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母と話せば。

ううっ、気分が悪い。

「あ、レイカ大丈夫??」

「お母さん、ちょっと気分が。」

ストレスなのか、つわりなのか胃液があがってきた。

あの白鬼め。妊婦にストレスを与えるなんて。

ネモさんのヘビに噛まれてしまえ。ううええっ。

母に背中を撫でられて、自室ヘゴー。それから洗面所へゴー。

猫草を食べてえっ、えっとするネコちゃんもたいへんだな。毛玉たまるんだものね。


「なんかよく分からないけど、アンディさんもエリーフラワーさんも私達にとっては雲の上の人でしょ。アンタも大変ねえ。」

「うん、まあね。」

とりあえず横になる。


「お母さん、いつまでいられるの?私もエリーフラワー様も妊婦だしさ。なかなかここのエリアまで入ってこれる人はいないのよ。

アンちゃんが許可出さないから。身内以外は基本ダメ。だから、いてくれるのは正直心強いよ。」

「そおねえ。アンディ様がいきなり一昨日ウチに来てね?

すみません、ちょっとだけでも来てもらえませんかっ!って。平伏する勢いだったのよ。

誰も逆らえないでしょ。あの方には。」

何という心配性か。

「孫のミルドルなんかね、伝説の黒魔様に傅かれるおばあちゃんすっげー!って。」

ーーおい。おい、甥っ子よ。


「うーん、とりあえずアンちゃんが落ち着くまでいて?というか、逆に白鬼がいなくなるまで出ないでね??」


「わかったわ。なんかごちゃごちゃしてるのね?

白鬼さんは先日ウチにも現れたでしょ。その時からアンディさんに執着してるとは思ったわ。」

眉をひそめる母。


「多分ね?メアリアンさんもここにいた方がいいと思うのよ。白鬼に取り憑いてるガルダインって男が、彼女に似てる?人に執着してるからね。」

さて、どこまで話したものか。

知らないほうが、安全か。知っている方が守れるか。

「ええと?結局は白鬼さんとアンディさんは兄弟なのね?」


あーそこからか。母が振ってきたから話をしようか。


「そうなのよ。父親が違うの。アンちゃんのお母さん、レイデイさんがアンちゃんのお父さんと結婚するまえに生まれたのがシンディこと白鬼でね。」

と、アンちゃんの家族と生い立ちの話しをするのだった。


「なるほどお。それでカレーヌ様が気易く寄って来られたのねえ?何故かしらと思ってたのよ。」

え、気になるのはそこですか?母よ。


「メアリアンさんがギガントの貴族の娘でエラ様の遠い親戚って言うのは?本当?」


おや、そんな話も出まわってるの?

「だから誰でも見て貰えるわけじゃないんだーとご近所の方が言ってたわ。」

「それは本当。隠してたけど、公言しないと誘拐しようとする輩が出たからね。ちなみにそれがガルダイン。

それにね、とても疲れるらしいから。ランド兄がついてないと危ないの。」


ふうん、と母は遠い目をした。


「…お母さん、メアリアンさんはね、その人に取り憑いたり背後で守ったりしてる、ほとんどの場合が親族だけど、そういう人が見える。その言葉を聞くの。

誰か話をしたい人がいたの?

でも、その人がお母さんの側にいないとダメなのよ。未練が無ければすぐ上へ昇ってるし。」


そうね。もう未練なんてない方が良いものね。

と母がつぶやく。


ーーそこで、母方の親族はほとんど誰も残っていないことに気がつくのだった。

母は自分の父母に会いたいのだろうか。


「お母さん!駄目元でメアリアンさんに見てもらおうよ!亡くなった親族に会いたい気持ちはワタシにもわかるから!」


「え?レイカ?貴女の親兄弟はみんな存命よね?

ええ、ちょっと何で泣いてるの?」


「前世の話だよっっっ。」

うわあん。想い出してしまった。


私の父と母は二人とも事故で亡くなった。

私が猫の目食堂へ嫁いで長女を産んで一年たった頃だ。まだ二十代だった。

姑との仲はそんなに悪くなかった。娘が三人もいたから。みんなで子育てや家事や家業にと精一杯だったからだ。


しかし、いっぺんに親を亡くした喪失感は時々やってきた。


テレビで親子ものを見ると泣けてしかたなかった。

異人○○との夏なんて、もう、ダメ。

そのうち動物の親子ものもダメになった、

マリと子犬の○○で号泣した。


ううう。涙そう○うなんか、歌詞を思い浮かべるだけで泣けて、だからセバスチャンを救えたのだが。


そこで思いあたった。私自身は事故で急死したはずだ。転生ものではベタな展開だ。

近づく車のライト。衝撃音を覚えている。

(王妃様は病死だ。有名人だったから報道された。

ファンだったから悲しかった事を覚えている。)


ーーうちの娘たちや夫を泣かせたのか。

今までこの世界で自分の記憶に折り合いをつけるのが精一杯だった。

残した家族のことは考えないようにした。

彼等にはもう二度と会えないのだから。

転生してくれば別だがそんなことはなくてよい。

長生きして欲しい。


「ちょっと、泣かないでよ、レイカ。

ーーん?泣きたいときは泣いたほうがいいのかしら。

そうね、亡くなった親を思う気持ちは一緒よね?

あらら?私が言うのも変だわね?」


ああ、本当。この母も兄も。全く心が真っ直ぐで綺麗な人達だわ。


コンコン。

「レイカさん?義母さん?入りますよ??

エリーフラワー様が私も外に出ないほうがいいって。」

やっぱりね。メアリアンさんだ。

「なんで泣いてるんですか?あー、額にホクロがあるおばさまが出たり入ったりしてますよ、えい。」


しゅるるるー。

相変わらずのコードリールかあ。

なんか落ち着いた。


「メアリアンさん。ウチの母に親族が付いてたりする?」

「いいえ?誰もいませんわ。皆さん成仏なさってますが?」


「そう、そうね、その方がいいわね。」


母の声は寂しげだった。

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