指輪物語。
「ほほほ。悪いわね。アンディ。」
「何をおっしゃいますやら。…もう増えませんね?
まあ、最悪別のメニューでもいいですか?増えた人は。」
「そうね、来るとするならアランなの。」
ぶっ。げほっ。
コーヒーを吹く私。
「あら、大丈夫?レイカ。」
「王妃様、お願いですからー、その人数ならご予約下さいなー。
私が手を使えればなんて事無いんですけど。」
横目で見るとアンちゃんが三人いるかのように動き回っている。残像が見えるよ。
加速装置!
「ほほほ、大丈夫よ。アランは気にしないわよ。」
「そうだよ、レイカさん。母上と私が半分こすれば。」
「何をおっしゃるウサギさん!」
「懐かしいわ!レイカ。パタ○ロね!」
「王妃様。関係者を集めるということは、白鬼のお話をなさるおつもりなんですね。」
「ーー流石にレイカね。勘がいいわ。」
「わかりましたっ!ちょっと指示をしてきますわ。アラン様いらっしゃるんでしょ、きっと。
アンちゃん、ご飯はおにぎりに変更。お茶碗につがないで。あと、悪いけどメアリアンさん。手伝って貰える?」
「わかったわ。」
今日は猫カフェは休みなのでみんなを動員する。
「卵サンドとハムサンドとツナサンドを作りましょう。多分、エリーフラワー様も呼ばれるわ。ミネルヴァちゃんの好物でしょ、卵サンド。」
サンドイッチを広めてくれた、どこぞの先人よ。多分転生人よ。ありがとう。
ついでにマヨネーズとケチャップとソースを作っといてくれてありがとう。
「簡単に食べられるものが良いですからね。おにぎりもサンドイッチも唐揚げも片手でいけますからね。」
「レイカさん、ポテトフライも頼むね。」
「あいよっ!」
食堂のおばちゃんの口癖まででちゃったよ。
相手は王子様だけど、まあいいか!!
「ワシもイモの皮剥きならできますわい。」
アラ、ピーターくん。ありがとう。
さて、出来た。多量の唐揚げ。多量の各種おにぎり。各種サンドイッチ。ポテトフライ。
味噌汁。梨、りんご。ふどう。
そこへアラン様がご到着だ。
「お邪魔するよ。ーーやあ、いい匂いだ。」
エリーフラワー様一家もきた。
キューちゃんもだ。
ミネルヴァちゃんにサンドイッチと沢山のフルーツを渡した。キューちゃんはフルーツが好きらしいよ。
「お利口に食べられる?キューちゃんと。」
「あい。」
「ピーター、ミネちゃんを見ててくれるか?
キミもこの皿を持って行きたまえ。」
「おお、リード様。私にまで?かたじけないですじゃ。さあ、嬢ちゃん、じいじと食べましょうな。」
ピーターさんはミネルヴァちゃんと角のテーブルについた。
「みんな。食べながら聞いて。それから確認しましょう。」
王妃様の声に、
「まずこれを見てください。まったく同じ指輪です。」
リード様が指輪を三個並べる。あの偽物ルビーの指輪だ。
「彼女たちから回収しました。欠けてるのはパティさんのです。」
怪しく光る指輪。
なんだろう、気分が悪い。
「ほう、これが。」
王妃様が手にとろうとする。
「王妃様!触っては行けません!」
メアリアンさんが叫ぶ。
「ああ!コレだったんだわ!昨日レイカさんがおかしくなったのは!この指輪を女性が触ると、影響を受けます!」
エリーフラワー様の目が光った。
「なるほど!キューちゃんお願い!」
美獣が駆け寄ってきて指輪を飲み込んだ。
ひょいぱく、
ごくり。
「ああっ!?」
キューちゃんの身体が赤く点滅して光る。
ぺっ。
吐き出された指輪の石は透明になっていた。
そのまま、キューちゃんは外は駆け出していく。
皆で追いかける。
赤く光った神秘のケモノ。直立している。
さっきより膨らんでいるような気がいたしますよ。
(当社比)
活火山の膨張ってこんなかしら。
キューちゃんは口を空にむけた。
カッ。
空に向かって放たれる光。
どどどどどどどがががががががん。
花火が打ち上がった。お昼なのが残念だ。
色ははっきりとは見えない。
たまやーと、叫ぶ気にもなれないや。
キューキュー。
キューちゃんはスッキリした顔をしている。
「口直しにたくさん果物をあげましょうな。」
エドワードさんがスイカを手に取った。
ええっ、丸ごとかい。そのまんまボールのように放ってるよ、この人。
コーーン。
キューちゃんの口から丸い輪っか状態の光がでる。
ドーナッツ型だ。
おっさんがタバコの煙を輪にするかのごとし。
綺麗な表現なら、白イルカのバブルリングのごとし。
マニアックな表現なら、ミニラが出す光線のごとし。
それがスパーンとスイカを輪切りにしていく。顔の角度を変えて縦横切っていった。すごい。
それをキューちゃんがパクリパクリと食べていく。
「キューちゃんが浄化してくれてよかったわ。」
メアリアンさんには見えたのだそうだ。
「あの指輪は何度もシンディが女の人に使ったもの。彼にハニトラをかけられた女性たちの怨念の塊が取り憑いていたの。
男性には影響しませんが、」
と、そこでリード様を見た。
「女性は負の感情に引っ張られます。パティさんが精神的に追い詰められて、疑心暗鬼になったのもそれのせいです。」
なんて事。
「でも、私指輪に触ってないわ。」
「パティさんの手を握り、背中をなでてやってますね。その部屋に白鬼がいた事を知った女性達の念が怒りの炎となって近くにいたレイカさんを突き動かしたのですわ。」
えっ。知らないうちに依代にされてた。
「私、なんでシンディさんはあんなに黒いものが憑いてるのに生きてられるか不思議だったんです。
指輪を通じて女性達にひきうけてもらってたんですね。」
「迷惑な奴だ。」
アンちゃんの声は怒りに震えていた。
「他の女性はどうなのかしら。」
「リーリエさんは持ってないから大丈夫でした。
一眼で偽物だとわかって受け取らなかったそうですよ。流石に高位貴族の娘ですね。
砂漠の女性たちはまだもらって日が浅かったようです。
特に影響はないかと。」
「ではこの指輪はお祓い?済みという事か。博物館に飾っても大丈夫かな。」
リード様がにこやかに言う。
その発想がここで出るとは。こないだの砂漠の民のサークレットといい。
この人はいわく付きのグッズのコレクターかな。
しかもそれを展示か。
「呪われた指輪、浄化済みか。客が呼べそうだ。」
アラン様貴方もですか。
「いや,何。リードのグッズの売り上げが入ってこなくなったし。ゴニョゴニョ。」
「兄上。ビッキー嬢から買いとった、プラチナのガルダインのサークレットと女性達から買った普通タイプのサークレットも並べて飾りましょう。
砂漠の秘宝、謎の暗殺者が落としたものとか説明書をつけて。」
ちょっと嘘が入ってますねえ。
「何、身バレの為フェイクあります。と書いておけば宜しい。」
と、某掲示板の様なことを言うリード様だ。
「さて、シンディについて話を続けるわ。」
王妃様の言葉にみんなが席についた。




