人事異動は春につきものである。
誤字報告ありがとうございます。
四月になりました。
正式にレプトンさんがリード様の補佐官になると、公示が出されたよ。
お父上も快諾されたと言う。
「ほほほ。私が公爵と直に話したのよ。好感触だったわ。王も同席してくれたのよ。」
それは、そうでしょう。
逆にそれで断れる人っているのかい。
王妃様のリクエストでほうとうだ。
かぼちゃがいい味出してます。
「美味しいわ。温まるわー。具は豚肉とキノコ?」
「後は大根と人参と長ネギですよ。」
「美味しいです。」
日本食だからメリイさんも呼んでる。
アンちゃんとシンゴくんは打ち合わせと報告しながら食べてる。
ちょっと離れて、丸テーブルひとつを占領して、とまってるのが龍太郎くんだ。
彼も食べたいっていうから、深めの容器に入れてあげる。顔をつっこんでるね。
うん、この絵面見覚えあるなあ。
イソップ童話にあったね、ツルとキツネの話。
ん?今日は狐さんはいないか。
キューちゃんは今、母の買い物に付き合ってくれてるらしい。
市場に行くのだが、キューちゃんが姿を現すと、
「どーぞ!どーぞ!お供えです!」
と野菜や果物や甘味なんかを
供えられてしまうんだって。
ラッキー!!と言う訳にもいかず。
姿を消しているんだとか。
「味噌味ウマイ、南瓜ウマイ!麺ウマイ!」
「邪魔くせえ。」
シンゴくんが鼻を鳴らす。
「メリイさん、何かリクエストある?」
「え、いいんですか?では、焼きそばを。すごく食べたかったんです。」
「なるほど。どのタイプ?」
「ん?」
「ほほほ。○○しんぼであったわね。いろんな焼きそばでモメるやつ。」
「ああ!あの、皿うどんタイプではなく。
ソース焼きそばなんですが。」
「了解。寮では三食でるの?」
「ええ、エリーフラワー様のところは、レイカさんとご飯を作ってたって人も割といて、うどんなんか直伝で美味しいですよ。」
「うん、間借りしてたからね。」
コチラでも、今日はハイド君がご飯を手伝ってくれてて、
大鍋とか持ってくれるし、野菜は切ってくれるし、で大助りだ。
「焼きそばですか、実は材料ありますよ。
中華めんも。明日あたり賄いにしようかと思ったけど、なに構わないでしょう。
良ければお作りしますけど。お持ち帰りして夜ごはんにどうぞ。」
スキンヘッドにタオルを巻いて気合いが入ってるぞ!
大きな中華鍋を取り出した。
「俺モ、食ベタイ。ヤキソバ。」
「ヘイ!ドラ太郎にも追加でねっ!」
「料理のアンチャン、ドラ太郎ジャナクテ、龍太郎。
大盛リデ、ヨロシク。」
「ヘイよっ!料理のアンチャンじゃなくて、ハイド君で頼むよっ!龍太郎!」
「料理のアンちゃん、ヤキソバ。伊賀のカバ○?」
「王妃様。私も思いました、あの方もスキンヘッドでしたよね。」
「私はあの作品で梅ジャムを知りました。」
「そうなの?梅ジャム。なんか有名なところはもう廃業されたとか。でも他のメーカーはやってるとか。」
「駄菓子ですか?私はマンボが好きでした。」
「なんかチョークみたいなやつね。」
「カッターで切り開いて食べてましたよ。」
「いや、やっぱりヨーグルでしょ。」
ああ、三人での前世トーク楽しい。
さあ、ヤキソバが出来あがったよ。
「お土産用と、コレが今食べる用だよ、リュウちゃん。」
「ウン、アリガト。」
「龍太郎、メリイさんの分まで食うんじゃないぞ。」
「ワカッテラ。シンゴ、オマエモ食ウカイ?」
「あ、食べようかな。」
「ほほほ。キューちゃんと比べて親しみやすいのう。」
「アー、俺、白狐ノ旦那ト違ッテ、犬ッコロノ友達モイネエシ、人恋シインダワ。
昔、サラ○ンドーラ、サラマ○ドーラ、ヒトリボッチッテ、言ウ歌アッタケド、アンナ感ジ。
――エ?ナイテルノ?」
昔、「みんなの歌」であったんだよ。
最後の夢から一万年だっけ?仲間もいなくて、
ひとりぼっちのサラマンドラ。火の中の竜かな。
誰か彼と話してあげてえ!と言う可哀想な歌だったわ。
私も王妃様もメリイさんもわかったみたい。
可哀想になって瞼を押さえちゃったわ。
「それで、ハゲワシと一緒にいたワケね?」
「ソウダヨ、アンサン。ネモノ頼ミヲ聞イテ、防衛シテヤッタノサ。」
そしてメリイさんの肩に乗った。
「ドウセ長生キスルンダ。一ノ瀬ノ子孫マデ、守ッテヤルカラヨ。」
「偉いっ!ホラ、リューちゃん。
ヤキソバもっと持っていきなっ!!
沢山食べてもっと大きくなれよっ!」
ハイド君が男泣きにむせびながら、ヤキソバを焼き出す!!
「オウ。」
「ちなみに火山にいたのじゃな。火には強いのかえ。」
「ウン。火モフケル。」
カッ!
リューちゃんの口から細く火が伸びて、料理コンロに火がついたぞ!
「おー!」
「おほほほ。チャッカマンみたいね。」
「キャンプに一緒に行ってほしいかも。」
尊い神獣になんて事を言ってるかって気もするが、
龍太郎君怒ってないようだ。
「狐ノ旦那ハ、光デ焼クケド、俺ハ炎ダネ。」
それから、王妃様の方を見て、
「王妃サンノ漫画デサ、戦国時代ノ話アッタジャン。ソノ中ニ硝石ヲ作ル話アッタヨネ。」
「ああ、あの。五箇山のか。」
「アレ、ヤッテミタ。ヒマダッタカラヨ。
アトサ、コレ原油ジャネ?ミタイナノモ見ケタヨ。」
「何じゃと!」
あ、そうか。化学部とか言ってたな。
「龍太郎君、エリーフラワー様と話してよ。
色々知識がいかせるんじゃない?」
「ソウダナ、一ノ瀬。」
「こら、メリイさんだぞ。龍太郎!」
「シンゴ、オマエイチイチ細エナア。」
「ところでアンディ、シンゴとヤマシロはアランの護衛にするんじゃなかったの?」
「はい、王妃様。そうですね。シンゴ、おまえ今度からアラン様のところへ行け。」
「あ。はいっ。」
「え、シンゴさん、行っちゃうんですか?」
「メリイさん、一応シンゴとヤマシロを鍛えてね、アラン様の護衛にする事になってたんですよ。
もう、コイツは一人前に育ったから、ヤマシロと交代するんです。」
アンちゃんが苦笑してる。
「それに貴女には最強の護衛がいるじゃ無いですか。」
「エッヘン。」
お開きになって、二人っきりになった。
「アンちゃん、シンゴ君を返しちゃうの。」
「元々交代の予定が伸びたんだよ。」
「でもさ、人型の護衛も必要でしょ。」
「まあな。だからヤマシロが来るんだよ。」
そこで難しい顔をした。
「アイツはこのままじゃ、俺のタチの悪い複製品になっちまうんだよ。」
「あー、そうね。」
心酔してるもんね。
「転生者の妻を持つことまで、無意識になぞろうとしてるんじゃないかあ?と、思ってさ。」
……。
「うーん、メリイさんも彼に好意を持ってる見たいだけどねえ。」
「そう、そうだと思ってたから、ほっといたの。
黒髪に惹かれてるだけかな、と思ってもいたけどさ。
まあ、ぶっちゃけお嬢様がアイツに恋をしてくれれば、大事な転生者を守るのに丁度いいし、
他所の国に嫁いで貴重な記憶の流失って事もない。」
でも、ホンモノが現れたからねえ。
「とりあえず離してみるかって事だよ。
貴族のお嬢様だからね、ご実家もそれなりの所に嫁いで欲しいと思ってる。
レイカちゃんみたいに結婚の自由を勝ち取るのは中々ないんだよ。」
うーん、そうね。令和の考え方だと女性でも仕事のキャリアは積み重ねていくのは当然だし、
30くらいまで結婚しないのはザラである。
メリイさんが今、研究の仕事が楽しくて仕方ないのはわかる。
無理して結婚をすることはない。ガチガチの貴族の石頭だったら、不幸な結婚になるかもしれないし。
「まだ、龍太郎くんのチカラも未知数だしね。
キューちゃんとタメ張るくらい強いのは確かだし。」
本当、味方になってくれて良かったわ、とアンちゃんはつぶやいた。