見た目以上に実は。涙もろい過去がある。
誤差報告ありがとうございます!
訂正致しました。
リーリエさんは震え出した。
「わ、私は子供を産んだら始末されるのですか?」
そんな目で私を見ないで欲しい。
「当たり前だろ。死の翼を持ってるだけで死刑は確定なんだ。知らなかったとは言わせねえよ。
媚薬もキッツイのを用意してたじゃねえか。
腹に子どもがいなけりゃな、とっくに蒼い光に焼かれてたんだよっ!」
言いにくそうな私を見てアンちゃんが続けてくれた
「そうかい?今すぐコロリでもこっちはかまわないんだよ。」
アラン様が黒い笑顔で言う。
「とりあえず子供を産ませる場所はどうしましょうか。
救護院?孤児院?難民収容施設?
あ、使われてない別荘とかいいかもね?よくあるじゃない。リゾート地に打ち捨てられてる奴。」
「母上、塔の中は?ホラ、そこの古い塔。」
リアルにお化けが出ると聞いてるぞ。
「メリダの残党が来ないところか。」
王様も思案顔だ。
「それでは、元侍女長のヘレナのところは?
あそこなら残党はこないでしょ。」
「なるほど、レイカさん。侍女長のところのパーツ夫人も大分回復してきました。彼女は経産婦ですからアドバイスくらいは出来るかも。
さらに外からみたら、自領が無くなった哀れな妊婦を保護してるだけですからね。体裁がつきます。」
ネモさんが、頷きながら言う。
「そうか。まとめて毒抜きね?フグの卵巣の粕漬けか。」
王妃様も同意した。
「なるほどね。けけけ。白鬼よ。
良かったじゃないか。愛妻パティちゃんと、新しい恋人のリーリエ嬢との楽しい三角関係だ。くくく。流石にレイカちゃん。気が回るねえ。」
アンちゃん!私それは考えてなかったよ!
しまった、マズイよね?
「あ、貴方結婚してたの?それなのに私にあんなに?」
「してないとも言ってないよね。聞かれなかったから。」
しれっと真顔で返す白鬼。
やっぱり女の敵だよ、アンタ。
少しぐらい苦労していいわ、やっぱり。
「ふふん、コレで私も溜飲が下がると言うものだ。
白鬼。しっかりやれよ。せいぜいオマエの子だと誤解されないようにな。」
「アラン様。ご勘弁を。パティが気の毒ですよ。
ーー彼女も妊婦なんですから。」
ええー、それは可哀想。
「だけどね、忍の保養所のなかにご婦人達のシェルターがある。
そこの世話をするのがヘレナ達の仕事だ。
シンディ、お前たち夫婦はそこに住み込みだろ。
奥さんが妊婦なら却って母親、パーツ夫人の近くから離れない方がいいだろ。
何、必要以上にミミたちに手を貸してはならぬ。逆にな。」
王のひと声で忍びの保養所の中で保護されることになった。
「ミミさん。
我がブルーウォーター公国には貴女のようにパートナーに虐げられた女性が何人もいます。
私の母もそうです。さっきの白い髪の彼、シンディ君の、奥方の母上もそうだ。
きっと彼女達と気があうでしょう。
貴女は団体生活を学び、自分のことを自分ですることを学ばなくては。」
ネモさんはやはり可哀想な女性に弱いんだな。
「ありがとうございます。」深く礼をするミミ様。
「え?ミミ母さんはそこでずっと生きていけるの?」
目を見張るリーリエさん。
「絶対ではありません。今後の彼女を見てからです。
彼女がやって行けそうなら、ご婦人の駆け込みシェルターを将来的に手伝ってもらっても、と言う話ですよ。
さっきの話の説明になりますが、ウチのブルーウォーター公国は虐げられた女性を保護するシェルターがあるのですよ。」
「聞いたことありますわ。今の話がそこでしたのね。
そちらに逃げ込めたら、と何度思ったことか。」
「え?ミミ母さん、あんなにお父様に大切にされていたじゃないの。不満があるように見えなかった。
いつも綺麗な服をきて、美味しいものを食べて。」
「でもね、外には出られなかった。カゴの中の鳥だったのよ。監禁か、軟禁か。不機嫌な顔をしたら責められるからいつも薄く笑っていたのよ。」
「そんな。」
実父の鬼畜さはすべては受け止められないか。
色々さっきまで聞いていただろうに。
理解することを拒否してたのかな。
こほん。
咳払いをして、
「それでね、そこは忍びたちが引退した後に暮す、
保養所の一角にあるんだよ。
リードを守って怪我をした夫婦とかがいる。
いくつか棟があって女性シェルターは一番真ん中で守られてるのさ。
そこで出産まで受け入れてくれる、とネモ殿はありがたく申し出てくれてるんだ。」
アラン様が静かに説明をする。
「そこのシェルターには、今戦災孤児の少女と、夫に虐げられたご婦人がいる。
世話をしてるのは元ここの侍女長、ヘレナだ。
きっと顔を見たことがあるのではないかな、ミミよ。」
王の補足で色々なことがわかって、二人とも納得して行くようだ。
「そーれで、このシンディ君は。逃げてきた女性を見つけて保護したり、追っ手を始末したりしてるのさ。
夫婦で保養所に住み込んでる。特に怪我もしてない現役だから、ま、時々かりだされるってワケ。
ハニトラはお得意だけどさ、奥さんのまえでアンタにちょっかいは出さないだろうよ。」
アンちゃんが付け加える。愉快そうだ。
白鬼はとても嫌な顔をしている。
やれやれ。
「リーリエよ。そなたも生き延びたいのなら、自分でその道を探してみるのだ。
まず、自分がどれだけの事をしたのか。
しかと理解して反省するが良い。」
王妃様の言葉でその場は収まった。
その夜、アラン様の離宮に泊まるように誘われた。
ご遠慮したかったけど、
メアリアンさんをコッソリと呼びたいのだと言われて、了承した。
彼女は私の侍女に扮して離宮に入った。
すると。
「ああ、エラ様!おめでとうございます!」
エラ様が中で待っていた。ミドリナ様も。
「アンディ、どうだ?安全か?ここは?」
アラン様の問いに、
「だーいじょうぶですヨ。何を話しても。」
ニコリ。
太鼓判を押すアンちゃん。
「ーー!」
抱き合う三人。
「あ、姉上。お幸せそうでよかった。色々ごめんなさい。」
「貴女こそ苦労したわね。傷だらけになったとか?」
そこで、ツッチーが首元から剥がれる。
「この通り傷も薄くなってきて、この子のおかげですわ。」
「こちらにつきっきりで、アナタに構わなくてごめんなさい。」
「いいえ!いいえ!お義母様!こないだも守っていただきました!足の、指のこと!」
「もう、コレで貴女をアメリアナだと思う人がいなくなればいいのだけど。」
「姉上、お義母様。今日私、あのリーリエさんを見て、昔の私を見ているみたいで恥ずかしい思いをしましたわ。
アラン様にもご迷惑をおかけいたしました。」
「……そなたはただ、子供だっただけだ。性根は悪く無かった。
何しろ、媚薬だの、毒薬だのと物騒なものは持ち込まなかったからな。
今日は三人で募る話をすると良い。
そうだ、レイカ殿の兄さんとしあわせにな。
裏表のない真っ直ぐな人間というものは、良いものだ。」
アラン様は優しく笑って退室した。