これからも、良い年であるように。
さて、さてさてさて!
今日はグランディ王国と旧ギカント王国の合併と復興と平和祈念のコンサートだ。
ネモさんのショッピングセンターの隣にドーム状の建物がある。
ギガントの技師たちと力自慢のUMAたちが建てたらしい。音響効果抜群。
客席の椅子もゆったりしていて、着席するときに、
「ちょっとごめんなさい。」
と、隣りの人に立って貰わなくても、すいっ!と中に入れる贅沢な作りである。休憩時間に気兼ねなくトイレに行って戻れるというものだ。
おお、肘掛けも両方に完備だよ。
これで、
「ええっと?肘掛けとドリンクホルダーは番号が右の方を使っていいんだっけ?
うーん、真ん中や端っこの席を選ぶべきだったか!」
と、映画館の席あるあるをしなくて良いのである。
今日はめでたく、こけらおとしなのだ。
さて。幕があがっていきなりの高音のハイトーンボイス。
マナカ国の王女。歌うまの歌姫、アキ様である。
アアシュラ様のご次女だ。
おお、なんと素晴らしい。まず、グランディ王国の国家、そしてマナカ国の国家を歌い上げられた。
アアシュラ様が満面の笑みでロイヤルボックスからひときわ大きな拍手を送られる。
隣におられるのはアラン様だ。王の名代とのことだ。
私は左手の最前列に座っている。隣りはエリーフラワー様御一家である。ランド兄とメアリアンさんは私の後ろだ。多分、見えないところにキューちゃんがいるようだよ。
もう一つのロイヤルボックスにはネモさんご夫婦が
他国の貴人たちのお相手をなさっている。
お疲れ様でございます。
さて、次は王妃様がご披露されるブルーウォーター公国の国家である。
「ブルー・ウォーターー、蒼い地平線。この国の空と水は美しい、、命あるすべてのーもーのーよー」
ぐげげ。これは。曲は違うけど、歌詞は某アニメ映画のテーマソングの替え歌っぽいぞ。
いやいや、ウインクしたって誤魔化されませんよ。公募って言いませんでしたっけ。
竹宮○子さん、お好きですものね。
おお、アキ様もご一緒にハモってらっしゃる。
うん、この土地が美しいのと、愛が必要なのも良くわかりました。
さて、お次はクラシカルな調べに乗ってクノイチのお嬢さんたちが現れた。
そして美しくもセクシーな群舞をするなか、
メイクを決めて高速で回転して現れてきたのがアンちゃんだ。おお、いつもより二割増しで良い男になっているではないか。
登場と同時に、アラン様が拍手をして下さっている。あざっす。
「え、誰?」
「まさか?アンディ殿?」
ピッタリとした黒い服にはラメが入っている
服越しでも盛り上がった筋肉がうかがえる。
目尻に赤い紅がさされてセクシーだ。
うおお。すごい身体能力だ。音楽に合わせて飛ぶ、はねる、回転する。
スピンしながら沈み、また身体を起こす。
半眼になっての流し目。
あら、すごい色気だわ。やれば出来るじゃないの。
ううん、このポーズはイナバウワー?背中を反ってる。大丈夫?開脚した足がぺたん、と床につく。
すごい。それをすすすす、と、もどしていく。
最後に24回転をしてフィニッシュ!
私たちの前にきてお辞儀した。盛大に拍手を送る。
最後に、アラン様のところへ行って深々とお辞儀をして、投げキッスを投げて去っていった。
キャー♡
黄色い悲鳴があがる。
アラン様は苦笑された。
まったく、オメーそんな事すっから、ウワサ消えねえんだぞ。
(コ○ンくんの口調で。)
それからは天使の歌声だ。
声がわり前の男の子たちが美声を披露する。
ああ、心が洗われるよ。
おお?これは野ばらじゃないか。わらべはみーたーり。
また王妃様が教えたんだな。いいね!
うむ、次は魔王かあ!?
♬おとーさん、おとーさん!いまーここーに!
あ、中学生の時、授業で聞いたよ。
すごいインパクトだったよ。
♩かわいーぼうやーおいーでよー、おーもーしろーい遊びをしよう〜♪
どんな遊び?死亡遊戯?
ーー中略、息、絶えた♬
何故。それを選んだ。
ミネルヴァちゃんがひきつってるじゃないか。
「こ、怖いよう。」
そうだよね。
最後。割れんばかりの拍手の中現れたのは、
リード様とヴィヴィアンナ様だ。
こんなにライトが似合うひとたちがいるであろうか。
ヴィヴィアンナ様はまるで巫女のような真っ白な貫頭衣である。白いタイツの下に白いバレーシューズ。
リード様は、いにしえの王の衣装だ。
ローマ人のトーガだよね?あれ。王妃さまのお好みかな。
頭にはサークレット。あら?砂漠の民のもの?
リサイクル?
そしてゆっくりと中央に立ち歌い始められた。
隣りでヴィヴィアンナさまが踊る。
しなやかにしっとりと軽やかに。
美しい白鳥のようです。ライトに照らされた白い服には青い陰影ができている。
リード様の声は朗々と響きわたる。
歌われるのは名曲、
メモリーだ。
マイク無しで会場内(約2600人くらいだろうか。宝○大劇場より大きく、NH○ホールより小さい。)の隅々まで行き渡っているのだ。
張りのある美声、豊かな声量。
凄い。これほどとは。
身振り手振りで世界観を表現してらっしゃる。
絶望と希望と。再生と。
彼自身が発光しているようかのようだ。
後ろからメアリアンさんがポツリと言うのが聞こえる。
「お二人から蒼き清浄なオーラを感じますわ。」
そして、サビだ。
歌詞は王妃様の意訳だと聞く。
「〜誰か!わ、た、し、を、抱きしめてくれ!
…折れるほどに!」
涙を流しながらの絶叫のような、歌声だ。
振り乱される金髪。ライトに煌めく。
飛び散りながら光っているのは、汗か涙か。
ああ!なんと美しいことか。
総毛立った。胸が揺さぶられる。
知らないうちにこちらも涙を流していた。
この広い会場の全ての人が釘づけだ。
その輝きに。オーラに。
その感情のゆらめきに。
耳を打つ歌声。身体を震わせる声量。
共鳴させられているのは身体か、魂か。
最後は寄り添ったヴィヴィアンナ様とダンスをされて、高々と持ち上げられた。
素晴らしいリフトだ。そして二人固く抱き合われた。
ああ、これが鎮魂と再生の象徴なんだな。
圧倒的な美のパワーでねじ伏せれた。
いい、良い物を見せてもらって、ごっつあんです。
スタンディングオペレーション。
ブラボーの声がかかる。
リード様。あなた舞台俳優で生きていけますよ。
というかその才能使わないと勿体ない。
「リーードー!素晴らしかったわーー!」
舞台袖から王妃さまが駆け寄る。
「ははうえー!!」
ぱあっと顔が明るくなる。さっきまでの神秘的なムードが霧散してますよ。
そして抱き合う。
うん、マザコンさえなければねえ。
何度も行われるカーテンコール。
割れるような拍手。
みんなで楽屋に顔を出した。
「リード様素晴らしかったでござる!」
「王妃たま。しゅてき。」
「ヴィヴィアンナさまー、たまりませんでしたわ!」
「アンちゃん、すごかったよ!」
「アキ様、素晴らしい歌声でしたわね!」
「クノイチのみんなも、きれいだったよ。ネコカフェの仕事の後、練習大変だったろ?」
(少年達は出番が終わったらすぐ帰ったよ。遅くなるといけないからね。紅白○合戦のエンディングにも子供の歌手はいないでしょ。)
そこへ、アラン様もいらっしゃったよ。
「母上、リード、ヴィヴィアンナさん!素晴らしかった!」
抱き合うロイヤルファミリー。
「他の出演者のみなさんも素敵だった。アキさま。特別に来ていただいて、ありがとう。
ーーアンデイ!おまえがあんなに踊れるとはなあ!」
「アラン様!ワタシにもハグをお願いしますワ。」
「…それは断る。」
あら、アラン様が真顔になっちゃった。
「いやあん。イケズーぅ。」
アンちゃん、おふざけはやめて。
「いけずうーっ。」
ホラ。ミネルヴァちゃんがマネしてるよ。
とにもかくにも。
年末の煤払いのようなコンサートは終わった。
来年はもっと平和な年でありますように。
「……やっぱり第九が足りなかったかしら。」
王妃さまがポツリといった。
アッハイ。よーろこーびーのーうた♪ですね。