火のないところに煙が立ちまくることもある。
それから次の日。自覚したらとても眠くなった。
妊婦は眠いのだ。思いだしたよ。
アンちゃんが何も言わないことをいい事に惰眠をむさぼる。至福。
昼過ぎに猫カフェでメアリアンさんに会った。
「ええと。私ってご懐妊なんですか?」
「あ、まだ御自覚なかったんですね。王妃様がお話しされたんですか。」
ニコニコしているメアリアンさん。
「強い光です。生命力が強い。きっと無事にお生まれになるわ。」
「あっ、ハイ。ありがとう。」
「本当かい!」「本当ですか!」ランド兄とアンちゃんだ。
「良かった!ーーうわ、アンディさん、抱きつくのはいいけどキッツイですう、
ーげふっ。」
うわ、ランド兄さんが白眼をむいてる。
「ね、ねえ。お義母さんに来てもらうのはどうかしら?」
心配性のアンちゃんだ。
「う、うーーん。まだいいよ。つわりもないし。
臨月になったら頼むかもね??」
「やあ、邪魔するぞ。アンディ。」
猫カフェのドアをあけて颯爽と焦茶の髪の美丈夫が現れた。手にはピンクの花束だ。
「アラン様!」
「レイカさん、おめでとう。」
「素敵な花束ありがとうございます。」
後ろには見知らぬ忍びと見知らぬ騎士がいた。
「後の皆さんが新しい護衛ですか?」
アンちゃんは穏やかに尋ねたが、二人は飛び上がった。
「ハイ、黒魔殿。お会いできて光栄です。また、奥方様のご懐妊おめでとうございます。」
「やあ、ありがとう。キミの顔はしってる。スケさんとこの若い子だね。」
「はっ。シンゴといいます。」
「あら。もしかして、王妃様が改名を?ヤマシロって子もいない?」
「レイカ様!何故おわかりに!」
わからいでか。白馬童○がとんできーた♬
ーーいや、私も王妃様もライブで見た歳ではないけどね。知識として。
良くバラエティーのネタだったからなあ。
シンゴといって、SM○Pやら、楳図先生の私は真○
ではないのだ。王妃様ゴーイスです。
「流石レイカさん。母上の腹心だ。」
アランさまが晴れやかに笑う。
「お子が生まれたら、是非ウチの子と仲良くさせてやってくれ。」
「勿体ない事ですわ。」
とりあえず頭を下げるが、王太子さまのお子様となんて滅相もございません。
もう1人の騎士っぽい人も名乗った。
「第一騎士団出身の、ロンドです。ハイバルクご夫妻にお会い出来て光栄です。」
「まだ改名はされてないんだよ。」
アラン様が苦笑なさる。
「イイじゃないですか。私も変えられてませんから。」
「アンディ殿!そうですよねっ!!アナタ程の方がそのままなんですからねっ!」
涙目になってアンちゃんの手をギュッとにぎってくる、ロンドさん。
「お、おう。」
引き気味のアンちゃん。
「アンディ。ロンドはね、エドワードタイプだ。」
にこやかなアラン様。
「ああ、それは良いですな。」アンちゃんもにこやかだ。
「グランディの若鷹様にご挨拶申し上げます。」
「申し上げます。」
端折るなよ、ランド兄さん。
私もよくやるけどさあ。
メアリアンさんは完璧な礼だ。
「おお!占い師殿にレイカさんのお兄さん!
おいでだったか。」
「確かにロンド様にはエドワード様に繋がるものを感じますわ。お母様同志が又従姉妹なのではなくって?」
「え、そうなのかな。母は早くに亡くなりまして。」
「ええ、ルールー様ね。貴方を見守ってますわ。ここの肩にいらっしゃってよ。
こないだここを怪我されたでしょ。母上の守りで軽く済んだのです。」
メアリアンさんがロンドさんの右肩を指す。
アラン様も目を見張った。
「そうなのか!」
だーーーっ。
「おや、泣いてるよ、この子。」
アンちゃんがハンカチを出した。
「そうなのですかあ。母さんが。そうなのですかあああ。ここに。」
「確かにエドワード様と同じタイプですね。気持ちがまっすぐで裏表がないお方だ。」
ウンウンとうなづくランド兄。
アナタもそうですよ。
「キミたち。ワタシは今、こちらの公国内にいるのだ。これからは、キミたちが身を粉にしてアラン様に誠心誠意お仕えしてくれ。」
アンちゃんがお仕事バージョンで言い渡す。
「はっ!!」
そこでアラン様がふふふん、と皮肉っぽく笑われた。
「これでわかっただろう?アンディはなかなか、男らしい奴なんだ。それに奥方を溺愛している。
変なウワサは払拭されたかな?オマエたちもちゃんと訂正するように。」
「は、はい、その。」
「な、何を。私は信じておりませんでした、そんな下品なウワサ。」
「?」
アンちゃんが鳩が豆鉄砲くったみたいな顔をしている。
メアリアンさんは笑いを堪えてる。
ランド兄は青くなってる。
私は目をそらした。知らぬはアンちゃんばかりなり。
アラン様は悪い顔で笑っている。
「くくく。知らなかったのか?オマエが結婚してもなかなか、子宝に恵まれないから。
やはり私の事を愛しているからだとか、
そういう性癖だからとか、結婚は偽装だとか言われていたんだぞ。
その度に私は、オネエはキャラだと言っていたんだか。」
ずざざざざざさざーー。
麻袋を引き摺るような音を立ててアンちゃんが、崩れ落ちた。
「……勘弁して下さい、、、。」
片手で顔を覆って汗を滝の様にながしている。
「いや、私はな。オマエには彼女が何人かいた事は知ってる。
それに、嫌がらせで?若い騎士をからかってたのも知ってる。変な奴等がカレーヌとかに近づかないようにだろ?新しいとびらを開けてやるとかいったんだよな。」
「ええ!ええ!その通りです!!
ハイ、カレーヌ様に近づく有象無象のヤカラを追い払うのに、そう言いました!!
すると、すぐ逃げて行きましたからね!手っ取り早かったんですよ。」
そこで、私を見るアンちゃん。アラ、目が血走ってるよ。
「お、お嬢。まさかお嬢にも?こんな馬鹿な話が届いてたの?」
お嬢呼ばわり久しぶりだなあ。大混乱している証拠だよ。