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長い夜。⑧

「つまり、ガルダイン様は処罰されるのですね。」

ビッキーさんの顔から表情が抜け落ちた。


「ビッキー、砂漠の国では私はとっくに亡き者になってるんだ。戻っても殺される。」

「そんな。」

「何をやってたんだろうな。もし、占い師様を娶っていても何にもならなかったんだ。」

そこで、サークレットを外す、ガルダイン。

それをビッキーさんに手渡す。

「これはね、多分プラチナだ。売ればそれなりになるだろう。なに、君らのは二足三文だが、これは一応王族のものだからね。」


「ガルダイン様!」



キュー。


「なんだい?キューちゃん。

え?そうなのか??んー。」

ネモさんが顔を上げた。


「その二人を一緒に焼いてやろうと思ったが、女性の方はまだ子供だと。」

「な、何をいうんだ?お狐様。」

きゅ、キュー。

「慕いあっている2人を引き裂くのは忍びない、って。」


「白狐どのの、感覚は我らと違うとは聞いていたが。」

アラン様が呟く。


「か、構いませんわ!1番楽なんでしょ?

先日だってみんな焼かれるところだったんでしょ。」

「あの時はメアリアンさんを襲った君らに腹を立てていたからだって。」


あら?でもこの子15を過ぎてるよね?


「多分、栄養状態のせいだと思いますが、初潮もまだのようなんです。医者がいってました。」

ヴィヴィアンナ様が私だけにそっとささやく。

あー、そうか。


キュー、コココン。

「彼らを外に出してしまえ、って言ってるよ。」

キューちゃんはそのまま目を閉じて丸くなった。


えええっと。どうしよう。


「……それはそれでも良いですけどね。

とりあえず、ウチの動物達には襲わせませんよ。

手助けもしないけども。」


ネモさんはため息をつく。

つまり、ブルーウォーター公国を出るまでは安全という事か。

「その、サークレットは色をつけて買い取ってもいいぞ。路銀にはなるだろう。

そうだ兄上、博物館に飾ったら?

ピーターくんたちの普通バージョンと並べたら、いい感じかもね。」

リード様流石です。ここでその発想が出てくるとは。


「ところでね、ピーターくん、サティくん。

一緒についていくのはナシだよ。

君たちはここで働くんだよ。」

お、真顔のリード様はこええぜ。


「そんな。ビッキーさんはここで保護するべきですよ。外に出たら大変です。

ガルダインさんがどれくらい強いか、わからないけど、今まで雑事は人に任せてたのでしょ。

2人でやって行けますか?」

ヴィヴィアンナ様の発言は尤もだ。


「うん、言いにくいけどハッキリいうね。

私には面倒になって貴女を放り出す未来か、2人で野垂れ死にする未来しか見えない。

私は占い師じゃ無いけどさ、中身は50代のおばさんなのよ。

こんな甘やかされた男、家事能力もなさそうだし。

料理ひとつ、洗濯ひとつできないよね?

あなたもそう。」

「え、ビッキー料理出来ないのか?」

「いつも5人娘さんがやってくれたから。」

「でも、普通オンナなら出来るだろ?」


「ハイ、アウトー!!ビッキーさん、あなたは子供過ぎる。今までは保護される対象だった。

ちゃんと自覚しましょう、もう1人前だと。

ガルダインくんはそれ以前だよ。

なんなの、その女性だからって発言。状況わかってんのかしら。

習ってないこと出来る奴いるものか。

アンタも料理出来ないなら、誰がこの先教えるのよ、この子に。」

 

学生相手の食堂やってたらさ、

時々見たのよ、同棲するカップル。その中には家事を女だからって彼女に丸投げしてる馬鹿ちんもいてさ。

アンタが養ってる訳じゃないんだろ。ってムカムカしてましたよ、ええ。



「馬鹿たれだな。キミは。私だってな、自分のことはやるぞ。野営とかでそれなりに経験あるからな。」


リード様。容赦ないけどその通りです。


「そんな考えでは良くないですね。

キューちゃん、追い出すのはあの男だけにしましょうか。」ネモさんがささやく。


コーン。


「好きにせえ、と言ってるよな!」

はい、リード様。私にもそう聞こえますよ。


「ビッキーさん。」

メアリアンさんが、すっ、と立ち上がりビッキーさんのところへ寄って行く。

「メアリアンさん、もう体調はいいの。」

「ええ、レイカさん。彼女に助言を。

あの男が好きで離れたくない、というのね。

貴女のただ1人の家族ですものね。彼なりに貴女を守ってはきた。


ーーアメリアナにどこか似ている、貴女を。」 


「!」

ヴィヴィアンナ様が目を見開いた。

「彼は無意識に貴女を自分好みの女性に育てようとした。そして、甘やかしてきた。」

ピーターさんとサティさんが頷く。


「ーーー私は死者の声を聞くもの。貴女のお母様が、嘆いています。この男から逃げろ、と。

変だと思わなかったの?何故自分が砂漠の中にいたのか。」

「ーキャラバンが賊に襲われて、死体の中にこの子だけが生き残っていたと、聞いております。

私が仲間になった時にはもう彼女はいました。」

サティさんが淡々と語る。


まさか。


「その頃、ガルダインは荒れていた。最愛の姉を失って。

放浪してるうちに似たような荒くれものが集まって、馬賊と呼ばれるようになった。

その時、キャラバンの中に女の子を見つけた。


ーーー彼はこう思ったそうよ。

アメリアナがさらわれてる!ってね。」


「嗚呼嗚呼あああ!!やめてくれっ!」


何よ、それ。


「冷静になればわかったハズだった。歳が違うと。彼が思い返すのは、小さかったアメリアナの姿だったから。そうでしょ。貴方は色々間違えた。

!!………うううう!」


「ちょっと、大丈夫?」

頭を押さえて倒れこむ彼女メアリアンを支える。ランド兄と一緒に。


「ええ、ちょっと負荷が。

背後霊お母様とピピナさんと、ビッキーさんのお母さんの記憶と感情がいっぺんに流れ込んできて。」



わあ。聞くだけで頭が割れそうだよ。 

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