適材適所と、襲撃と。
次の日。ミミさんたちはひと足先にブルーウォーター公国へむかった。
一応、白鬼がついてはいるが。簡単な乗り合い馬車だ。
「身元を隠すには庶民に紛れるのが1番さ。」
アラン様はそう言って、不安そうな彼女達を送り出した。
「本当は?」アンちゃんが真顔で聞く。
「運試しさ。これで襲われて落命したら、それだけってことだ。不満かな?ネモ殿。」
「いえ、王家乗っ取りを企てたり、よく考えたら王妃様に暴言を吐いたりしてましたからね。
特に私の方から、道中の護衛はしませんよ。」
ネモさんはそのままアオを呼んで帰っていった。
「王妃様はこちらに残られるのかしら。」
「そうね。残られるんじゃない?修理もそこそこ済んでるみたいだしね。」
「父上と積もる話があるようだ。」
そうなんですね、アラン様。
巻き込まれないうちに、速攻帰ります。
メアリアンさんが来た。
「もう帰るのかい。もう少しゆっくりしていてもいいんだが。エラもミドリナ様も喜ぶ。」
あら、アラン様が優しいじゃないの。
貼り付けてるような笑顔だけど、笑ってるよ。
「ありがとうございます、アラン様。
ここに長くいると面倒な事になりそうなので。
でも、また来ます。」
メアリアンさんも軽く微笑む。
ところで、とメアリアンさんが続けた。
「アラン様。昨日王妃様が、おっしゃった助言ですね。
リーリエよ、生き延びたいなら道を探すとよい。
というものなんですけども。
そのお言葉を聞いた途端、いきなり二つの映像が
浮かんだんです。リーリエさんの未来というか。」
「ほう。どんなものなのかい?」
目を細めるアラン様。
「ひとつは。やはり自分を変えられなくて、産後に処分?された彼女。
ミミ様が彼女の亡き骸にすがって泣き崩れているのが見えます。
もうひとつは。
彼女、ハニトラ専門のクノイチになってました。
とてもセクシーなスタイルと格好で、
王妃様がリアルなフージコチャアアン♡と言って喜んでらして。
そんなハシタナイ格好してっ!胸なんか半分出てるじゃないのっ!って、
ミミ様が泣いてました。レイカさん?もしかしてフージコチャアアンの意味わかるんですか?」
ああ、うん。意味はわかるよ、そう来たか。
あの巨乳に、厚みのあるボッテリとした唇。
ハニトラ要員かあ。似合うかもなあ。
どっちにしろミミさんは泣くのか。
難儀なことだ。
「ふじこちゃんは。
私の世界でのセクシーのシンボルなんですよ。
どっちかというと悪女ですね、クールな。」
まあいずれにしろ彼女が選ぶことである。
「彼女が今から行くところは忍びの巣だからね。
開眼することもあるかもねえ。」
アンちゃんは微妙な顔をした。
陸蒸気で帰った。なんとこのグランディ王国をほぼ一周しているよ。
以前はネモさんとこまでしかなかったのにね。
あとは王都と主要都市までつなぐみたい。
真ん中通るのは山脈とかあって無理だな。
そのうちトンネルとか開通するんだろう。
プロジェクト○。
旅はーまだーおわらないー♬
「最近海産物が手に入るようになったから、海沿いまで伸びたんだな、とは思っていたけど。
改めてチェックしてみるとわりと完成してたんだね。」
「いつも王都とブルーウォーター公国の往復しかしないものネ。
だいたい周りを護衛がいたり、焼け野原だったりしてさ。景色を楽しむゆとりがない、非常事態が多かったものね。」
本当だ。青いそらに白い雲が浮かんでいる。
入道雲だ。夏だからね。
ソフトクリームみたいで美味しそう。
ああ、ネモさん牧場のパフェ美味しかったわ、、。
まもなく、ブルーウォーター公国につくな、
牧場に行ってアイスを食べよう。
何事もなくゆったりとした旅路。
良いね!
そう思っておりました。
「!レイカちゃん、メアリアンさん、身体を伏せて!外にでるなよ。
メアリアンさん、ツッチーいるね?
ネモさんよんで!襲撃だ!!」
バラバラと後ろの車両から降りてくる護衛たち。
前方に馬にのった団体様が見える。
砂煙を立てて近づいてくる。
まさか?馬賊的な?怖いひとたち?
えっ?
私たちが襲われる?なんで??
陸蒸気の進路を妨害して前に回り込んでくる。
止めようとしている。
日焼けした赤い肌。風になびく黒い髪。
薄い白い服。
頭には揃いのサークレットを付けてる。
そこにはデカい宝石がついてる。
ひとりの男が叫ぶ。
「占い師の女を渡せ!未来を見通す巫女姫だ!
うちの国へ連れて行く!!」
なんだとお!
「チッ、厄介な。砂漠の国デイーロンの奴らだ。
あんな遠いところからわざわざ出張ってきやがった。」
護衛たちと揉み合いになる騎馬集団。
アンちゃんもナイフを構える。
「俺の後ろから出るなよ!スケカクさん!頼む!」
彼らの中心にはいって守られてる私たち。
そうだ、鳥に向かってシャウトだ!
「S、O、S!」
空中のカラスが唱和した。
「えす、おー、えす!」
「えす、おーー、えす!!」
空が真っ暗になった。