まわるまわる、まわる因果は糸車。
「家を飛び出してからどうしたの?」
「あっちこっちの牧場や農園で住み込みで働いてました。なんか動物に好かれる性質みたいで。」
「昔からアルバート兄は異常なほど動物に好かれましてね。」
「公園のベンチに座ってぼーっとしてると、
いつのまにか野良猫が膝に乗って、グルグルと喉を鳴らしていたり、肩に鳩がのって、どどぽっぽーと鳴いていたり。」
えっ、すごい。羨ましい。
「見知らぬどこかの犬が足元で腹を出して横たわり。だらんと垂らしてた手を別の犬が、クンカクンカと嗅いでからの舐め回し。
頭の上にはスズメが止まってフンの山をなす。」
ちょっとそれは嫌だなあ。
しかし、ディ○ニープリンセスの属性を持っている
はわかった。すごい。
だから豚さんたちも従ったのか。
「うちの庭師の爺やには、みどりの指をお持ちです、とは言われてました。良くあちこちの庭に放置されてるエビネラン。あれなんか得意で。」
ほほう。グリーンサム。
「爺やの口利きで。近場の農園に逃れましたけど。
すぐ見つかりそうになって。」
森にかくれたら、何故か森のくまさんの庇護を受け、追っ手は逃げかえったそうだ。
「その後森を反対側に抜けたんですが。はぐれたヤギがいて。それをかまってたら、次は羊が。
それを追ってた牧羊犬、それから何故かニワトリやガチョウやらが、後ろをついてきちゃって。
仕方ないからそのまま練り歩いていたのですが、」
ハーメルンの笛吹き?
「そこの牧場主がウチで働かないかと。」
そうなるわな。
「でも、母の方が気になって。王都の別邸にいるのはわかってましたから。
そうこうしてるうちに、お城の庭師さんがそろそろ老年でお手伝いが欲しいと求人を見たんです。」
「それで先代が引退して、今にいたるというわけね。」
そうです、とアルバートさんは続けた。
「時々セバスチャンを見かけましたけど、向こうはこちらに気がつきませんでしたね。
相変わらずいけすかない奴で。」
選民思想が強いアレのことだ。庭園で働く人なんか
目に入らなかったんだろう。
「だんだんと周りの庭師の中にお庭番が混ざってるのに気がつきました。
何か訳があるなら相談にのるよ、と。
髪も染めてるし訳ありなんだろ、と。
お力を借りようかなと迷ってました。」
「それ、お庭番としてお誘いをうけてたんでは。兄上。」
「そうね。その動物使いの才能、欲しいわね。」
オー・ギンさん。
「ええー、庭いじりの方が楽しいのですが。」
そこで王妃様が。
「その話はあとじゃ。とにかくアリサに会ってこい。」
3人が退出したあと、王妃様がリード様たちに、
というかエリーフラワー様に。
「どう思う?」
「これからの事ですね。せっかく次男が戻ったのだからレッド伯爵家を継がせるのが筋だとは思います。」
「しかし、ろくに学校も行っておらんし、伯爵家としてやっていけるかの。」
「もちろん、不安はありますが、コ・イー・ワイ牧場を今以上に発展させられると思いますし。
ま、動物を使う才能はほかの場所でも使えるんでしょうけども?」
横目でオー・ギンさんを見るエリーフラワー様。
「出来ればウチに欲しいですね。普段は野菜や花を育ててもらって。そっちメインでいいのです。
何かの時に動物を操って欲しいです。」
それに、私をちらっと見て続けた。
「愚息と違って若いクノイチに人気なんですよ。
怖くない、余裕があるところがいいんですって。」
アッハイ、そうですか。