トレしてるの。母の知らない一面を見た。


「アンちゃんは、別に鍛えなくても動物達が守ってくれるじゃない、と言いつつ嬉しそうでね、

一緒に鍛えながら動物達の世話をしてるみたいよ。」


走りながら、重たい餌を両手に無駄に持つ。

「ワンモアセッ!」

声が動物園中に響いているそうだ。


動物達もマーズさんを応援してるとか。

平和でよろしい。


「こんにちは。」「おひさです。」

「あら、本当お久しぶり。」

カフェに入ってきたのは、主に王妃様の護衛をしている、アーサーとランクだ。

「今日、俺たち非番なんですよ。それで、猫ちゃああああん!と触れ合いたくて。」

「そうです。非番でもここなら、有事のときあちこちと連絡取れるでしょ、

会いたかったよおおおっ、タマちゃああああん!」


ああ、お城にタマちゃんがいた時からのファンか。

タマちゃん、あまりの圧に引いてるぞ。


それでもアーサーさんの膝に乗ってあげてる。えらいぞ!

クロタくんはランクさんの膝だ。


「ああああ!幸せ。」

「本当、幸せ。幸せってネコの肉球の形をしてるんスね。」


いや、それはどうだろう。


「はい、ご注文のココア。ホイップクリームトッピング。ネコチャンクッキー付き。」

サマンサちゃんが運んできた。

あんたら甘党だねえ。


「こちらのお嬢がアネさんのご親戚で?」

「うん、遠い親戚。」

私は騎士の中でもアネさんかい。

「ところで、アネさん。あの、フランって女またやらかしてお城を追われましたぜ。」


「誰、それ?」

「アネさんの靴に画鋲入れたり、足をひっかけてコケさせようとした一味の一人ですよ。」

「あー。いたね。でも大勢いたし、ひっかけようとしたのは、ヤー・シチさんが倒してくれたから。

ばたんきゅーとね。」


母の顔が曇る。

「まア、レイカ。貴女そんな目にお城であっていたの?」

「ウン、でも気にしてなかったから。」

えれえ!アネさんをいじめてた、フランって女、ちょっとハブにされただけで心を折って逃げだしましたぜ。」

ちょっと江戸っ子ぽいのがランクくんだ。


「だから、そんなにやられてないってば。」

「でね、フランにはあの女狐が絡んでいたんですよ。いや、逆かあ?」

頭を捻るのがアーサー君。

「あのロージイっていう子?」

「そう、ロージイをイジメようとして、返り討ち。」

「へえ。そのロージイって子、強いのね。」



そして二人はそっと顔を見合わせた。

「私達が、王族の護衛になるまでは第一騎士団にいたんです。」

「あー、うん。」

「そこの事務所の会議室にはアネさん、来たことありますよね。アンディ様とアラン様とランドさんとの顔合わせで。」

「あ、そうそう。行った。」

「勿体なくもアラン様が、アンディさんとレイカの結婚の許可をランドにお取りになった時のことね。」

「そうです、お母さん。」


こら、アンタのお母さんじゃないぞ。


「でね、話を戻しますと第一騎士団の事務官にその、ロージイって娘の兄がいましてね。ケイジといいました。

なかなか優秀で人柄も良かったんですが。」

「俺らも随分と世話になったもんなんですけど。」

「あの婚約破棄騒動のとばっちりで失職したんです。」

「あら、気の毒に。」

「こないだ古巣の第一騎士団に寄ったら、みんな憤慨してました。」


「結局、ロージイは卒業をせずに女官試験を受けてお城の女官になったんですよ。」

「え、それはつまり優秀なのね?」

「それは、そうです。だけどそれはケイジが退職するのと引き換えだったんですよ。」


「え、ちょっと意味わかんない。」

私にサンドイッチマンが降臨。


「あら、お母さんにはわかるわよ。

もともと、その娘さんは戦力外のつもりで、定員プラスワンだったんでしょ。

どんな成績でも合格させようと。

だから余剰人員を押し出す必要があった。

それで兄さんを退職させた。」


「なんで?」


「公爵様の怒りですよ。娘に恥をかかせた一家を追い詰めたかったんでしょ。

どうせ、一年前倒しに就職した女なんかつかえない。散々いびられて心を折れと。」


うわあ、怖い。


「うーん、とにかく娘が可愛くて嫁に出したくないってんで、婿を用意した。

親友の遺児に最高の教育と生活を与えた。

それが、ルートの野郎でがす。

普通恩をかんじそうなもんでやんすがねえ。」


猫をあやしながら、ランクくんが語る。


そうでやんすなあ。


「あっちにシンゴがいるから時々顔をあわせやすが、あの馬鹿どもにブチ切れそうになってましたよ。」


MK5か。


「アネさん、それは何ですか?」

「あら、口に出てたかしら。ほほほ。

マジにキレる5秒前って意味の若者言葉よ。」


…三十年くらい前の若者だけどね。


「いいっすね!」

「グッときます。エムケーファイブ!」


うん、喜んでもらえて何よりだ。


「ただいまー!」

アンちゃんが帰ってきた。

「お帰りなさいませ。アネさんのご主人様。」


うむ、絶妙にふざけて、どっかのカフェのメイドさんのようである。


「うわ、なんだよ、オマエさんたちいたのか。

せっかくの非番なのに行くとこないの?」


「ネコが好きですんで。」

「あー、今度の休みにネコをモフりにいくぞおっ!とそれをモチベに頑張りやした。」

喋りながらも、ネコを撫でまわす手がとまらない

二人である。

あー、今度の休みに温泉行くうっ!とそれを目標にデスマーチを頑張るSEさんのようである。


「ま、まあ、こっちは護衛になるから良いけどさ。」


「アンちゃん。ところでそろそろカレーヌ様の予定日ではなかったかしら。」

「あ、そうだね、そろそろだ。」


そして、その日のうちにカレーヌ様ご出産のニュースが入ってきた。

女の子だそうだ。いいね。

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