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続 グランディ王国物語  作者: 雷鳥文庫


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美しき蒼き宝石には、謎がある。

年があけた。

「学園にね、求人票を出そうと思うの。」


エリーフラワー様がお雑煮を食べながら言った。


「いいのでは。もうこちらの研究所も完成したんでしょ。寮も完備で。」

「そうなの。居室も完成したの。

でも、生まれるまではここにいてもいいかしら?」

「モチのロンよう。」


相変わらず王妃様の口癖の昭和言葉がうつってる、アンちゃんだ。

モチを食べながらなのは洒落なのかしら。


「それでね、女性を中心に採るつもりよ。嫌な結婚を強要されてる子もいるかもでしょう?

変な話、若くて素直に仕事を覚えてくれればいいから、特に成績にはこだわらないわ。

手先が器用なら縫製とか。子供が好きとか、下に兄弟がいて世話に慣れてるなら、託児所を手伝ってもらうとかね?」


なるほど。


「親に搾取されて逃げたい人もいるはず。私みたいに。

シェルターまでたどりつけなくても、就職して私の研究所に入れば、おいそれと第三者は入れないわ。」

「良い考えでごわすな。」

「でしょう?」

――貴族の娘ならみんな働かなくても生きていける、という訳ではないのだ。

だけどせいぜい、貴族のお嬢様が出来る仕事って、王宮の女官、侍女、貴族の子の家庭教師。商会の事務くらいかな。

商家の娘さんなら家業の販売とかやれるけどね。


「まあねえ。ウチみたいに吹けば飛ぶような男爵家なら喜んで就職したがると思いますよ。」

ミネルヴァちゃんに白玉団子のお雑煮をあげながら、母が同意する。

小さい子にはお餅はまだ危ないからね。


キューちゃんは餅巾着の煮たのをもらって、御満足だ。


母はエリーフラワー様が正式にお給料を出してくださるので、ここで産前産後の世話をしてくれる事になった。

(レシピは私のを使ってもらっている。)


そして1月末。

エリーフラワー様はご出産された。

玉の様にまるまると肥えた赤ちゃんだ。

ミネルヴァちゃんにそっくり。つまりエドワードさまにもそっくり。

濃い眉、パッチリとした瞳。焦茶の縮毛、立派な鼻筋。めちゃくちゃ完成した顔の赤ちゃんだ。


病院にお見舞いに行った。

「可愛い!可愛いわ!」

私と母の声が揃う。

「すごいなあ!いや、こんなに可愛い子が大人にはなると、エドワードみたいに、くどく暑苦しくなるのねえ!」

「はっはっは。アンディ殿、オモテに出るでござる。はっはっは。」


そこへ。

「エリーフラワー様。おめでとうございます。」

「やあ、おめでとう。」

ヴィヴィアンナ様とリード様ご夫妻だ。


「おや、エドワードにそっくりだなあ!凄いなあ。

頭の中は才女殿に似るといいなあ!」


相変わらず思ったことをさっくりとおっしゃるリード様だ。


…みんなの顔が引き攣っている事に気がつきましょう。


「しかし、丈夫そうだ。スクスク育って母上やお姉さんを守るんだよ。ええと?サファイアくん?だったね。母上が名付け親の。」

「ええ、そうですわ。」

そこでヴィヴィアンナ様が進み出た。

「こちらを。先日、グランディ王国で採れたものです。是非、サファイアくんの守り石に。」


ヴィヴィアンナ様が白い箱を取り出した。

確か御実家の領地にはサファイア鉱山がありましたね。

「まあ、見事な!」

「トラピッチエ・サファイアですわね!」

美しい六角形だ。放射状に見事にラインが入っている。

その大きめのルースが、ペンダントのトップ部分についている。

「ありがとうございます。」

エリーフラワー様の感激を無視して、キューちゃんが、


パクリ。


ペンダントを口に入れたではないか!


「な、何をするでござるか〜。」

「ええっ。何かキミの気に触ったなら謝るよ。」

「そ、そんなの飲んだら身体に悪いわよおぅ!」

「さ、おばちゃんの手にペッ!として、ペッ!と。」


ごくり。


「ああああ―。」

皆の懇願虚しく飲み込まれた。

「何てこと。」

ヴィヴィアンナ様が床にへたり込んでしまわれた。


ピカリ。


キューちゃんが光る。

そして。


カラーン、コローン、カランカランコローンン。


鬼○郎のゲタみたいな音がして、

二つの物体が吐き出されて床に、落ちた。


「まあっ。」

先程のペンダントトップにプラチナの台座がついて、ステキになっている。

「これは!ガルダインのサークレット!」

もう一つは砂漠の王子のサークレットだった。

なんと。台座のかたちに穴が空いている。

「このサークレットを原料にしたのか!

これは?シンディの置き土産か!ああ、アメトリンも付いたままだ、、、。」

驚くリード様。


「流石のキューちゃんも、プラチナは消化できなかったのねえ。」

納得するアンちゃん。


いやすごいよ。お腹溶鉱炉?しかも保存機能がついてるの?

あ、もしかして?いくつか胃があるのかもね?


――頭に閃くのは、幼き頃に読んだ怪獣図鑑。

怪獣の表皮が透けて中の構造を教えてくれる、子供の心を熱くする優れた本だ。

これで全国の良い子たちが怪獣の神秘の中身を知ったのである。

ゴジラなんか溶岩ぶくろとか、核融合ぶくろとか持ってたような気がする。胃みたいにいくつかぶら下がってるの。


それともキューちゃんはニワトリの砂嚢さのうが近いかしら。



「ありがとう、キューちゃん。」

エリーフラワー様も大喜びだよ。

「なんだろう。キューちゃんの加護を感じるよ!」

キラキラした目で感激されている、リード様。


「うむ。何かコーテングもされているようですな!

透明な膜で覆われており申す。」


…エドワード様。

♬もしかしたら、もしかしたら、それってこないだの餅巾着のモチなんじゃないの?


そういう事だろ♫じゃん。

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