青春とはなんだ。
昔、そう言うタイトルのドラマがあったらしいですね。
ネモさんはため息をついた。
「私からお願いしても良いのですが、王妃様。
リード様のおチカラをお借りしたい。
お口添えをお願い致します。」
「リードを?」
「ええ、メアリアンさんに、リュウジくんと繋いで貰いたいのですが。
リード様の溢れるオーラというか、パワーがございませんと。
いつもメアリアンさんに温かい気を送ってくれてるモルドール兄妹ですが。
今回は彼らだけでは枯渇します。」
「王妃様!レイカちゃんは妊婦ですっ!リード様を是非っ!」
アンちゃんが顔色を変える。
「あ、そうね!アンディ。レイカに負担はかけられないわ。」
外線で公宮(リード様の仕事場)にかけて呼びだしをされた。
それから十分後、メアリアンさんが会議室に顔を出した。
「もう、良いのかの。」
「ええ、大分。ずっとランドさんが手を握っていてくださって。
それに、彼女と話をしなければ。」
「レプトン、妹さんの様子を見て来ておくれ。」
「はっ。」
そしてソファーが用意された。
そこに、メリイさんが来て倒れ込むように座る。
レプトン様とイリヤさんが支える。
「大丈夫かえ?」
「…はい。」
そして、ドラゴンを見て、
「リュウジのかたき!」と掴みかかろうとした瞬間。
バターン!
「ははうえー!!
お呼びと伺いましたあっ!!」
美しいオーラを纏って我らが王子リード様の登場だ!!
相変わらずの空気の読めなさだ!
いいぞお!
「んん?みんなお揃いだね?ネモさん!ここにいたのか!あちらも大変ではないか。」
「あ、リード様、それは、ちょっとあの、ここでは。」
「あっ!しまった!ローリア様の予定日か!」
アンちゃんが頭を抱える。
「―すまないネモよ!そんなこととは!」
「何をおっしゃいますか、王妃様の危機でしたのに!」
「何だって!?」
リード様の目が怖くなる。
「あ、もうリード、それは大丈夫だったの!
本当よ。今から魂降ろしかしら?それにあなたのパワーが欲しかったの!」
「あ、わかりました。また、メアリアンさんやら、ランド君と手を繋げばいいんだね?」
おう、飲み込みが早い。
「レイカさんは妊婦だからダメだよね。」
「その通りですリードさま!」
アンちゃんが食い気味に答えた。
「では、ネモさんの為にも、さくっとね。」
「あの?」
戸惑うメリイさんだ。
「まず説明するわね、40年もの間にドラゴンとリュウジ君の魂は溶け合ってひとつになりつつある。
――私は死者の声を聞くもの。
今回は生命力溢れるオーラをお持ちの、リード様のお力を借りて、この身にリュウジ君を降ろします。」
その目は閉じられた。
またその手はランド兄に繋がれていて、ランド兄の手はリード様が包み込むように握られている。
ドラゴンも目を閉じている。
お口の蛇は取られたよ。
そして、メアリアンさんは目を開けた。
すごい、薄っすらと男の子が重なってるのが見える。
コレがリュウジくんか。
学ランきてるよ、細目だよ。
「あー、あー、あ。テステス。
うん、喋れる。
一ノ瀬、久しぶりだ。なんだオマエもこっちに来ちゃったんかよ。」
「リュウジっ!!ドラゴンに食べられたんでしょっ!?カタキを取ってあげるっ!」
「あ、ちょっと待って。オレらもう一体化してっからよ。この龍太郎くんと。だからNGね?」
「龍太郎?」
「そう、王妃さま?だっけ?アナタも転生者で、
超人気漫画家さんだもんな、スゲー!」
なんだ、思ってたのとちがう。でもそうか、高校生だもんなあ。
「俺がリュウジでしょ。あ、漢字はね、竜を嗣ぐものね。だから竜は太郎くん。字は上岡龍太郎の、龍太郎ね?もちろん俺が勝手につけたんだけど。
音にするとタロジロ見たいで上等でしょ。」
でもしっかり転生者だわ、この子。上岡龍太郎出してきたよ。
「でさ!一ノ瀬っ!オマエ病気で早死にしたんだっって!?
キューちゃんとやらの記憶で色々わかっちまったんだよっ!
長生きして、しあわせな老後を送ってると思ってたのにさっ! なんだよ!
今回は長生きして結婚もして、子供もこさえて幸せになれよっ、畜生!」
あら、すごくいい子じゃないの。
「ううっ。リュウジ、私もその龍太郎さんに食べてもらえば一緒になれるかなあ?」
「「「何を言うんだ!」」」
うわ?シンゴ君とレプトンさんとマーズ君の声が揃ったぞ。
「バカなこといってんじゃねえぞ。そんな事したってなあ、○○コになるだけだぞっ!馬鹿野郎っ!」
ぷっ、吹いているのはアンちゃんだ。
下を向いて笑いを堪えている。
「この竜ってさ、そっちのお狐さんと一緒でほぼ死なねえみてえだ。だから俺も多分死なないから、もう、生まれ変わることはないんだろ。ずっと竜の姿で生きて行くんだ。
もう、オマエと道が交わることはないんだよ。
……あーもう、畜生っ、桜の下で告っておけばよかった!ぐすん。」
泣いてる。メアリアンさんの身体だけど。
なんとなくしんみりする一同。
「そしたら、デコチューくらい出来たかも知れないのにっ!」
「デコチュー…。」
思わずつぶやく。
「そうだよっ、悪いのかよっ!ほっぺチューがもっと良いけどさあ!うっかりくちびるにしたくなったらどうするんだよっ!男子高校生なめるじゃねーぞ!
バーカバーカ!!」
バカ呼ばわりされたが、可愛いだけだ。
「何だか、甘酢っぱいわ。」
「ええ、王妃様、レモン100個分ですかね。」
アンちゃんも、ランド兄さんも、生温かい目で見ている。
「青春ですねえ。」うちの母がつぶやく。
「まったくでござるなあ。」
エドワード様も頷く。
「なんか、身につまされる恥ずかしさ。」
「同年代だとぐっときますね。」
マーズくんとシンゴくんだ。
「ははははは!!可愛いなあ!キミは!」
声をあげたのはリード様だ。
「なんだよっ、綺麗な王子様っ!モテモテくんにはオレの気持ちはわかんないよっ!」
……モテモテくん。
「いや、キミが心が綺麗な少年だと言うことがわかった。で、コレからどうしたいの?」
「それなんだけどさ、コレくらいの大きさだったら、時々遊びに来てもいい?
本当は近くでコイツを守ってやりてえんだけど。」
「それは願っても無いことじゃ。
素晴らしい護衛ではないか?」
「本当?王妃さん。」
「うーんどうでしょうかね?キューちゃんと仲良くやれるかな?」
嫌そうな顔のキューちゃん。
「良いじゃん。白狐のダンナ。お互い守りたい人間は、いるんだろ?」
ツーン、と横を向くキューちゃん。
「勝手にしろ。
と言っておりますな。偉いぞキューちゃん、
大人になったなあっ!」
キュー。
…あの。なんと突っ込んでいいやら。
「それではもう人は食わないんだね?」
ネモさんが尋ねる。
「うわっ、ぺっぺっ、やめてくれよ。
俺の意識があるウチは食うわけないだろ。
ところでさ、ブルーウォーターのダンナ、
お子様、生まれたよ。早く行ったげなよ。」
「!そうなのか。確かにキミは危険が無さそうだ。
では王妃様、御前失礼致します。」
「おお、ローリアに宜しくな。アリサも来ておるんじゃろ、明日にでも顔を出す。」
「は。有難き幸せ。マーズ、お前もこい。
ドラゴンの危険は無くなった。おまえがここに来る理由も無いな。」
「はい。」
「メリイさん、弟がすみませんでした。ここで引導を渡してやってください。」
「え?」
「メリイ、お断りするんだろう?」
「今、ここで?」
「はい、もう脈はないのでしょう?私はね、セバスチャンみたいになりたくないんです。」
「…ごめんなさい。」
「良いんですよ。では。」
慌しく二人は去っていった。
「では、そろそろ良いか?このお姉さんの負担になるよ。一ノ瀬、オレの本体に手を置いて?」
メリイさんがドラゴンに手を置いたら、メアリアンさんは目をとじて、
ドラゴンは目を開けた。
「うん、もう良いかな、接続が切れた形だ。」
リード様が伸びをした。
「あ、うん、聞こえる。」
メリイさん?
「頭の中に直接聞こえてくるんですよ。」
「それはすごいなあ!」
リード様が目を輝かせる。
「ところでさ、ドラゴンって鳥系?トカゲ系?」
「さ、さあ?」
困っているメリイさん。
日本の竜なら蛇っぽいよね。
でも、こちらのドラゴンはさ、トカゲ?
くちばしはないよね?
「いや、鳥なら喋れるんじゃ無いかってね?」
リード様それは思い込みでは。
「あーって、言ってごらんよ。ホラ、咽喉に手を当てていてあげるから。」
おや、ハンドパワーかい。
「―ガァ、」
「うん、喋れる。」
「ナニイッテ、ア!ゲホゴホ。」
「喋れないって言う固定観念打ち破ったね?
ま、無理のない程度にね。
コレでメアリアンさんに負担をかけなくて、みんなとも会話出来るよね。」
リード様。あなたも神に愛された人だ。
ネモさんといい、リード様といい、本気になれば世界を手に入れられるだろうに。
「さて、ネモさんの分まで公務をしなくては。」
リード様は手を振って出て行った。
「偉いわ、リード。」
王妃様、それ当たり前ですから。
「そうですわね、いつもならここで、母上ー、お茶でもどうですか?ってなるところですわ。」
エリーフラワー様、辛口だわ。
ドラ野郎ことリュウジくんはメリイさんの肩にちょこんと乗っている。
「私、恐竜とか好きなんです。ドラゴンもカッコイイ。ラドンも好きだし。」
「ヨセヤイ、テレル。」
なんか一件落着のようだ。
誤字報告ありがとうございます。




