変わろうとする魂と、淀んでいく魂。人間の端くれに生まれてきたよ、ときたもんだ。
リード様の話は続く。
セティさんは肩を落として森の警備に戻ったそうだ。どんまい。
大丈夫、マイフレンド。だよ。
「で、ネモさんのところへ行って説明をした。
もう遅いから泊めてもらった。シンディはヘビで拘束されたよ。」
「連絡しなくてごめんでごわす。ご飯要らないと言っとかなきゃいけなかったかな。」
そんな。エドワード様。飲み会の連絡を忘れて怒られるサラリーマンのお父さんじゃないんだから。
あったねえ。昔。カエルコール。
「で、今朝。それからサーカスに行ったんだよ。
結局、シンディに情報を流していたというか、連絡を取っていたのはレミって娘だね。彼女はネモ公主程ではないけど鳥を扱えたんだ。
それに、手紙をつけて飛ばしてたわけ。」
「そう言えばピーターさんがあの子は、馬の扱いがウマいと。」
「あら、レイカちゃん、洒落?くくく。」
もう。いちいち揚げ足とらないでよ、アンちゃん。
でも、元気になってきてよかったわ。
「シンディ殿には彼女が鳥を使える、そんな知識はなかったそうで、レミさんはいきなり指示が来てびっくりしたと。
相手は慕っていたガルダインなのか?
それとも、そういう仲になったシンディなのか?と混乱しつつも嬉しかったそうでごわす。
ーーー何しろ、シンディ殿は離婚しているのは周知の事実でごわすからな。
戻って来たら結婚しよう、と手紙のやり取りの中にあったとか。」
うわあ。
「ネモさんも怒っていたよ。シンディが起こした騒ぎに。世間的には、砂漠の第七王子がいきなり入り込んで来たんだものね。
それで、情報のやりとりまで勝手にやっていた。」
リード様はコーヒーを飲みほした。
ヴィヴィアンナ様が継ぎ足す。
「ありがとう、ヴィー。キューちゃんとネモさんの怒りの波動が感じられて。流石の私も怖かったよ、
滅せられたらどうしようとね。」
リード様を攻撃することはないだろうけど、それだけ不穏な空気だったのか。
「もうね、アレが何だったのか?わからん。
シンディとガルダインの記憶が混ざりあって溶け合っていたんだ。
気色わリィったら!流れるようにハニトラをかますところがいやらしいぜっ!けっ!」
アンちゃんは心底嫌そうだった。
「だけどねえ。」
リード様が、はっ、とため息をついてから続けた。
「アンディを見る時には、シンディに戻るんだよ。
なんだろうね、あれ。執着?愛情?」
「おやめください!リードさまっ!」
アンちゃんは心底嫌そうだった。(2回目)
「それでアイツが言うにはね。砂漠の王子を二人とも切り殺してきたと。
もう、任務終了でいいでしょう!帰ってきていいでしょう!?と?
さあ、アンディ。うちの子とお前の子と仲良く遊ばせようなあ。立派な忍びにしようじゃないか?と、ほざき始めたんだよ。」
まいったよ。とリード様はつぶやいた。
「あれは、緩やかな粛清だったのに。
変に優秀だったところが、あだとなったね。
まさか王子を二人とも葬るとは。
国際問題まっしぐらじゃないか。」
「で。ワタシが、辛抱たまらずにアイツを切ろうとしたらさ。キューちゃんが。」
ぱくり。
あっという間にシンディを飲み込んだと言う。
「そしてな、駆け寄ってきたレミ嬢もな。」
ぱくり。
「飲み込まれたでごわす。」
それから?
「キューちゃんは走り去ったんだよ。」
アンちゃんがポツリと言って、
「その後轟音と、地響きが聞こえた。」
リード様が、補足した。
ネモさんが、コレで終わりましたね。
キューちゃんの怒りをかった、そこでもう彼の未来はなかったのです。
と静かに言ったそうだ。
その後キューちゃんは帰ってきて、ネモさんは鳥達の報告を受けたそうだ。
「砂漠の国へキューちゃんは行って、蒼い焔をぶちまけて、打ち上げたそうです。
一度目の焔で破壊を。次の焔で浄化と再生を。
再生に使われたのは、人間のツガイの生命だそうで。
彼らは魂ごと消滅したと。花火のあとの蒼い光が空から雨のように降り注ぎ、その光が落ちたところから草花が芽吹いたとか。」
ええ、、、なんと言うことかしら。
やっぱりキューちゃんは荒ぶる神だわ。
彼の価値観で行動している。
ーー消滅させられたツガイって。シンディとレミさんだよね。
リード様はコーヒーを飲み終わると、
「さて、兄上に報告しなくてはな。一緒に行くネモさんを待たせてはいかん。」
立ち上がった。
「私も、行きますよ。エドワード、みんなを頼むよ。」
アンちゃんも立ち上がる。
キュー。
「ん?キューちゃん、お疲れ様。ありがとう。助かったでござるよ。
うん?お二人をネモさんところへ送って、そのまま
アラン様のところへ連れて行ってくれると。
ありがたいなあ。」
「きゅーたん、いいこ、いいこ。」
キューーウウー。
ミネルヴァちゃんの撫で撫でに目を細めるキューちゃん。
アンちゃんとリード様を乗せて消えていった。
メアリアンさんは細かく震えてる。
「も、物すごいわ。恐ろしい。何という存在!」
「ええ、やはり神に近いものですね。」
冷や汗をかいているのは、ヤー・シチさん達だ。
他の忍びたちも固まっている。
「キューちゃんはすごかったなあ!」
「私もその勇姿が見たかったわ!」
「キューたん、しゅごいっ!」
「あの小さな犬が立派になって!アラ、お狐様だったわね!」
にこにこにこ。
エドワード様御一家と我が母である。
ま、荒ぶる神も、この人達がいれば大丈夫か!
その後、ホットラインでアンちゃんから、
今晩は王宮に泊まります。ご飯いりません。
早めに寝て下さいね。
と連絡がきた。
ハイハイ。カエラナイコールね。
タイトルネタは、岸田敏志さんの君の朝だよ です。