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春の日の話。

とりあえず、撤収だ。

「キューちゃん、とりあえず何人運べる?五人?

うーん、精気を吸わせ過ぎてたか?」

ネモさんの言葉に、あの、返しましょうか?

と寄ってくるチーパちゃん。

「そうなの?悪いね?」


―うわあ。UMA同士の熱いベーゼだ。


…キュー。


涙目になっているキューちゃん。

お察しします。


そして来たとき同じメンバーで研究所の中庭に降り立った。

お兄さんのレプトンさんにしっかりと抱かれてる、メリイさん。

まだ意識は無いようだ。


「何がありましたの!?」

飛出してくるエリーフラワーさん。

「とりあえず医務室に運ぶのじゃ。話はそれからじゃ。」


「あ、メアリアン、大丈夫?」

ランド兄さんに掴まってよろけてる、メアリアンさん。顔色が悪い。

「ええ、ちょっと霊気に当てられました。」


二人がベットに横になったのを確認して、

会議室へ入った。

ランド兄が護衛に残る。


「エリーフラワーさん、貴方も面接会場にいたから、リュウジの話はわかるわよね?」

「ええ。」

「レプトン。そなたは前世の話はどこまで聞いておるのじゃ。」

「日本と言う国にいて、若くして亡くなった。

学生の頃から病気がちで入院して、大学?の卒業が伸びたとか。就職してから再発したと。」

「リュウジのことは?」

「淡い初恋の相手で。病気がちで結婚も諦めてたから、最初で最後の恋だったと。

――そいつが黒髪、黒目だったんですよね、

だからアイツに執着した。」


そうだったのか。闘病生活だったのね。

気の毒に。

――というか、仲良いなあ、オイ。

恋バナをアニキにするとはなあ。


「それがトカゲ野郎の中の人なんですか。」

シンゴくんの顔がこわばっている、怖いぞ。


アンちゃんが肩をポンポンと叩いている。

「ま、チカラを抜きなさいよ、シンゴ。

コレからアイツをどうするのか。ネモさんとキューちゃんに聞かないとね。」


キューちゃんは端の方で母に撫でられていた。

「ヨーシヨシヨシ。今日は大活躍だったね、

甘いもの欲しい?アメちゃんあげようか。」

キュー。

母からアメちゃんを貰ってご機嫌のキューちゃん。


「レイカさんのお母様は、大阪のおばちゃんであったか。」

王妃様が感心してる。

ええ、昔からポケットにアメ入れっぱなしで、時々溶けてくっついてます。


「ええと、エドワードはいるか?」

「はい、ここに。」

廊下から入ってきた、エドワード様。

「そなたとレイカさんのご母堂とで、キューちゃんに頼んでくれんかの。

ネモを迎えに行くように。」


「はっ。キューちゃん、リンゴでござるよ。」

ポケットからデカいリンゴを出すエドワード様。

「私もアメを。――あらヤダ。ポケットにくっついてるわ。」


やはりな。


二人の説得で?キューちゃんが消えて、五分後には

ネモさんとマーズさんと残りの忍が連れてこられた。

「えっと、ありがたいけと、まだ片付けがあったんですが。」

眉尻を下げて困り顔の忍びたち。


ドンマイ。また行きなおしか。


そしてネモさんの肩には更に小さくなって、タカと同じくらいのドラゴンがいた。

あーチーパ君に追加で吸われたな。キューちゃんの分。

口はヘビでグルグル巻きにされている。


「とりあえずコレで危険はありません。」

う、うん。


マーズさんはまわりをキョロキョロ見渡している。

「あ、あの?メリイさんは?大丈夫なんですか?」

流石だな。本気なんだな。

「メリイは医務室じゃ。そっとしておくが良い。」

王妃様の一言でみんな席についた。


母とエドワード様を除いて。

母は歯を剥き出しにして、ドラ野郎を威嚇しているキューちゃんを、抱きしめて宥めている。

「どうどう。大人しくするのよ。」

「そうでごわすよ、キューちゃん。」

エドワード様も撫でてご機嫌とりだ。


「ところでの。この際聞いておくが、マーズよ。

そなたメリイ嬢に懸想しておるのか。」

うわ。恋バナが好きな王妃様。目が輝いておりますよ。

「はい。先日交際を申し込みました。」

「ええ、妹に。私の目の前で。」


カタカタ。

ドラゴンが暴れ出したのをネモさんが黒い笑顔を浮かべながら押さえつける。

「君、大人しくしないと締めるよ。」


カタ。


シンゴくんが立ち上がろとしたのを、アンちゃんが押さえる。

「キミも大人しくしないとシメるよ。」


ネモさんがため息をついた。

「うん、まあ、わかった。マーズ、君の気持ちにメリイ嬢が答えなかったとしても恨んではいけないよ。

すぐに引く事だよ。」

「え、兄さん。」

「セバスチャンの二の舞になりたくはないだろ?」 

それはとても衝撃的な一言だった。


「え、ええっ!!あ、そうか。そうですね。

兄さんには、そんな風に見えていたんですか。

……では脈はないんだ。」


しょんぼりとするマーズくん。なんか可哀想だ。

セバスチャンと言う名前は本当に禁句なんだな。

チラリとアンちゃんを見る。

アンちゃんはとても難しい顔をしていた。


「うむ、そうであったか。」

「いずれ、妹からお返事はあるかと思いますが。」

「……はい。」


「さて、ネモよ、そのドラゴンは今は危険は無いのだな。人肉は常食ではないと。」

「はっ。あの時のみと聞いております。

それに、コレだけチカラの差があれば、キューちゃんの敵ではありません。」


「それで、前世を思い出して?最近この辺を彷徨っていたのか。」


「キューちゃんとドラちゃんが言うには、四十年前の戦いで双方重傷をおった。

その後、それぞれ、ええと、栄養を取って復活したと。」

「今までベアーやスネークに散々食わせてきたではないか。ネモよ。それと同じだろう。」

「はい、まあ…。

それでその戦いの時、お互いの血肉を取り込んで、

なんとなく繋がりが生まれたらしいんです。

どこにいるかくらいは、わかるようになったと。」


そこでネモさんはみんなを見回す。

「キューちゃんはその後、ギガントの岩山にいた。ドラちゃんはこちらの火山にいた。

それぞれ棲み分けは出来ていました。

だけどキューちゃんはここに来た。」

キューちゃんはフン。と言った感じでヨソを見た。


「決定的になったのは、やはりメリイさんですね。

彼女が転生者だと、しかも、前世でのガールフレンドだと、キューちゃんを撫でた時、ドラちゃんにすぐ伝った。

ピーーンと、それこそエリーフラワー様がお作りになった電話線みたいに。

ドラちゃんはすぐにでも彼女に会いたくなった。」

「……。」

「もう、彼らの魂は溶け合っているんですよ。」


「メアリアンさんに剥がしてもらって昇天させるってことは、無理なんですね?」


アンちゃんが硬い表情で聞く。

シンゴさんは目を見開いている。


「背後霊の母親と魂が溶け合って一体化した、ガルダインの例もあったでしょ。無理みたいです。」


王妃様も難しい顔をしている。

「ドラちゃんも桜に固執していまして。

桜並木に住み込んでいたのも、そう。

力加減がわからなくて、折ってしまったけど。」


「メリイさんに会いたくて、ウチの研究所の上を飛んでいたのね。」

エリーフラワー様が腕を組む。

「研究所は鉄壁の守りですから。送電線、鉄条網とか。

後は私が、ツッチーやスネちゃまも忍ばせてましたよ。」


「それで、花見に行くために出て来たところを、

やれ嬉しやとばかりに、ご対面にやってきたんだな、けっ!」

アンちゃんが吐き捨てた。




「あとね、桜も見たかったらしいんですよ。

とても、

――とても綺麗で大事な思い出だった、とか。」


ネモさんはドラ野郎を見た。

その目には憐れみの色が浮かんでいた。

今日はもう一話投稿します。

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― 新着の感想 ―
>セバスチャンの二の舞 …ブルーウォーター兄弟にとって彼は黒歴史ですよね マーズが自分から気がついて良かった
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