日々の生活の裏にはこういう話もあったってことね。
ちょっと妊娠についてごちゃごちゃ言われる話が続きますので、気になる人はとばして下さい。
なので本日は2話投稿します。
みんなが私を見ている。注目の的だなあ。
「うん、まあ。そうね。色々と言われたけど。」
「え、どんな?」
アンちゃん狼狽えてる。
「アンちゃん。私も悪いのよ。子供まだ?って聞かれるたびに、面倒だからって、
アンディさんに聞いて下さい、って返してたからね。」
「……。」
「でも。そちらに聞きに行く人はいなかったんでしょ?
みんなね、アナタに聞く勇気はなかった。
だから良いかなって。あるとすれば王妃様くらい?」
アラン様が腕組みをした。
「確かに。母上でさえ微妙な問題だからアンディには聞けないわ、と。」
固まるアンちゃん。
王妃様はちゃんとマタハラについて認識がおありだからね。日本の国の人だもの。
「まあ、色々とあったのよ。
子宝祈願のお守りを持ってくるもの。怪しい薬を持ってくるもの、セクハラまがいの質問をしてくるもの。面倒なことに、みんな良かれと思ってはいるからね。
私の中のおばちゃんの記憶がなければ病んだかも。」
そこそこずぶといからねえ。
「えっ。知らなかった。」
青ざめるアンちゃん。眉をひそめるアラン様。
「あ、お守りはきっと母さんだな。買ったって言ってたよ。」
ランド兄さんが下をむく。
「いや別に。それは気にしてないよ。しつこかった人は別にいて、そのたびにアンディさんに言ってもらえますか?というと固まったのよ。
それに、あんまりセクハラ発言を詳しく話すのは。」
全年齢だからね。この作品は。
まあ、〇〇無し疑惑とだけ。
「あったまきたっ!!だいたい時期を見てさ!」
1番しつこかったのはカレーヌ様でしたよ、次は白鬼よ。アンちゃん。
多分、ハッキーが男色疑惑を流したとみたね。
「――ええ、アラン様のお子様ができるまで。願掛けだったんでしょ。」
え、とアラン様が目を丸くした。
「お義母さん、オー・ギンさんから聞いたのよ。王妃様になかなか子供ができなかった。それで願をかけて王妃様が身籠るまでは、自分たちは子供を持つのをやめようと。」
「バカな!知らないぞ!」
アラン様が驚愕した。
「――あ、聞いたんだ。」
アンちゃんが気まずそうに頭をかいた。
「でもね、それは嘘なのにアンディが信じ込んでる、とオー・ギンさんが。」
「はあ?お嬢、何言ってんだ?」
アラン様がため息ついてニュー護衛達に言った。
「お前たち。席を外せ。何、護衛はアンディがいるから平気だ。店の外にいるが良い。」
「はい。」
そうだな。まだ付き合いが浅い人たちに話す話題でもないわね。
「ええと、レイカさん。オー・ギンは何と?」
「はい。事実を述べますと。
あの頃王妃様には敵が多かった。色んな薬を盛られていた。それこそ妊婦にだったら危険なものです。
子供を待つまでに排除しようという勢力。
メリダとか、ミールとかですね。
それでお義母さんが付きっきりだった。もちろん、そういう薬を代わりに飲んでしまったこともあった様です。」
「そんな。」
メアリアンさんが口を押さえる。
「…それが影のつとめですから。」
アンちゃんがポツリと言う。
みんな、ハッキリとは言わないがそれがオー・ギン義母さんの不妊の一因になったのは間違いない。
「それでですね、逆に王妃様はお義母さんに早く妊娠してくれたらいいのに、と言ったそうですよ。
日本には妊婦の近くにいると妊娠するという、妊娠菌という都市伝説がありましてね。」
「――はあ?何だよそれ。」
おやおや、アンちゃんが頭を抱えてるよ。
そこへおずおずと、
「ちょっといいですか?」
メアリアンさんが発言した。
「ただ、アンディ様の生命力がなかったからですよ。お子が出来なかったのは。
ハッキリ言ってあの黒いモヤによって、
いつ、落命されても可笑しくありませんでした。
キューちゃんもですが、レイカさんや、ランドさんや、エドワード様みたいな人から暖かいチカラをもらってなければ。
とっくにこの世におられなかったはずです。」
ええええええええ。
それは衝撃的だ。
流石にこれはこたえた。私は未亡人になるところだったのか。
「初めてメアリアンとしてアンディ様を見たとき、あまりの瘴気の塊で顔がわからないくらいでした。
」
ごくん。一同固唾を飲んで聞き入る。
確かに。ずっとヤバい人発言をしていたな。
「だけどね、レイカさんや、ランドさんやエドワード様といるとふっ、と黒いのが晴れるんです。
ああ、ネモさん達兄弟もそうですね。」
「長年の任務の為に悪いものが溜まってたのか。」
アラン様が辛そうに言う。
「忍びの人たちは多かれ少なかれそうなんです。
騎士団も。
特にアンディ様とシンディ様は強かったからでしょうね。真っ黒くろすけでしたよ。」
「このままだとどうなってたの?」
「レイカさん。安心してください。もう大丈夫ですから。キューちゃんが介入してからは、ほんとに良くなったから言わなかったんです。
ただ、あの赤い稲妻が来たあたりが1番危険でしたね、黒いものが心臓に手をかけようとしてました。」
ええっ!心筋梗塞の一歩手前!!
「うううっ、アンちゃん死んじゃいやだよう。」
「れ、レイカちゃん。」
アンちゃんが固まってる。
「あの、気丈なレイカさんが泣いてる。」
アラン様が驚愕している。
「レイカっ!時々おばちゃんみたいなオマエでも、やっぱり18かそこらの女の子なんだなっ!」
ランド兄。余計なことは言わんでよろしい。
メアリアンさんが抱きしめてくれた。
「もう、大丈夫ですよ。ええ。」
いかん。妊婦は情緒不安定なのだ。そういえばそうだった。
そこへ。
「レイカさん!どうしたの!」
エリーフラワー様、エドワード様。
「ランドさんとメアリアンさんについてるツチノコが、キューちゃんにレイカさんが泣いてると教えてくれたでごわす!」
キュー。
「はは、秘密も何もないな。UMA同士は。」
アラン様が乾いた笑いを立てる。
「うむ、アラン様。ですから王妃様の危機も、王妃様についているツッチーが教えてくれるはずでごわす。」
ぱあっ、とアラン様の顔が明るくなる。
「それは良いな!」
「王妃様はキューちゃんのお仲間をすくってござる。ランドさんはツッチーに好かれておられる。
そして、メアリアンさんはその連れ合いだ。
――侍女長とかパティさんのお母さんには頼まれてついてるだけだから、特に助けないけど、だそうでござるよ。」
「それはなかなかの線引きだね。」
驚くアラン様をよそにアンちゃんがやって来て、私の頭をなでる。
それで私にはわかった。アンちゃんの背中や胸に深い穴が空いてるように感じていたのは、どっか心のそこで自分があまり長生きしないと思ってたんだな。任務のためか。
ちくしょう。ばかやろう。長生きしなきゃ駄目じゃない。
「アンディ。いいか、以前も言ったが私には気を許せる人間が少ないんだ。
―――私を間近で守らなくてもいいから、長生きしてくれ。小さい頃から一緒じゃないか。なあ。」
アラン様が静かに声をかける。
岩に染み入る蝉の声ではなく、アラン様の言葉はみんなの心に染み渡って、スポンジに垂らした水のように吸収された。
「―はい。ありがとうございます。アラン様。」
そこでアンちゃんは吹っ切ったようににこやかに笑う。
「こちらで頑張りますよ、扶養家族が増えますからね。」
「ああ!何かあったら力をかしてくれ。」
「ええ、馳せ参じます。毎日の筋トレはかかしません。」
良かった。まとまった。
「そうですよ。アンディさん。双子の女の子のパパですからね。
強いお嬢さんたちですよ、二人でしっかりとくっついて激しい光を放ってます。
―あれ?言ってませんでしたっけ?双子の女の子って。」
はい、言ってないし、聞いてない。
「ああっ!?倒れた?」
――私ではなく、アンちゃんが。




