長い夜。⑥
「うーん、まあ、私よりエドワードさんと言う人に懐いているんだが。
私の言うことはある程度聞いてくれるよ、何故だい?」
「…白い狐様の光に裁かれるのなら、1番楽だと思うんです。」
下を向いてすごいことを言うな、この人。
あら、涙をポロポロ落としている。
「ど、どうせ、粛清されるのなら。」
「なるほどネ、そうきたか。」
アンちゃんが、はっ!と吐き捨てる。
「言いにくい事を言うのも忠臣か。」
「な、何を言うんだよ、お前…」
「占い師様。彼についてるピピナ様と第二妃様はどうなるのですか?」
「背後霊お母様はもう彼とくっついてしまってるの。彼と一緒にいくしかない。
ピピナ様はとても深い哀しみの中にいる。このまま消滅するでしょうね。」
「そんな。」
「サティさん。ここに留まるほうが珍しいの。
ほとんどの人が、すぐいなくなるのよ。
実際、貴女の他のご家族はいなかった。ピーターさんの息子さん夫婦も。」
「キューちゃんに裁いてもらうのは良いんですけどね。
結局、ビッキーさんには会わせるのですか?」
ネモさんの問いにアラン様が答えた。
「会わせよう。」
「ヴィーのところでゆったりしてるハズですね、
もう寝てたら気の毒だな。」
「大丈夫。起きてますわよ。大好きな王子様が心配でたまらないでしょう。」
そこで、呼びにいくなら女性でなければと、私が呼びに行く事になった。
クノイチも出払っているというか、あっちにいるというか。
何で私が、という気もしないでは無いが疲労困憊のメアリアンさんにはゆっくりして欲しい。
アンちゃんがついて来てくれた。
「なんか、ごめんね?レイカちゃん。」
「アンちゃんが謝ることじゃないでしょ。」
コテージの周りの猛獣たちもネモさんが一言、
彼女達を通してあげてね?
と言ったらその場にステイしてくれた。
ふうっ。
バササッ。
「アンディ、アンディ。」
「うわっ、ルリルリちゃんか。夜だぞ。」
「サッキマデ、ネテタ。ネモニヨバレタ。アンディキテル。キイタ。」
「アラ、そう。」
好かれるのも良いわね、と満更でも無さそうだ。
ホテル内部に行くとオー・ギンさんが出てきた。
「アンディにレイカさん?それに、ルリルリちゃん?」
ルリルリちゃん人気ものだ。
「ネモト、アランガ、ビッキー、ツレテコイ、イッタ。」
「―そうでしたか。ではレイカさん、ヴィヴィアンナ様のところへ。
アンディ、貴方はここで待ってて。」
「うん。」
男子禁制なんだな。
「レイカさん?」
おお、ヴィヴィアンナ様だ。こんな時でも嬉しい私。
夜だが、何かに備えてなのか。
キチンとしたさっきの姿のままだ。
水色のシャツに、ピッタリしたパンツスタイル。
「ビッキーさんに来て欲しいのですが。」
ヴィヴィアンナ様はそれである程度察した様だ。
「ちょっと待って下さいね。」
5分後に強張った顔でビッキーさんが現れた。
「あの、えーと皆があなたにガルダインさんに会って欲しいって。」
「みんな?」
「そう。アラン様とリード様とネモさん。
あとは占い師のメアリアンさん。
ピーターさんとセティさんも。」
「アラン様?」
「ああ、まだお会いしてなかったのね。
グランディ国の王太子様で、リード様の兄上よ。」
そこへヴィヴィアンナ様が。
「私もついて行きましょう。オー・ギンさん、ローリナさん、他のお嬢さんたちを宜しく。」
青ざめた顔でゆっくりと歩くビッキーさん。
「大丈夫ですよ、貴女には危害は加えられませんわ。」
フワリと微笑むヴィヴィアンナさん。
影からアンちゃんが出てきた。
「そうよ。貴女はここの平和な国でゆっくり過ごせばいいのヨ。」
「ソウヨ、ソウヨ。」
肩のルリルリちゃんもハモる。
「綺麗なトリさん。」
ビッキーさんの顔がほころぶ。
「ワタシキレイ?」
口裂け女みたいよ、ルリルリちゃん。
ホテルを出て中庭に入った。
しゃらららーーん。
鈴のような音をたてて蒼い光が上空をかけて行っ
た。
そのままコテージに吸い込まれる。
「おや。キューちゃんが到着したようだね。」
ヴィヴィアンナ様の声と表情はこの先の展開を考えてなのか、硬かった。
「やはり美しいです。」
ビッキーさんの声はうっとりとしていた。
「アレハ、サバキ、スルモノ。」
ルリルリちゃんはポツンと言った。
ああ、帰りてえ。修羅場なんか見たくないなあ。
でもなあ。メアリアンさんが心配だしな。
仕方ないかあ。
はあ。
いきなり、アンちゃんに頭をクシャクシャと撫でられた。
「よーし、ヨシヨシ。」
このオネエ様は相変わらず気が回る事だ。