春なのに。トラブルですか。
誤字報告ありがとうございます。
さて。エリーフラワー様御一家は研究所に移ることになった。
流石にいつまでもここに住んでいては、お仕事に支障をきたすしね。
――寂しいけど。
「ここと直通の陸蒸気の路線を引きたいけど。
秘密の場所ですからね。」
ええ、猫カフェだっていちげん様はたどりつけません。
誰でも行ける二号店は大好評である。
サマンサちゃんもあちらに呼ばれて忙しい。
母はエリーフラワー様のところのお仕事は終わりだ。今度は私の世話だ。
「レイカの出産まではお願いしたいのですが。」
アンちゃんが低姿勢に圧をかけてきた。
「失礼ですが、お礼はさせてくださいね。
………これくらいで、薄謝ですが。」
なかなかの金額を掲示してきた。
「ま、まあ。ホホホ。」
私でも転ぶわ。この金額。
「一度、帰ってあちらの様子を見てきたいのですけど。」
「ええ!もちろん。誰か手だれをつけましょう。」
アンちゃんはあたりを見回した。
キュー。
あら、キューちゃんいたの。
青い光と共に現れた。
「まあ、連れて行ってくれるの?」
「あア、それなら安心だ。」
キューちゃんの背中に乗る母。
「え?空を飛んでいくの?」
「キューちゃん、母を乗せてるときには、ドラ野郎とバトルはしないでね?お願い。」
コーン。
そして上空高く飛んでいったよ。
「キューちゃんはドラゴンに自分の姿を見せて牽制したいのネ。」
迷惑だなあ。巻き込むなよ。怪獣大戦争に。
入りかわりに部屋に入ってきたのはシンゴくんだ。
「アネさん、キューちゃんに乗っていたのは御母堂様ですか。
おーほほほほ!と高笑いをされてました。
いや、流石にキモが座ってらっしゃる。」
それ、怖くてヤケクソになってるんだと思うね。
「シンゴ、あっちの方はどうだ?エリーフラワー様とメリイさんは。引っ越して五日くらいたつよね、慣れてきたか?
それからその手はどうしたよ?」
あら、本当だ。手に包帯を巻いている。
「まずお二人の様子ですが。
メリイさんの記憶を元にして、器具やら実験方法の改良が進んでいます。
研究所みんな活気が満ちていますよ。
それから、ドラゴンが最近エリーフラワー研究所の上を飛んでます。
研究所の実験棟は国のハズレの荒野にあるんですけど、ヤツはその辺も縄張りだったらしくて。」
「うーん、危害は加えてこないのか?」
「ええ、それでブルーウォーターのマーズさんが気にしてくれて、連日来てくれてはいます。
あまりに続くのでネモ様に今度来てもらうとか。」
「ああそれは良いな。で、その手は?」
シンゴくんは苦笑した。
「昨日研究所から出たところで投石がありましてね。とっさにメリイさんを庇ったんです。
エリーフラワー様の特製軟膏を塗ったから大分いいんですよ。」
「あのツッチーの脱皮した皮入りのやつね、良く効くのヨ…って投石?」
「その場で取り押さえましたけど。ビッキーという娘です。
懸想しているマーズさんが、メリイさんにばっかり構ってるのが面白くなかったとか。」
「はああ?だからって投石はダメだろうよ、、
メリイさんに怪我が無くて良かった。」
あのビッキーさんが?
「どうせ、俺たち忍びが守ってるから怪我はしない、ちょっと脅かしたら国に帰るとそそのかされたらしいンですよ。
――もちろん、転生者だと知らされてなくて、
お嬢様が遊び半分で研修に来てるくらいの認識でね。」
「――このブルーウォーター公国にネズミが入りこんだのか?誰がそそのかしたんだ。」
「少し複雑でして。カチャって言う娘です。
同じ砂漠の民の。」
え、あのシンディの毒牙にかかったひとり?
ルビーの指輪をもらった?
「元々ビッキーとカチャは仲が良くなかったようです。カチャはまだサーカスにいますが、相方のレミはキューちゃんに焼かれてしまうし。
その心細い時にセティさんが様子を見に来てくれて、そのなんというか、依存する様になったらしいんです。」
アンちゃんが目を細める。
「それで邪魔なビッキーを片付けようとしたわけね。大事な転生者さまに石を投げた。しかも、公爵令嬢でしょ。即処分されると踏んだわけか。」
「それで砂漠の娘たちはネモ様のところの牢に入っています、ビッキーはそのうち解放されるとは思いますが。」
「カチャはどうなるかね。」
アンちゃんは硬い表情だ。
うっわー、胎教に悪い話を聞いてしまったよ。
「それで、マーズさんは?」
シンゴくんは難しい顔をした。
「――彼はビッキーが好きなワケではなかったから困惑しています。」
母は夕方帰ってきた。
「とりあえず生まれて首が据わるまではここにいるわ。
お父さんは微妙な顔をしていたけどね。」
流石にアンちゃんも神妙な表情だ。
「すみません、義母さん。オー・ギンも手伝ってはくれるそうですから。
双子で大変だとは思いますけど。」
低姿勢でペコペコ頭を下げている。
「何しろ、キューちゃんと一緒におウチに降り立ったでしょ。みんな度肝を抜かれていたわ。
それにキューちゃんを見て反対出来る人はいなかったわよ、ね、キューちゃん。」
キュー。
それはみんなびっくりしただろう。
私なら失神する。
「そうそう、レイカ。貴女桜が見れなくて残念がっていたじゃないの。」
「うん。」
「キューちゃんがね、こないだの花畑の上を飛んでくれたのよ。」
「お母さんがもらった花畑ね?」
「そしたらね。桜の木があったの!一本だけなんだけどね!
明後日あたり満開じゃないかな。
見にいったら?」
ええ!嬉しい!
「早速、メリイさんに伝えましょう。喜ぶと思いますよ。」
「何人までならキューちゃんが運べるかしら?」
キュー。
「掴まれば十人くらいは瞬間移動できるって。」
母が通訳する。そんな事も出来るようになったのか。
やったね。お花見だ。