こんにちは。ありがとう。また、会いましょう。
グランディ王国は混乱していたという。
以降は、その後アンちゃんやリード様や、ネモさんからの伝聞である。
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砂漠の国の二人の王子を、追放された第七王子が切り捨てた。
そしてこちらへ、逃げ込んだ?
それから先ほどの地震は関係あるのか?
「それって。シンディでしょうか、母上?」
「そうね、アラン。厄介かしら。」
王の謁見室で協議する王族三人。
そこへ。蒼い光に包まれてキューちゃんが現れた。
「おや、リードとアンディではないか?
それにネモ公と白狐殿。」
王の御前にいつもより二倍の大きさで現れたキューちゃん。
「ご報告申し上げます。」
膝を折る三人。
そこへ。
「先ほど、砂漠の国が消滅したと!光に焼かれたとの連絡が入っております!!」
走ってくる斥候。
アクビをして、キュ〜と鳴くキューちゃん。
「うん、そうか?それは仕方ないなあ!」
にこやかなネモさん。
「ネモよ、キューちゃんはなんと?」
「はい、王妃様。久しぶりに本気出しちゃった、テヘ♡だそうですよ。」
「それは仕方ないなあ!」
リード様もにこやかだ。
「白き神よ。凄まじいのだな、、。
ネモ公やリードがお気に入りか?宜しく頼む。」
王様が頭を抱えて冷や汗をかいている。
「王よ。白狐はこのようにも、申しております。
今は砂漠の国には新しい命が芽吹いて、草花が生えていると。」
「…ヤダ。焼畑農業?」
王妃様が口を扇で覆った。
「それに、ちゃんと15歳以下の子供と妊婦は残しておいたよ。極悪非道の悪者みたいな言い方は心外だと言ってます。
そろそろ果物も実り、実る程に頭を垂れる稲穂かな、だとか。」
とのネモさんの言葉に、
「なんとっ!アフターケアも素晴らしいなっ!
キューちゃんっ!」
リード様はキューちゃんをワシワシとなでて労った。
キュー。
「凄いなあ、リード。そんなに激しく触れてもお怒りにならないのか?」
青ざめたアラン様に、
「兄上。私よりエドワードですよ。キューちゃんが気やすいのは。なぁキューちゃん。
私は、昔センザンコウを助けたからです。」
「センザンコウ?」
その件について説明が終わったところで、
「皆様。ご報告申し上げます。
シンディは完全に消滅致しました。
白狐様の手にかかったのです。ーーまあ本当は口ですが。」
アンちゃんが報告した。
「本当なの?アンディ。」
「ええ、王妃様。魂のカケラも残さずに。」
「ふうん。アンディ、肩の荷が降りたな。」
「ええ、アラン様。」
「つまりこういう事だな。砂漠の王子達が同士討ちをした。
生き残った王子がウチの国を通りブルーウォーター公国にまで押し入ったが、
守り神様に返り討ちにあった。これで相違ないな?」
「はい。相違ありません。」
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伝聞ここまで。
お話をしてくれたアンちゃんは、ソファで疲れて寝落ちしている。
「もう、食べられないワ。ウフフ。」
なんか幸せな夢を見ているようだ。
「まあ、コレでアンディも肩の荷が降りただろ。」
リード様もアラン様と同じ事を言うんだな。
まあ、シンディがアンちゃんの悩みのタネだったのは違いないからね。
リード様夫婦とネモさんもそれぞれ帰っていった。
「お母さん、一応カタがついたからうちに帰ってもいいよ。体調悪くなったら呼ぶし。」
「そうねえ。」
そこへ、オー・ギンさんが入ってきた。
「ええ、私たちもいますから。」
「わかったわ。着替えとかもあまり持ってきてないから、とりあえず明日帰るわね。」
夕飯までは母の手作りだった。
「みんな手伝ってくださったのよ。」
うわあ。懐かしい。豆とキャベツとベーコンのスープだ。
とてもサラサラしている。実だくさんの真逆を行く。
あとは黒パンだ。ライ麦パンだな。
あまり食べ続けると、ハイジのように白パンが欲しくなるというシロモノである。
それに、栗や銀杏を炒ったもの。
母はあえて懐かしい清貧料理を出したんだな。
「以前はこんな感じだったよ。」
「麺や米が流通してなかったものな。」
「俺んち、貧しくてさ、いつも野菜スープ。
ベーコンも入ってなかった。ううう、元気かな。
母ちゃん。」
むせびなく忍びたち。
アラ、アンちゃんも涙目だ。
「忍びになる前は。黒パンばかりだった。
ーー懐かしいな。今改めてモルドール家と本当の家族になれた気がするわ…。」
「ウチの近くで栗と銀杏が実ってたから。栗は拾って、銀杏は売ってるのを買って持ってきてたの。
なんか懐かしくなって。たまにはいいでしょう。」
「そうだねえ。母さん。うちは貴族といってもそんなに裕福ではなかったからね。カニ缶を売り出すまではね。」
「そう。妊婦さんには栄養が必要だから。今日だけね。」
「私、お料理覚えますわ。ランドさんの実家のお味。」
思いつめた顔のメアリアンさん。
いや、あえて清貧料理を覚えなくても。
彼女とエリーフラワー様御一家は生粋の貴族だから
お口に合わないかもしれないな。
「ほほほ。まあ優しくて素朴な味でいいですわ。」
「うむ、黒パンは従軍の時良く食べました。
おっと、ミネルヴァ、子供はあまり銀杏を食べすぎてはいけないでごわす。栗になさい。」
あっ、そうだった。
「くり、おいちい。」
それなりに大丈夫の様だった。
「次からはレイカのレシピで作りますからね。」
母は次の朝帰って行ったが、
「レイカ。よーく考えてね、お金は大事なの。」
えっ。あれは節約だったのか。倹約のススメ?
なんかア○ラックのCMみたいなことを言って去っていく母。
駅までうちら夫婦と、ランド兄夫婦とで見送りに行った。去って行く陸蒸気を見ながらベンチに座っていた。
「お義母さん。お金に困っているのかしら。」
とアンちゃん。
「あー、そういえば砂漠の国が滅びて、カニ缶の代金の回収が出来なかったって。」
あ!まさか!
「お母さんに食材を買うお金を渡してない!?
昨日とかはエリーフラワー様一家とあとランド兄さん夫妻とヴィヴィアンナ様だけだったから、
買い置きで、なんとかなったけど!
今日は大人数だったのに!!
え、お母さんのお金を使わせたの??」
どうしよう。気がつかなかった!現金なんか沢山持って来てないだろうに。
アンちゃんも青くなった。
「も、申し訳ないわ。お詫びに絹織物を送るわ!」
またお得意の絹織物かよ。
「いや、送るのは現金にしといて!!」
「俺が代金を届けるよ!アンディさんからじゃ受け取らないよ。」
「ランちゃん、お願い!
あー、お世話になったからお礼を包もうと思ってたのに。寝落ちして忘れるなんて!
しくったわ!
ごめん、少し多めに包むからお渡しして!」
「お義母さんも言ってくれれば。」
いえ、メアリアンさん、それは言えないよ。
私だって下の子の嫁ぎ先にいってご飯作った事もある。お産のときね。
差し入れはしても、請求はできないものよ。
その時。
キュー。
キューちゃんが姿を現して、そのまま走りさった。
「え?まさかお母さんを送りに?」
「あ!そういえば交通費もお渡ししてないワ!どうしよう。」
アンちゃんは頭を抱えた。
「とりあえずさ、次の陸蒸気で追いかけるよ!」
ランド兄さんは立ち上がった。
夕方。ランド兄は帰ってきた。
「ラ、ランちゃん。お義母様怒ってなかったカシラ?」
「うん、大丈夫だよ。俺が家についたらキューちゃんがいてね、
隣の、元パティさんちとの間の山ね。
ミノタウロスがいたところ。そこの一点を、キューちゃんが指し示すんだよ。
それで俺らがツルハシで削ったらさ、出たの。」
「え?ニューなUMAが?」
「違うってえ!ルビーが!!」
「はあっ?!」
「初めね?ガーネットかなと思ったんだけど、ブラックライトを当てると蛍光してさ!」
※ルビーはブラックライトを当てると蛍光します。
役に立つ豆知識です。覚えておきましょう。
ピジョンブラッドな原石がゴロゴロ出たという。
「つまり、キューちゃんがここ堀れワンワン!とやった訳ね!」
「みんな大喜びでね。すごいよね。キューちゃん。
ーーーウチが金欠と思って助けてくれたんだね。
うううっ。いい奴。」
本当に。
その日はキューちゃんにチーズがたっぷり入ったシチューと、ハチミツ入りのミルクをあげた。
ありがとう。