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思い出はいつも綺麗だけど。それだけでは。

レストランの方へ行くとエリーフラワー様御一家がいた。

ゆっくりとくつろいでらっしゃる。

「まああ。レイカさんのお母さま!ご無沙汰しておりますわ!」

「結婚式ぶりでござるな!」

「こにちわ。」


「こちらこそ愚息と愚娘がお世話になっておりますわ。まああ、可愛いお嬢様。」

「ミネルヴァでしゅ。にたいでしゅ、よろしくおねがいしましゅ。」

「そおお。2歳なの。お利口さんねえ!」

母が目尻を下げている。

「ん?何かしら?ここ暖かいわね?日が当たってるのかしら。」


しゅばばばばはっ!


その言葉で姿を現すキューちゃん。

「わあ、ビックリしたわあ!ここにあなたがいたから暖かかったのね!キレイな子!」


キュー。

キューちゃんが目を細める。

「キューたん!」

ミネルヴァちゃんが抱きつく。

「暖かったのですか!それは良かったでごわす。

流石レイカさんとランドさんの母上でござるな!

何、人によっては冷たく感じたり、熱く感じたりするみたいでござるよ。」


なるほど。キューちゃんのお心しだいか。

「そうなの。お名前はキューちゃんなの?ミネルヴァちゃんと仲良しなのね。

撫でたら怒っちゃう?だめ?」


すごいなあ。我が母ながら。

だいたいの人はキューちゃんを見ると驚いたり、恐れたりするのだが。

九つのしっぽが見えないのか。

普通のワンちゃんと同じ扱いだよ。


キュー。


キューちゃんが頭を下げる。

「あら!いいの?ありがとう!!まああ、フカフカ。」


母がなでる横で、エドワード様もキューちゃんに手を添える。

もし、キューちゃんが機嫌が悪くなったら、なだめてくださるおつもりですね、ありがとうございます。


「おお?なるほど!そうなのか!キューちゃん。

ーーレイカさんのお母さん、小さい頃、白い子犬を助けましたね?」


おや、またそのパターン?


「ええ、ズタボロで尻尾も千切れそうになった子犬をね。」

「それがですな、キューちゃんだったんですと。

実はお狐さまでござる。

ーーー何?そうか。伝説のドラゴンらしいものと空中戦を繰り広げて、空から落下してズダボロになったそうでごわす。その時助けて貰ったそうで。

ほとんど相打ちで、色々ドラゴンから吸われて小さくなってたと。

尻尾は千切れたんじゃなくて元々九本なんですよ、と。」


ええと。まず情報を整理しよう。


以前、ネモさんとこの鳥のなかに小さなドラゴンみたいなのを見たような?

そいつは火山から出てきた、と聞いたような。

キューちゃんは確かに伸び縮み自由である。

母の実家はギガント王国近くだ。こないだの戦で荒野になったんである。


なるほどなあ。何十年か前に伝説の神獣バトルが行われたのか。


「あら、その時の子なの。もう四十年くらい経つわね。

確かうちのニワトリを食べちゃったの。父が怒ったのをかばったのよ。

そうそう、思い出したわ。傷の手当てをしてパンとかあげたの。

あなた、チーズや乳製品好きだったわね?

その後いなくなって心配したのよ。

まあ、立派になって!

あらら、尻尾が九本もあるの?

隠しときなさい!悪い猟師に狙われたらどうするの、ねっ、

一回でマフラーが九本も取れるって目をつけられてちゃうわよ!」


き、キュー。


困るキューちゃん。

「あははははははは!!」

大笑いのエリーフラワー様。

「うむ。拙者と同じ発想でござるよな!」

頷くエドワード様。


「ん、まさか、九尾の狐なの?あなた!

あ!思い出したわ。ランドが怪我をした時に会ったわね?

あの時と大きさと雰囲気も違うからわからなかったわよ!」


確かにキューちゃんは伸び縮み自由だけども。

普通、何かもないところから出てくる動物って警戒したり、同じものって思わないのかしら。


「ウチの実家はもうすっかり代替わりして。知ってる叔父さん一家も亡くなって、従兄弟が手放したから、もう行く事もないけどね。

こないだの戦で荒野になった、と聞いたときは切なかったわ。」

キューちゃんをそっと撫でながら。

「この子を撫でたり、先ほどのヴィヴィアンナ様を見ていたら、幸せな子供時代を思いだしたの。」


「ヴィヴィアンナ様を?」


「ええ、あの方は私が大好きだった絵本のお姫様にも、王子様にも似ているの。

あんな夢のような人がいるのね。

実家の庭にはどこまでもお花畑が広がっていて、姉たちと花を積んだり、花冠を作って遊んだものだったのよ。ええ、自分が絵本のお姫様になった気分で。」


そこでキューちゃんの背中をなでて、

「もうね、あの花畑もないのよ。そこでこの子を拾ったの。」

そう言う母の目は潤んでいた。


キラリ。


キューちゃんの目が輝いた。


ここここーんと遠吠えをする。

やっぱりイヌ科なんだなあ。

「みんな掴まれと言っておるでごわす。」

ええええ?ええ?

いきなり巨大化するキューちゃん。

背中に乗せられた一同。


蒼いひかりに包まれる。

「な、何事?」

「ひええ?」

ドアをあけてアンちゃんが飛び込んできた。

「なんだ?今の光は?

ーーーおい!レイカちゃんたちをどうする気だよっ!!キューちゃんっ!」


アンちゃんの声が聞こえなくなったとたん、光につつまれて、荒野に降り立った。


「ええっ?瞬間移動?どうなってるの?」

「実に興味深いわ!分子レベルで分解されてまた再構築されたとか?」

「キューちゃんすごいなあ。」

「しゅごい。」

「ここ、どこなのー??」


キューちゃんが母を見て頷く。

「え、ここがあの花畑なの?まー、見事に砂だらけになっちゃって。」



すごごごごごー!


キューちゃんが空気を吸って


ばばばばばばばばはー!!


息を吐いた。


砂の中から植物の、芽が出て、ふくらんで、花がさいた。

童歌ならここで、しーぼんだ♬じゃんけんぽん。となるところだが。

もちろんそのまま萎まずに、咲いて風に揺れている。

雪国は春になるといっせいに花が咲くというけどこんな感じかな。


トト○の世界からハ○ルの花畑にきたみたいだ。


ああ、一面の菜の花ばかりではないが一面の花。

はるかなる麦ぶえも聞こえてきそうだよ。


「キューちゃん凄いでござるな!」

「しゅごーーい!」

しゅごいのはいいけど。どういう仕組み??

「砂の中のタネに成長促進のエネルギーを与えたの?確かに咲いてる花はバラバラだわ。」

うーーん、と頭を抱えるエリーフラワー様。


「ありがとう、キューちゃん、ありがとう。」

キューちゃんに抱きつく母。

「ああ、ここの景色がまた見れるなんて!!」


キュー。

母に喜んでもらって嬉しそうなキューちゃん。


「うんうん。早速ここのあたりの、土地を入手しましょう。せっかくの花畑。踏みあらされては困りますからね。」


流石っす。エリーフラワー様。現状を把握して行動してくれる人がいなくてはね。


「そして、この土地をプレゼント致しますわ。

お子様が出来たお祝いですのよ。うふふ。」


「ありがとうございます!!」




また光に包まれて帰宅すると、

「もおおおお、心配したじゃなあいっ!!」

アンちゃんが滂沱の涙を流していた。

ジュディマリですね。タイトルネタ。

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