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商人と商談。

師走の声を聞く頃。

私も胃がムカムカしたり、ニオイがつらかったりしてたのがやっと落ち着いてきた。

「レイカちゃん、大丈夫?」

「うん。アンちゃんこそ、ダンスの練習どう?」

アンちゃんは見事なダンスを年末の鎮魂と再生のコンサートで公開する事になっている。


まず、マナカ国の王女様の歌で幕開け。

次に王妃様が公募して決まった、ブルーウォーター公国の歌をお歌いになる。

お二人ともアカペラだ。やる気満々なのである。

それから、アンちゃんとクノイチたちのダンス。

ギガント国から来た、楽団のクラシカルな演奏に乗せて。

その次の演目は声変わり前のウイーン合唱団、ではなく、グランディ王国と元ギガント国の選ばぬかれた天使の歌声の合唱団なんである。

ラストはリード様のメモリーに乗せて、ヴィヴィアンナ様がソロダンス。

――見たい。


マナカ国のアアシュラ様は国賓でロイヤルボックスに。

後はアラン様、ミドリナ様、そして、ネモさん。

エラ様は妊婦の為、王都からの移動が難しいので欠席だ。

エリーフラワー様は一月に産まれるんだけど、私とキューちゃんとエドワード様がついていて、お産の兆候があればお外に連れ出すことになっている。



「うーん。多分ね、ソロで回転したり、飛んだりすることになるみたいだよ。」

ん?

「クノイチ達がオレに怯えててさ。上手く噛み合わないんだよ。やーね、取って食ったりしないワよ。」


うん。なるほど、伝説の人だもんね。下っぱの子は怖いのか。

「でもそんなに要人が来ると警備が大変だよね?」

「一応、入り口で動物たちが見てくれるけどね。

そうそう!

ビッグなお猫様が懐いてくれるようになったのよう!

ウフフ。身体も軽いし!クルクル回っちゃうわ!!」

すごいっ!!

アンちゃんそれ何回転?

あら?空中で回ってるわ?なんとかアクセルとか?

サルコウとかいうやつ?くわしくないけど。


やっぱり向こうの世界だったら天下取れたんじゃない?

おや、ブレイクダンスも始めたぞ。

リビングでは狭いんでは。家具に頭ぶつけないでね。

ん?ということはうちの娘たちも、生まれたら身体能力高いのかもしれないなあ。


「アンディさん。ご遊戯中、申し訳ないけどお客様ですよ。」

「あら、ランちゃん。やっと来たか。レイカちゃんもおいで。」

「?」


いつもお客様と会うのはネコカフェだが、今回は隣接してる忍の寮の方へ行った。

「せっかく持って来てもらったのに、猫ちゃんが飛びついたら困るものね。」


そこには髭面の恰幅の良いおじさんが待っていた。

タレ目で、あつ森のたぬきさんを思い出すなあ。

コロナの頃よくやっていたよ、

あつ森、…、今、おっそろしい虫が発生してるんだろうな。うええ。

「ヤァ、アンディ様。いつもありがとうございます。最高級品の絹織物をお待ちしましたよ。」

「おや、大商人自らお出ましとはね。」

「ダイシ商会のダンです。奥様、お見知りおきを。」

「まあ、お噂はかねがね聞いておりますわ。」


あれか。デパートの外商さんがいきなりウチに現れたようなものか。

「早速見せて頂戴な。」


「まあ、見事な正絹!」


「おや、お分かりになりますか。」

テーブルいっぱいに広げられた商品たち。

汚さないようにしなくっちゃ。

「あら、これは産着、祝着じゃないの。こちらもその文化があるのね。」

お宮参りに使った産着を七五三用の着物に仕立て直すのよ、懐かしいわ。ん?という事は着物を着る民族?国があるわけ?

「え、そうなんですか?これは我が家に代々伝わる物でして。使い方がわからなかったんですよ!

面白い形なんでサンプル見本として時々仕立ててるんですけどね。」

「あ、あ。そうなの。御先祖様か周りに前世日本人の人がいたのね。

――そうねえ。ここには神社がないものね。」


立派な御神体ならいるけど。コーーン。


「王妃様がデザインした忍の装束に通じるものがあるわね。」とアンちゃん。

「王妃様なら着付けが出来るかもね!」

阿部マルガリータ先生は着道楽と聞いたことがある。

「ほほう!今度王妃さまにお話を待って行きますかな!」

商人の目が光った。

「その時はさっきの産着を大人用のサイズに仕立てた物をサンプルにしたら良いと思うわ。

あら、これは総絞りじゃないの!」

「本当にお詳しい!」

「私たちの世代は成人式の振袖はレンタルじゃなくて買ったからね。着物をしたてるときに見にいったの。」

昭和だとどこの家にも、呉服屋の伝手があったものだ。


「ベビードレスを作りたいんだ、どれが良いかな。」

「アンディ様。こちらなどは?いつものご愛顧のお礼として、プレゼントいたしますよ。

後は奥様にドレスを仕立てられては?」


「それは悪いわよ。」

「いいえ。カレーヌ様やローリア様、エリーフラワー様への贈り物をいつも御用命くださって。

こちらも高貴な方と縁が出来て嬉しゅうございますよ。」

「―――あら、これは。」


真っ白な光沢のある絹。そう、まるで。


「あ、それはウェディングドレス用なんです。

紛れこんでいましたか。

――長い付き合いの貴族のお嬢様の御結婚の為に最高級品を揃えたものです。

だけどね、雲行きが怪しくなりましてな。

本当なら来年のお式に合わせて採寸やデザインを決めるのですが、お父上から待ったがかかりましてな。」


うん、高位貴族の結婚式には時間がかかるのだ。

「夏までは仲が良かったんでございますよ。私もいいムコが決まって安心ですな、ダンナ。

なーんて言ってたんですけどね。ナニがあったんだか。」

ふん、とアンちゃんが鼻を鳴らした。


「ナニって、そんなの決まってるじゃない。

入婿に来るはずの男がよその女とナニしたんでしょ。」


あらら。そりゃあメンツ潰されて大変だ。


「どうせ、婿にしようとして、子飼いの男を育てていたんでしょ。溺愛する娘の為にね。

飼い犬に手を噛まれたってことね。」

「流石ですな!伝説の忍びの名前は伊達ではありませんな!」

「ふん。世界をまたにかけるアンタだもの。どこの国かは、詮索しないであげるわ。

で、上物のシルクの行き先の扱いに困ったアンタは、このアンディに売りつけにきたってわけね。ふふん。」

「!!いやはや感服ですな!脱帽いたしました!」


「仕方ないワネ、乗ってあげる。半額でどう?

その代わりレイカちゃんのドレス用の絹は定価で買うわね、レイカちゃん、この花柄なんてどう?

ドレスを作りましょうよ!」


「あら、いいわね、裾の方に花柄がある。」


「半額、、仕方ありませんな。」

「どうせ、あちらからも手付けをもらってるんでしょ。」


ん?このウエディングドレス仕様の絹、買ってどうするの?


「ランちゃーん、いらっしゃい。」


入り口で警備してたランド兄、びくりとする。

「アンディさん?俺女装はキツいっす。」


「おバカ!メアリアンさんによ。まだ式をあげてないじゃないのっ。ふふふ。

アンディ義弟が、メアリアン義姉にプレゼントするワね。」


確かに。披露宴をかねた簡単なお食事会はした、ウチの家族もきた。

でも式そのものはあげてない。

アンちゃんって割とこだわるタイプだったのね。


目を丸くするランド兄。


「え、そんな、悪いよう!」

「おお!!こちらはレイカ様のお兄様であらせられたか!

と、いうことは伝説の占い師、メアリアン様のご夫君か!!では、ヴェールをサービスさせていただきますぞ!これからも良しなに。」


伝説が多いなあ。


「良かったじゃない、兄さん。メアリアナさん、スタイルいいからこのシルクにも負けないわよ。」


――元、王女だしね。


「でもでもでも、こんな高そうなもの!?ひいっ!!

――うっ、うーん。」

値札を見て一瞬ふうっと気絶するランド兄。


アンちゃんがそれを抱きかかえて、

「ハイハイ。大丈夫?

ではね、お代はぜんぶでいくら?今現金一括で払うから、端数はお勉強なさいよ!」

「流石アンディ様。」


まぁ。どこから出したの、このカバン。

城南電気の宮○社長さんかい。


「どうせ、アンタのことだもの。メアリアンさんが式をあげてないってわかってたんでしょ。」


「さあて?どうですかな?」


まったくタヌキだ。

スピンオフを読んで下さった方へ。


ドレスのキャンセルは卒業式の結構前だったと言うことですね。水面下ではとっくに見限られていたと。

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― 新着の感想 ―
確かに呉服屋さんにはつてが在りましたね。母が着物好きで。 母の仕事の付き合い上、私の振袖は別の呉服屋さんでしたが、結婚する時には無地に紋付に喪服に夫のためのアンサンブル…嬉々として仕立てておりました。…
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