朝焼けの光の中に、立つものは。
誤字報告ありがとうございます。
訂正致しました。
長い夜が開けた。
カーテンを開けると朝焼けだ。遠くの山々が美しい。
牧場へと続く道が見える。朝の光に照らされている。
犬を連れて散歩する人たちが見える。
その中にデカい鳥がいた。
えっ?ダチョウ?エミュー??
「最近、エミューの飼育も始めたらしいんですわ。
牧場でね。」
「はあ。メアリアンさん、おはようございます。
詳しいですね。」
「カレーヌさんがね、エミューの卵を使ったプリンを試作しててね、こないだ持ってきたのよ。」
「卵の味は淡白だと聞きますけど。デカいでしょうね。」
以前、前世で子供の担任の先生がダチョウの卵を
旅行先で食べたと聞いた。薄味だったって。
そういえばエミューはダチョウよりも懐つくと聞くなあ。
可愛いじゃない。
あら?エミューを散歩させてるのはマーズじゃないか。
向こうも気がついたみたいで手を振ってきた。
視力いいな。
「大きな鳥。」
横に赤い目をしたビッキーさんがいた。
眠れなかったようだ。
うん、気分転換も必要だな。
「よし、見に行ってみようか。」
「あら。」
「わ、私も行く。」
私の提案に2人は乗ってきた。
「やっぱり。レイカさんですか。お久しぶりです。」
「ネモさんの弟さんよ。」
「メアリアンです。」
「あなたが!有名な占い師ですね。
ええと、レイカさんの兄さんとご結婚なさったとか。
おめでとうございます。」
ええー、情報早い。
「最近はね、ネモ兄ほどは及ばないけど随分と動物たちも懐いてくれる様になったんですよ!
ホラ。」
マーズの指に小鳥がとまった。
「おしゃべりスズメが教えてくれました。」
おおう。なるほどね。
「可愛い、エミューさん。」
ビッキーさんは鳥さんに夢中だ。
「こちらがね、ビッキーさん。保護施設に連れて行くの。」
「ーああ!そうでしたか。大変でしたね。」
マーズの眉間にシワが寄る。この兄弟は可哀想な女性には親切なんである。
「初めまして。」
ぎこちなく挨拶をする彼女。閉ざされた世界で生きてきたからか。
初対面の人には硬くなってる。
「こちらこそ。」
マーズはネモさんに良く似た笑顔で笑った。
「マーグは?」
どどどどどど。
砂煙をあげながら、ダチョウに追われて?
マーグが現れた。
「レイカさん!お久しぶりです!」
えーと?ダチョウも飼ってるの?
「今回、ダチョウも飼うことになって。
二大巨鳥の目玉焼き食べ比べを観光の目玉にするんですよー!」
目玉焼きが目玉か。洒落かな。
「まあ、まだあんまりダチョウは慣れてくれてないんですけどね、ハハハハハ!」
おい。突かれてるぞ。
しかし、エミューとダチョウは美脚だわ。
思わず見惚れちゃうよ。
二羽が並んで朝日を背にしていて、逆光になってる。それも効果的だよ。
キリッ。
ドヤ顔だ。
「今度牧場に来てくださいね!」
朝日を浴びて2人と二羽は去っていった。
土煙を残して。
「なんかすごかった。でも、素敵。」
「流石にネモさんの弟さんたちね。似た感じ。
動物に懐かれる人たちだわ。」
「おや、愚弟たちが来ていましたか。」
「ネモさん!」
ゆっくりと歩いてネモさんが現れた。
「ビッキーさん。エミューが気にいりましたか。」
「ええ!目が可愛いです。」
ダチョウの目の方が可愛いと思うけど。
「では、是非牧場へいらっしゃい。生まれたての子がいますよ。」
「ほんとですか!」
良かった。楽しそうだ。彼女の長い夜も開けたんだな。
「メアリアンさん!」
「ランドさん!」
ランド兄さんが現れた。
「お部屋行ったらいなかったからさ。窓から覗いたらここが見えてね。」
「兄さん。お疲れ様。もう、いいの?」
「うん。帰ろうか。」
「ランドさん。コレ。」
ネモさんからにこやかに渡されたのは紙の束だ。
特選!築浅物件!
◎新婚家庭にピッタリ
◎徒歩圏内にショッピングモール、病院、
学校あり
◎頭金〇〇ギンでOK
(ギンと円は同じ)
◎静かな環境です
◎馬車乗り場にも近いです
などの文字が並んでいた。
「私のおすすめは一枚目の物件と、五枚目のです。」
「はあ。」
「アラ、ホント。これなんか良いじゃない?」
ヒョイと覗きこんできたのは。
「アンちゃん!」
「いやー、後片付けに手間がかかっちゃってネ。」
「ランドさんなら、お勉強しますよ。ローンも組めますから。」
おや、ネモさんがやり手の不動産屋になっているよ。
千三つじゃないよね?
「あの。聞いていいですか。ガルダインはどうなったのですか。」
ビッキーさんがおずおずと尋ねる。
「あー、そうだよねー、やっぱり気になるか。」
アンちゃんは薄く笑いを浮かべた。
「もう、この国にはいないよ。」
それって。
「キューちゃんが、外へ連れて行きました。
こう、咥えてね。」
ネモさんの言葉に、ひかりを纏って現れた美しいケモノ。
「光で燃やしたりはしてないんだよ。」
ランド兄が続ける。
「で、では。運が良ければ生き延びられるのですか?」
「――うん、そうだね。」
アンちゃんの笑顔は貼り付けたようだ。
ああ、嘘をついている。
そこへローリアさんが来た。5人娘を連れている。
「ビッキーさん。みんなと一緒に参りましょう。」
「はい。」
「ビッキー嬢。牧場で働きたいなら、今度見学に来たまえ。」
「ええ、ぜひ!」
「帰ろうか。」
ネモさんが馬車を呼んでくれた。
乗り込んだらいきなり眠り始めるアンちゃん。
疲れてるんだな。
一日中あちこち行ってたから。
「ねえ、ランドさん?新居どうしましょうか。
というか、とりあえずどこに住みますか?」
「そ、そそそそうだね、お互い寮の部屋は1人部屋だし。」
「何日かホテル住まいしなよ。そこでネモさんおすすめ物件を検討すればいいよ。」
急に決まるんだもんね、結婚。
「ランドさん。結局あの馬鹿王子を始末したのは、誰なんですか?
――キューちゃんが運んだのは、事切れたアイツでしょ。」
メアリアンさんが質問をする。
―――いつのまにか、アンちゃんが薄く目を開けていた。
ミラーマン♬




