春になって動くのは。
誤字報告ありがとうございます。
この作品、他の作品、沢山いただきました!
本当に皆様ありがとうございます。
まとめてでございますが、お礼を申しあげます。
二月は、逃げる。三月は去ると言うよね。
今日から三月。
アンちゃんは王国とこっちを行ったりきたりだ。
アラン様のところのお子様が三月中旬にお生まれになるから、何かと忙しいらしい。
時々猫カフェで猫を撫でて、英気を養うアンちゃんだ。
「お子様がお生まれになる前に、シンゴとヤマシロを1人前に、仕上げときたいなあ。」
「え、じゃア動物園には行ってないの?名誉園長でしょ。」
「う、うーん?ビッグなお猫様のところには、行ってるよ。ウフフ。ひまをみてね。
あとね?チーパちゃんには、お仕事のお願いをしにいってる。今日は向こうから来てくれた。」
チーパちゃんはチュパカブラくんの愛称である。
横を向いたら千葉の形になる、赤い犬ではない。
横に立って、乱杭歯を剥き出しにしてのスマイルを見せてくれてます。
尖った歯が芸能人のように光ってます。
うん、こわい。
猫カフェのクノイチさん達、怯えているよ。
それに猫ちゃんたちも毛が逆立って尻尾が二倍の大きさになっているよ。
先日、いきなり自室に連れて来られた時はやはりたまげた。
「うわあ。すごい迫力だねえ。」
アンちゃんがバラの花束を出したので、
「ん?」
と思って受けとったら、
「チーパちゃんに渡してね。」
なんだ、私にではないのか、とチュパカブラにわたす。
彼が長い爪がついた指で触ったら、
バラがバラバラになって落ちていくではないか!
生気を吸われて枯れている、というかドライフラワーのようだ。
まるでどこぞのアランやらエドガーなる一族のようである。
「うわあああ?」
「大丈夫だよ。チーパちゃん、コレが俺の奥さんだからねっ、今、ご飯ももらったでしょ、覚えたね?」
チー。
わあ。やはりチーって鳴くんだわ。
「いつもバラをあげてるの?」
「いや?いつもはこのエッセンス。
これはどこぞの谷でぐつぐつと、バラの花びらを煮ては加え、やがてこの香がつうんと立ち上がって、、。」
ーーおいおい、やめろっ!
「ま、冗談。普通の香水だよ。ほかにもラベンダーやら金木犀やら、バーベナだの、ネロリだの嗜むね。」
確かに。○○シタンのような、フレグランスな香りがチーパちゃんからする。
「ーまあ1番好きなのは動物の生き血かなあ?時々外で、ワンチャンと一緒に狩りをしているよ。」
うわお。やはりそっちかあ。
「この子は姿は消せないの?」
「それはないなあ。でもね、鳥と仲が良くて乗せてもらったりしてるよ。」
へえ。
ということがあった。そして今猫カフェで皆さんに恐怖を振りまいている。
そこへ影が入ってきた。シンゴくんだ。
「アンディ様、アネさん。おはようッス。」
「お、シンゴか。」
「おはよう、なんか浮かない顔してるねえ。」
「ーーーうーーん、昨日、学園の下見に行きましたよね。そこで嫌なものを見ましてね。
もしかしたら、本当にアラン様がおっしゃる婚約破棄騒動が起こるかもです。」
「なんだよ、それ。報告!」
「はっ。昨日午後、中庭の噴水で逢引きしてる男女を見ました。けども、そんなのは気がつかないふりをするのが、常でしょ。」
「まあ、相手が同意していて、事件性が無いならな。」
「それで問題は、もう1人令嬢がいて。その子に、見せつけるようにイチャイチャしてて。」
「へえ、クズ野郎だ。」
「野郎は気がついてなくて。女が女に見せつけていて。」
「うん、クズ女郎だ。」
「それでですね、そのバカップルはそこで、プロポーズなんかしたりしちゃって、それでまた熱いベーゼを交わしてですね、立ち去ったあとには泣いてるご令嬢が残ったんですよ。」
…うっわー、きっつー、。
そこでシンゴは眉間にしわをよせた。
「普通ならほっとくんですが。三十分もシクシク泣いてらして。それにどうも、そのご令嬢の兄君と見られるお方が探してらしたから。まあ、ご案内したわけです。」
「つまりそのご令嬢の婚約者が、クズ野郎なワケだな。」
「ご明察です。」
卒業式まであと6日なのに。そこでやらかす気なのか。
「どうも兄君もご令嬢も、その2人が出来てるのは勘づいてたみたいなんですね。」
「…アンちゃん、あのウェディングドレスって。」
「…うん、そっちから流れてきたんだな。
親御さんはとっくに掴んでたんだろ。」
しかしどうして卒業式でぶちかまそうとするのかなあ。そういう呪いにかかってるのかな。
「多分ねえ。卒業式には親がくるし、そこそこ偉い人も来るからさ。知らしめるのに便利なんじゃない?」
「今回はそのお偉いさんはアラン王太子様って事ですか。」
「んなろっ!って言いたいけどさ。もうご令嬢の親御さんも見限ってるんだろ。その馬鹿野郎を。
やらかすだけ、やらかさして追い詰める気なんだろ。
うわー、ヤダヤダ。」
そうかあ。でもその女の子は不憫だわ。
「と、いうわけでシンゴ。今から縄跳び50回。そのあとランニング10キロね!」
「何で、と、いうわけなんですかー!!」
「お黙りッ!そんな事じゃ立派なダンサーになれなくてよ!あー、水分補給も忘れずにね!」
「厳しいんだか、優しいだか、どっちだー!
それにダンサーは目指してませーん!」
わめきながらシンゴくんは出て行った。
「あの子が一番見どころあるのよ。まだ17だしさ。」
「あら、もっといってると思ってた。」
「さて、チーパちゃん。アイツがさぼらないように、喝を入れてやって!」
そういえばいたな。
チー。
チーパくんが出ていった。
遠くで悲鳴が聞こえた。どんまい。
「ううーん。卒業式で余計なことをするやつは、キューちゃんに焼いてもらうか、チーパちゃんに吸ってもらうといいかもネ。」
私もそう思う。