王妃様とトークで盛り上がるなり。
誤字報告ありがとうございました。訂正しました。
「イタタタ。」
「ほら、言ったでしょ。手を痛めてるって。
エリーフラワー様からもらった軟膏あるから。」
あの後、ネモさんはパティさんと白鬼を連れて行った。
白鬼を肩にヒョイとのせて、
「アネだん、おずがれでひた。」
とミノちゃんは言い去っていった。
そういえば喋れるんだったな、カタコトで。
たぶん、
「あねさん、お疲れ様でした。」だと思う。
新しい腰蓑でも差し入れるか。
「パティさんのお母さんには連絡ついたのかしら。」
「は、はい!」
アラ、みんながびびってる?
「さっきのね、レイカちゃん何か取り憑いたみたいだったわー。
シンディを懲らしめられたのは良かったけどさ。
けけけ。」
「私、本当に見惚れましたよ。レイカさん。」
オー・ギンさんだ。目がキラキラしてる。
「あの白鬼には本当に腹を立ててたんです。
知ってるクノイチがどれだけ煮湯を飲まされたか。」
「女の敵だから近づくなって、いの一番に習いました!」
女子店員達が声をそろえる。こんなガラスの10代にまで警戒させるなんていかんやろ。
「王妃様や、リード様にはご報告しますけど面白がられるでしょうな。」
ヤー・シチさんが腕組みをして言う。
床に偽物のルビーの指輪が転がっていた。
「これはリード様にお渡しします。他の女性からも証拠として回収しましょう。」
ヤー・シチさんがそれを拾い上げた。
「おほほほほほほほほほ!!」
次の日王妃様がいらっしゃった。私の顔を見るなり高らかに笑ってらっしゃる。
ここは隠れ家レストランだ。
「わたくしの鉄扇が役にたったのね。」
「アッ、ハイ。」
「手は大丈夫なの?エリーフラワーさんのお薬が効いてるようね?」
包帯を巻いた手を撫でる私。
「くじきに効くってこういう事なんですねえ。」
以前、エリーフラワー様とくじきは捻挫かと論争したなあ。
「コーヒーです、どうぞ。」
アンちゃんがコーヒーを入れてくれる。この手だものね。今日の私はお話相手だ。
「アンディ、その格好似合うじゃない。黒○事みたい。ネクタイはでも蝶ネクタイがいいわ。」
「○執事はわかりませんが、褒めてらっしゃいますか?執事でいいのに、わざわざ黒をつける理由はなんなんですか。」
まあ、元ネタを知らなかったらねえ、
オマエ、腹黒だろ。と言われてるみたいだよ。
「ところで、王妃様。あの時何かに私、取り憑かれた感じがしたんですよ。」
ふうん?と王妃様はコーヒーをすする。
「足元がゆらめきましてね。踏みしめて一歩、一歩歩くたびに、何かが足元から立ちのぼる感じがしたんです。オーラというか。
ものの○姫のシ○神みたいに。
自分が自分では無いみたいでした。」
アンちゃんがケーキ盛り合わせを置いた。
カレーヌ様の新作だ。
「メアリアンさんにあの後聞いたら、シンディに騙されたり、遊ばれたりした女性たちの無念の塊が憑いたんだと。ーーもういないようですが。」
アンちゃんが説明する。
「なんかゴジ○みたいね。アレは戦争で亡くなった人たちの無念の塊だって奴。」
うーん、と王妃様が唸る。
「○スラとキング○ドラとか出た作品でしたね。
筿原と○えが気の毒な役をやってましたね。」
「そう!病院の窓から接近するゴ○ラを見て悲鳴。
でもそのまま通り過ぎたから、助かった♡と思ってたらまさかの尻尾攻撃!」
「世の無情を感じましたねえ。」
ああ、王妃様と久しぶりの前世トークだ。
そこはかとなく語らひければ、あやしうこそものぐるほしけれ。
(意訳 とりとめないことを、話をしているとなんだかバカバカしい気持ちになることよ。)
と、なんだか雅な気持ちでいると、
「ははうえー!!」
はい、リード様のお出ましでございますね。
「あら、リード。コレから呼ぼうと思っていたのよ。ほほほ。」
「10日と3時間振りでございますね!」
こええよ。マザコン王子。
「そうねえ。三婆の件で会ったわよね。良かれと思ったのに。
ええと?そちらが新しい護衛ね?」
ピーターさんが頭を下げる。
「はっ、ピーターと申します。」
「あらほほほ。わざわざリードが紹介に連れてくるとは。よっぽど目をかけておるのね。ほほ。
心して励む様に。」
「有り難き幸せ。」
「王妃様、初対面なんですか?以前指導に来られたと。」
「そうなのよ、レイカ。ちょうど怪我で引きこもっている頃でね。」
「ははうえー。もっと早めにピーターを警備につけていれば。あんなことには。うっうっ。」
ポカンとしている、ピーターさん。
アンちゃんが彼の肩を叩く。
「ピーターくん。これが日常なんだ。慣れるよ。
リード様がお妃様が大好きなのも。
レイカちゃんと王妃様が気やすいのも。
マネしたらダメだよ?王妃様が身内以外で優しいのは、レイカちゃんだけだからね?」
「は、はあ。凄いですな。」
「ははははははははは!そうだとも!
母上が大好きで何が悪いのだ!」
良い笑顔で言い切りましたね、リード様。
「ねえ、アンディ。レイカが手を痛めてるでしょ。
何か出来るかしら?」
「ええと。唐揚げで良いですか?レイカさんの指導で下味つけてますよ。
今若い奴らが線キャベツ切ってますけども。
お味噌汁とご飯はつきますよ。」
「それでいいわ、ここのご飯食べたくて。」
「王妃様。今度はスパゲッティはどうですか?あえてパスタでなくて、スパゲッティ。」
「ああ、食堂のサンプルでよく、フォークがスパデッティを持ち上げてるやつ?でなくて逆か?スパゲッティがフォークを持ち上げてるのよね。」
「ええ、懐かしい食品サンプルですよね。
それでですね。
よくミートソースは上にかけてあるでしょ。ナポリタンはハムとピーマンとタマネギを炒めてケチャップで味付けでしょ。
私のはミートソースを麺にしっかり混ぜ混んだものです。ピーマンとしめじと玉ネギ、にんじんをみじん切り。コーンも入っているし、ニンニクも効かせてます。
おしゃれでは無いけど栄養はばっちり。味付けはケチャップとウスターソースです。」
隠し味はお酒と醤油とみりんをちょぴっと。
「ボロネーゼとどう違うの?」
「あちらはまず牛肉。うちは合い挽き。
それにセロリはうちは嫌いな人が多いから使いません。赤ワインもね。」
「なるほどー。とことん庶民の食堂の味。」
相変わらず毒舌でいらっしゃる。
「ええ、だからあえてパスタと言わずにスパゲッティです。グリーンピースを乗せるのはやめましたけど。不評なので。乾燥パセリをまぶします。」
「また、バジルじゃないとこが昭和ー!
でも食べたいわ!それに私もグリーンピース苦手だったのよ、缶詰の。」
「私もです。なんで乗せてたんでしょうね?オムライスや天津飯やカツ丼にも乗ってましたよね。」
「昔の缶詰のグリーンピースってほぼ着色されてたじゃない?
シュウマイに乗ってたのが取れてさ、そこが
緑色に染まってたの。なーんか、嫌だったのよね。」
「あー、それ。九州ラーメンの紅しょうがで、汁が赤く染まったのをみて食欲失った友達がいましたー。
それに通じるものがありますね。」
と、二人でグリーンピース不要論を
(だけど生のえんどう豆をいれた豆ご飯は美味しい。)熱く語っていたら、
「王妃様。馳せ参じました。」
ランド兄とメアリアンさんが現れた。
「そうそう、呼んでたのよ。」
アンちゃんは無言になり受話器を取った。
「…ヒソヒソ。あのさ、2人分ランチ追加出来そう?うん、頼むね。」
王妃様あ、人数ふえるんならさ、
それ、、早く言ってよーー。
私の脳内に松重さんが降りて来た。