キミは笑った方がかわいいよ。
エリーフラワー様の塗り薬のおかげで私の手は全快だ。
(監禁犠牲者のローリア様の手も足も見違えるように回復している。)
それで、今日はこないだ作りそこねた、回鍋肉をリクエストされた。
あと、エビチリ。
「ではエビマヨネーズも造りましょうか。」
エビチリのエビは卵白と片栗粉の衣で揚げる。
残った卵黄はチリソースに入れる。とろみもつくし、まろやかになるのだ。
エビマヨネーズは、マヨネーズソースにコンデンスミルクを入れるのだか。
なかったから砂糖と牛乳少々とお酒で代用だ。
今日はリード様夫妻と王妃様。そしてエリーフラワー様、エドワード様だ。
アンちゃんはエラ姫様の護衛だ。姫は帰国の途についてらっしゃる。
「美味しーい!エビだわ、エビ。海老好きなのよ」
良かったです。
「ファミレスを思い出すわー!中華街ではなくってね。」
悪かったな。
「こないだエラ様とお話したのですが。」
と、ヴィヴィアンナ様。
「以前からアラン様とお知り合いだったとか?お互い憎からず思っていらっしゃったと。」
「あ、あー、うーん、そうかしら?
確かにもともとの婚約者はエラさんだったのよ、
ただ、アランよりひとつ年上だったし、
あのアメリアナさんがうるさくってね。」
「自分が婚約者になりたいと?」
「そうそう。そんな器でもないくせに。
それからエラさんは持ち込まれる縁談を断って引きこもったわ。
初めは向こうの王様も怒ったんだけどね、段々とアメリアナさんがやらかすから黙認したの。」
「思った通りになったわけですね。」
そこでエリーフラワーさまが口を開いた。
「今こそ、王妃様の特技を活かすべきですわ!
また、漫画でお二人の物語を描くのです!秘められた恋。意地悪妹に引き裂かれたけど、お互いに忘れたことはなかった!
素晴らしいお話になりましてよ!」
「また、ベストセラーでがっぽ!がっぽ!ね!
うふふふふのふ!」
ゼニのマークを指で作りご満悦な王妃様。
「そうです。王妃様は乙女心のエキスパートですわ。
こないだのエラ様とのご挨拶とセリフ。
すごく恥ずかしかったですけど、効果抜群でした。」
「でしょ!でしょ!あの白いバラに、映える青い服。いきなりの騎士の誓い。
我ながら、バッチ、グーだったわ!」
ええっ。アレは王妃様の演出だったのか!
それにバッチ、グー。
安定の昭和の古くささ。流石です。
昭和の少女漫画に思いを巡らせていたら、
思い出した。
「もしかして。庭で野菜を作っているアルバートさんって、王妃様が改名したとか?」
「あ、そうよ?会ったのね。
ヒゲモジャで、髪も長めで多分染めてるわね。
わざと老けた感じにしてる。
きっと若いのに。だからアルバートと。
僕は風のごとく。なんて言うからね。あの漫画を思い出すでしょ。」
「拙者も良く話します。感じのいい御仁です。」
…良く考えたら怪しい人では。
「本名はなんだったかしら。」
そこにスケカクが。
「お庭番といっしょにいつもいますからな。
髪はマメに染めてるのは報告を受けてます。
黒いけど、きっと茶色でしょう。
3年ほど一緒におりますが、怪しいところは特に。
先代の庭師のじいさんの紹介だったから身元は、軽く調べただけでしたが。」
「ちょっと締め付けますか?」
えっ?
ほんの五分後、アルバートさんは王妃様の御前に連れてこられた。
「あの、な、なにか?野菜にしゃくとり虫でもついてましたでしょうか?」
「いいえ?あなたちょっとヒゲをそって、散髪して色を落としてらっしゃい。」
「ええっ!服装自由、染髪OKの職場ですってハロワに!」
「はい!御免!」スケさんの手刀。
「ばたんきゅー。」
ああ、、これなのね。不審な令嬢たちを駆除してきたワザ。
アルバートさんは連れて行かれた。
しばらくして、戻ってきたが、切られて色を落とされた髪は茶色だった。
髪で隠れていたが薄荷色の色の瞳が現れた。
髭をおとしたらやはり若い。20代前半だね。
ああ、これは。
「あなた、エレンね?セバスチャンの兄のエレンでしょう。似てるもの。」
「…はい。もうエレン・レッドの名は捨てました。」
「アリサが解放されて入院してるのを知ってる?」
「ええっ!母は助かったのですか?
よ、良かった、、。」
すぐにマーズとマーグが呼びつけられた。
「お前たちは、トーマとトーマスかあ?大きくなって。」
そういえばそう言う名前だったなあ。
「僕らも、その名前は捨てたよ!エレン兄さん、でなくて、アルバート兄さん?」
三兄弟は抱き合い、泣きながら、笑いあった。
感度の再会である。
もう、6年前になりますが、とアルバートさんは語り始めた。
「豚にのってオザキになってガラスを割ったやつね。」
「あの日のアレは陽動作戦だったのです。
父の目と、屋敷の護衛やらを引き付けて、母を逃すはずでした。
実際、逃げだした豚を捕まえるのもたいへんだったのですよ。」
へー。
「ところが。セバスチャンが父にチクったのです。」
「えっ。セバス兄が?」
「あいつは腹黒だ。俺に協力しますから、と近づいてきて。裏切った。母は父のものなのだから逃げるなんて認めない、と抜かした。」
アイツはマグロの餌になって良い。
「うーん、同じ船に乗って見張ってる忍びに言っておくわ。」
オー・ギンさん、いたんですか?
また口から出てましたか?