とりあえずは、『しろいきつね』でいいかな。お名前。
「ああ!実在したんだ!!」
「我らをお守りくださいっ!!白のお狐様っ!」
…やはり、言いわける事にしたんだな。
びゃっことビャッコじゃね。
白蛇に縛られながら頭をさげる。デイーロンの民。
それをよそに、
「ただいま!キューちゃん。お迎えかい?
ありがとう!」
ネモさんにすり寄るキューちゃん。
「どう言うことだ?」
狼狽える。砂漠の民。理解できないようだ。
ネモさんが捕虜に向き直る。
「勝手に我が国の民をさらおうとしたのはキミたちだ。詳しく聞かせてもらう。」
キューちゃんの目がメアリアンさんで止まる。
「ええ、キューちゃん!こいつらは私たちを襲って、私をさらおうとしたの!」
するとキューちゃんが蒼く光った!
口元に光が満ちる。
「えっ、いきなりかい?まだ彼等には聞きたいことがあるんだけどなア。」
ネモさんの言葉に、仕方ないなあ、みたいに頭を振る。
口からごく僅かの光が出る。
細く絞られて彼らの額のサークレットの宝石に当たる。
ぱりん。
とても良い音がして宝石が割れた。
「安心せい、峰打ちじゃ。と言ってる。」
「ええ、何なさるのか、白いキツネさま!
これは先祖代々伝わる大事なサークレット!
石がなければただの輪っかじゃないかっ!」
「あのさア。自分達の立場わかってる?
もう少しでこの光が、額を撃ち抜くところを、
ネモ公が止めてくれたのがわかんないのかっ!」
怒るアンちゃん。
しかし白いキツネかあ。
間違ってはいないけど、何となく武田鉄○が浮かぶのは何故かしら。
「や、やはり貴方がネモ殿か。」
ガルダインと呼ばれたリーダーがつぶやく。
「噂は聞いてるみたいだね。キミ、ギガント国に出入りしてたんだって?」
「ガルダイン様は、姉君が心配で!」
威勢がいいあのちびっこが飛び出してくる。
毒で痺れた足でタタラを踏みながらも。
目力が強いメジー(仮名)だ。
「とりあえず、詳しく話を聞かせてもらおうか。
場所を移そう。
…キミたちの態度にキューちゃんが、怒ってる。
本気で怒ると私でも止められない。」
「どうしてなのですか。白いキツネさま。我々の守り神ではなかったのですか…」
ヒョロメガネが呟く。
キュー。
「何だって?ああそうなのか。
…彼が言うにはね、砂漠の国には千年程前に行ったことがあるそうだ、うん?そこで、
当時の王子と仲よかったと。エルメ王子とか言ってるよ。」
「で、伝説のとおりですじゃ!」
おっさんが感嘆する。この人はまだまともそうに見えるけど。
「そうなんですか!マスター?」
マスターだった。きっと剣のマスター?ソードマスターとかかな?
ねえマスター、作ってやってよ、カクテル。失恋忘れる奴とかじゃないよね。きっと。
「エルメ王子は好きだったけど、他の人はうざかったと言ってる。
立派な神殿もらっても要らないし、
何故、水晶やらアメシストをお供えするんだ、
食えないし、つまんない。
焼いてやったらシトリンになって逆に喜ばれたけど。
それに?アメトリンっていうの?半分紫、半分黄色。偶然できた奴が高く売れたからと。」
「そうです、その宝石を大事にして代々受け継いできたのです!」
砂漠の国には水晶の洞窟があって、水晶の加工品が名産だと聞いたことがある。
「もっともっともっと!って、アメシスト持ってこられて閉口した。
それに色々あったから、嫌になった。
エルメ王子が亡くなったら国を出たって。」
「そんな。白のキツネ様は私たちを見捨てたのですか?」
メジー(仮名)がいう。
あら、この子。小柄と思ったら女の子じゃん。
へええ。やたらリーダーことガルダインを庇うのは、ホの字なんだな。
ほのじだね、コレで通じるだろう♪シャ○ダ、ドゥ○ーで、夏ざかりと来たもんだ。
コーーーーン。
「ああ。怒っている。
長くは生きてるけど、カミ?なんかじゃないって。
押し付けられるのが重くていやだった。
しかも白い虎なんか連れてきて、どっちが強いか?
どっちが真実のビャッコか?
ファイト!!なんかやらされてブチ切れたと言っているよ。」
そりゃ嫌になるわ。
「それからね、額の石が割れたのは、
元々、クラック?ひびが入ってたって。」
「そんな?ヒビやインクルージョン(内包物)はホンモノの印だって!!」
パワーストーンの店でそのセリフ何回も聞いたよ。
多少クラックが入ってたらレインボーが出て綺麗なのは確かだけど。
前世の娘の亜衣がパワーストーン好きで、何回か付き合ってそういうお店に行ったけどね。
買ったクラック水晶は何年かしたら砕けたよ。
「とりあえず移動してもらおうか。コテージがある広場がいいでしょう。」
「あそこか!くくっ。特別な護衛が沢山いるからいいよね。けけけ。」
アンちゃんが悪い顔で笑う。
スケカクさんやその他護衛が砂漠の国の連中を連れて行く。
「…メアリアンさん、ちょっといいですか?」
ネモさんに何やら囁かれるメアリアンさん。
「わかりましたわ。レイカさん、行きましょう。」
「あっ、ハイ。」
「キューちゃん。2人を送っていって?頼んだよ。」
キューちゃんが背中を見せて平たく横たわる。
えっ!乗っていいの?うそっ、嬉しいわ!
「レイカさん、馬に乗れますか?」
「ええ、私はわりと地方の出身ですから、ホホホ。」
「私あまり自信がなくて。」
なるほど。王女様だもんな。
「では、私の背中にしがみついてくださいね。」
キューちゃんに首輪のように巻きついてるヘビ。
それが手綱状になってくれた。
「では、行きますよっ!ハイヨー!!」
すごい!!滑るように飛ぶように進む!
蒼いひかりに包まれて抵抗なく、草原も、丘も、街も通り過ぎていく。
というか、ちょっと浮いてないか、コレ?
「レイカさん、とりあえずランドさんのところへ
行かなければ!」
「わかったっ!!」
「そこで結婚の書類に立ち会い人のサインをお願いします!!」
はいい? 今何と??