トパーズの石言葉は友情らしい。
さて。アンちゃんは動物園の仕事の手伝いを始めることになった。
色々と調整中らしい。今日も朝もはよから出かけて行った。
猫カフェはサマンサちゃんがめちゃくちゃ手伝ってくれている。助かる。
レストランは開店休業状態だ。
王妃様が気を使って下さってるのか。
ほとんど王妃様のリクエストのお食事を出す店だったからね。
私も各種乾麺や温泉饅頭の売り揚げの一部がくるから、全然困ってはいない。
ああ、お城勤めで薄給だった頃の私に届けてあげたいよ。
今日は母が様子を見に来てくれた
猫カフェでお茶をする。
「レイカ、おめでとう。双子なんだって?」
「うん、そうなのよ。」
「ほら、アンタの好物こさえてきたから。お食べなさい。」
「あーりーがとー!嬉しい!」
りんかけピーナッツだよ。
「なんですか?これ?」
サマンサちゃんがのぞきこむ。
「なんか見たことあるような。」
「ピーナッツにね、溶かした砂糖を絡めたもの。黒いのは黒砂糖。白いのは白砂糖。サマンサちゃんは遠い親戚だもん。親御さんが作ったことあるかもね。」
千葉のお土産で色んな味のピーナッツ、何種類もかったよ。道の駅の琵琶倶楽部とか海ほたるとかでね。
「レイカはこういうの好きなのよ、ナッツとかもね。」
「アーモンドチョコなんかも好き。乾燥したオレンジにチョコかけたやつとか。」
「つわりはどうなの?」
「今のところはそんなにないわ。時々胃が荒れた感じがするけどね。」
ニャー。クロタが寄ってきた。
「あら、久しぶりね。元気そうじゃないの。
クロタ。おばちゃんのこと覚えてたの?」
身体をすり寄せてくるクロタ。
「こっちの方がエサがいいのよ。」
「そうね。どのネコさんもコロコロとして可愛いこと。」
「お父さんや皆も元気?」
「ええ、元気よ。こないだもお姉ちゃんたちが顔を出したわ。」
2人の姉にも2人ずつ子供がいる。結構なことだ。
兄のところはひとりだ。
「レイカの子は6番目と7番目の孫になるのよねえ。」
そこへ。
「レイカさん、こんにちは。お久しぶりです。
ああ、御母堂様もいらしてたんですか。」
「ヴィヴィアンナ様!!」
ああっ。お久しぶりのヴィヴィアンナ様である。
きゃあっ、お店のスタッフから黄色い声があがる、
ニャー。
おや、猫さんたちからもだ。
「ふふふ。こんにちは。子猫ちゃんたち。」
人類と猫族に同じことばをかけていく。
うるわしき、元第二王子リード様の奥方。
輝くプラチナブロンド。青く澄んだ瞳。
ゆったりとしたパンタロンに、ふんわりとしたブラウス。長い髪を後ろに垂らして覗く首筋。大理石のような白い肌。ヒールを履いた足首は華奢で。
たまらん。ああ、たまらん。
是非、花組ポーズをお願いしたい。ハッ!
「まあ、なんと美しい水晶のようなお方。」
母もすっかり魅力されている。
「あのヴィヴィアンナ様にお目にかかれるなんて。
ーーごくり。」
おや、母よ。生唾ごっくんか。
「レイカさん、ご懐妊おめでとうございます。
お祝いが遅れてしまって。」
眉を下げる麗人。
「いいええええ。そんなっ。ヴィヴィアンナ様が要人のお相手に、ダンスの練習にとお忙しいのはわかっておりますから!」
「ふふ、ありがとうございます。
お祝いに私から、コレを。」
なんと。ヴィヴィアンナ様の目の色をした蒼い宝石がついたペンダントではないか。
「こ、これは?ブルートパーズ!!こんなに大きな!」
「ブルーウォーターにはかないませんけども。
ペンダントにして普段使いにしてくださいな。
ーほら私とお揃いです。ふふ。」
白い胸元を開いて蒼い石がついたペンダントを見せてくださる。
ね、お揃いでしょ?とウィンク。
うおふ。鼻血でそうっす。色気ムンムンっす。
おや、後ろでごふっ。と鼻を抑える音が。
クノイチたちがやられてる。いや、ここ女性だけしかいなくて良かったわー!
ーおや、我が母もハンカチで鼻を押さえている。
「お、お揃いだなんて!いいのですか?」
「ええ、是非つけてくださいね?」
「そんな、もったいないです、大事にしまって家宝にしますからっ!」
ニコリと笑う麗人。
「ふふ、ダメですよ、レイカさん。
さ、後ろを向いて。つけてあげますから。」
「は、はいいいっ♡」
しゃらんんっ。
私の首にペンダントが下がった。
か、感無量っす。
「嗚呼!いえ、おお、おお!ジャンヌの首かざりならぬ、ヴィヴィアンナ様の首かざり!
それで私はあなたに首ったけ!」
「な、何を言ってるのレイカ。気持ちはわかるけど。」
「ふふ、喜んでいただいて嬉しいです。お似合いですよ。」
そこへ。
「うーーん。我々は何を見せられてるんだろうなあ?アンディ。」
「本当に。」
心底呆れた声がした。リード様とアンちゃんだ。
いつからいたのかしら。帰ってきたなら声をかけてよ。
「あら、ネモ様のところで一緒になったのですか?」
「そうなんだよ、ヴィー。」
「リード様。お久しぶりです。」
「え?リード様もいらしたの?」
母は慌てている。
「やあ、レイカさん。ご懐妊おめでとう。
そちらは御母堂か?初めましてだね?モルドール夫人。」
「は、はい。御尊顔を拝して光栄でございます。」
平頭する母。まあ、そうなるよね。
リード様は母に寄って肩に手をおく。
そして顔を覗きこむ。
「頭を揚げてくれたまえ。レイカさんとランドくんにはとても世話になっているんだよ!
おお!良く似ていらっしゃる。貴女のような方に育てられたから、お二人は真っ直ぐにお育ちになったのだな!!」
「こ、光栄でございます。」
美貌のリード様の言葉に顔を赤くする母。
うわあ。またたらし込んでいる。
この方の場合はシンディと違って無自覚だからなあ。
「レイカさんのお母様。私はレイカさんとはとても仲良くしていただいておりますよ。
エリーフラワー様と三人で一週間程、同じく部屋で寝起きしましたからね。」
ヴィヴィアンナ様の発言も続く。
「ああ、ギガントのクーデターの頃ですね。
思い出のレイカコーヒーをどうぞ。」私は紅茶で。
「そんなに親しくして頂いてたなんて。」
母は大感激だ。
「さて、リード様。何を召し上がりますか?」
アンちゃんは続ける。
「ヴィヴィアンナ様はともかく、貴方はお祝いをおっしゃりに来ただけじゃないんでしょ。」
椅子に座って足を組むリード様々。
「うん、コーヒーはヴィーと同じものを。
あとはね、メアリアンさんがいないかな?と思って。」
「多分、今日は隣の事務所ですよ。呼びましょう。
ああ!つまり、そういうことか。
ーーレイカちゃん、奥に行った方がいいかな。
妊婦のキミには余計なストレスをかけたくない。
御義母さん、レイカを頼みます。」
「あっ、ハイ。」
「レイカさん、ごめんね?シンディが消息をたったんだ。
もし、そういうことなら、執着してるアンディのところへ来ないわけがない。ふらふらと彷徨って、ね。」
「それをメアリアンさんに見てもらうのですね。」
ヴィヴィアンナ様の声も硬い。
「けっ。本当に迷惑な野郎だぜ。ここに憑いてるかもしれないってかあ?」
アンちゃんはげんなりした顔で肩をパンパンと払い、吐き捨てた。