王子様たちの誕生日 九月十日
さて、秋晴れの中。リード様のお子様のエドガー王子、フロル王子は誕生日を迎えてお2つになられた。
軽くウェーブがかかっている金髪。
青い目に白い肌。
本当に天使のようである。
ゆび先も。唇も。頬も。美しいピンク色なのだ。
マイセンの陶器の人形みたいだな。
ご自宅の中庭でお祝いの会が行われている。
お美しいリード様にヴィヴィアンナ様。
王妃様もにこやかだ。
護衛のワンチャン達もいるよ。
ネモさんに私とアンちゃん、エリーフラワー様御一家も呼ばれている。ランド兄もメアリアンさんも。
カレーヌ様も、大きなケーキを持って参加だ。
あら、久しぶりに見たらお腹が出てる?
「カレーヌ様。おめでたなの?」
「そおよオ。言ってなかったっけ?」
「アラ、そうなの。もう姫もお母さんになるのね。今度お祝いに綺麗な絹織物を送るワね。」
アンちゃんがしみじみ言う。
今回の王子様たちへの贈り物も素敵な絹織物だ。
いったいどこで調達してるんだか。
鶴かなんかを囲って織らせてるんじゃあるまいな。
「王子様がた。お約束の鳥を用意しましたよ。
ーーーオマエたち。こちらへ。」
ネモさんの言葉でコンゴウインコとフクロウがそれぞれの王子様の肩に降り立った。
「うわあ!」
フロル王子のところにはベニコンゴウのモモちゃんだ。
エドガー王子のところには白いフクロウだ。
ミネルヴァちゃんとお揃いだ。
王子様はまだ2歳だから、肩に乗ったら重かろう。
すぐに鳥たちは降りて、そのへんをチタチタ歩いている。
なんか突いてるし。食べてるし。
手間いらずでよろしい。
ミネルヴァちゃんも白いフクロウを連れて来たし、
王妃様のコノハズクもいるので花鳥園のようである。
うん、ハシビロコウが欲しいなあ。
「あー、アレが欲しいワケ?」
「アンちゃん、知ってるの?ハシビロコウ。」
「自慢じゃないけどあちこち任務で行ったからねえ。」
「いや、そんなに簡単に飼えるものでもないしね、動物園かなんかでたまに見るくらいで。」
そこへ、ネモさんが。
「ウチの動物園にもいませんね。考えておきましょう。」
ネモさんの動物園はなかなか盛況である。
まず、触れ合いワンニャンランド。
バードランド。
ウサギやモルモットとの触れ合い。
ラクダや馬に乗る体験。
普通の動物の展示に、UMAの展示があるのだ。
まずツチノコ。
日替わりで雪男かビッグフット。
(彼等とお写真撮りたいひとはコテージに泊まって申し込んでね、だ。)
ギカントで職を失った人達の中で、牧場をやっていたり、動物の扱いに長けている人が働いているそうだ。
ここだけの話ですが、とネモさんが声を潜めた。
「愚弟と例の彼女が上手くいってたら、動物園を任せるのも手かな、と思ってました。」
「え?ネモさんの弟さんは1人はサーカスに必ずいないといけないでしょ?」
「ええ、レイカさん。
サーカスと動物園に必要なんです。
ダチョウ牧場はね、軌道に乗ったら他のひとでもいいのですよ。
しかし、動物園はUMAがいますからね。
愚弟の方が、ね。」
なるほど。
アンちゃんがふふん、と笑った。
「エドワードやランちゃんみたいにね。UMAに好かれる人材がいればねえ。」
頭をかいて苦笑するネモさん。
そっとあちらにいるランド兄を見た。
「実はね、ランドさんに園長はどうかと思ったことがあったんですよ。」
おや。
「それはダメだな!ランちゃんはメアリアンさんを、つきっきりで護衛しなければ。」
アンちゃんの反対だ。
あらら。我が兄は動物園長になりそこねたぞ。
本人は何も気が付いていないが。
「でもまあ、後10何年かしたら子供達の代でなんとかなるかも。それまでしのぎましょう。」
ん?
「あら、そうネ。マーグが今の彼女と結婚すればねエ。子供もできるでしょうし。」
王妃様の言葉に苦笑するネモさん。
「はい、その前にうちの子が生まれます。
多分、アラン様のお子様と同じくらいですよ。三月出産予定です。」
「え、ええええ!そういえば最近ローリアさんの姿をお見かけしてないと思ったら!」
「ヤダ…水くさいわ。言ってくれればいいのに。
くっ、情報が命のワタシが知らなかったなんて。」
「最近、血生臭い話が多かったから、お話しそびれて。隠してませんがかえってその方が話が回らないものですね。」
「お祝いは絹織物でいいかしら。」
だからどこで調達するんだ。
まさか自分で織ってないよね?
「ふふふ。聞いたわよん。」
にゅっと首を出すカレーヌ様。
「うっわ、驚いたっ!いつの間に背後に回り込んだんですかっ!」
「私は五月出産予定なの♬」
「ほほほ。めでたいことね。エリーフラワーさんと保育所の話を詰めなくちゃね。
カレーヌさんも身内はこちらにいないのよね?」
「あ、王妃様。そうなんです。」
それから、と王妃様は眉間にシワをよせた。
「後ね。シンディの子供と、リーリエの子も生まれるわね、あちらは四月だったかしら?」
「はっ。確かそのあたりです。」
「パティさんは産後どこで働いてもらおうかしら。
貴族令嬢だったけど、おウチに仕送りするために
侍女として他所に出稼ぎに行ってたでしょ。」
「スイーツが作れればウチに来てもらっても。
作れなくても事務仕事が出来ればお仕事はありますわ。」
「ホテルで働いて貰うのもいいですね。礼儀と立ち振る舞いがしっかりしている、元貴族令嬢なんていい人材ですよ。」
「そうだわ。パティさんのお母さまは保育所が出来たらそこで働いて貰えばいいわね。育児の補助とかね。」
おお、ご本人たちが知らないうちにパティさんとその母の仕事が決まっていく。
夜になった。
竹の筒を用意するネモさん。
「これは?」
「ここにキューちゃんが光を入れるんです。
ーーね、アンディくん?キューちゃんを撫でてね?」
「ああ、はい。よーしよしよし。
ーーうわぁ、なんか持って行かれる気がする。スッゴイ吸われてるうう。…でもうっとりしちゃうわ?」
「あら!アンディさんから負のオーラがゴッソリ吸われていくわ!10%しか残ってない!」
「あ、あ、何か生まれ変わったような気がするわ、
ワ、タ、シ。
キセキが、この胸に溢れてる?
今なら空も飛べるはず。」
飛べませんから。
キューちゃんが、並んだ竹筒に口から注いでいく。
その数、30にもなろうか。
「みなさん離れて!」
ネモさんの声でみんな離れる。
ちゅーどどどどどどーーん。
高○留美子さんの漫画なような効果音が響き、
「おお!スターマイン!!」
花火が連発して打ち上がった!!
「いつ見ても花火はいいものね。ほほほ。」
「そうですね、ふふふ。」
そしてスッキリした顔のアンちゃんが残った。




