ひとり上手でいたいから、心だけ連れて行って。私を連れて行かないで。
「私はね、レイカ。ミミには凄くいじめられたの。
あの子は王と結婚したかったのよ。」
「従姉妹なのに?あー、ギガントの王太后も従兄弟同志で結婚して、ギカント王が生まれたんでしたか、、、って、
何で私が王妃様と同じ馬車に乗ってるんですか?」
私は家でゆっくりしたかったのに、くすん。
馬車は切り通しを通る秘密ルートで王都へ向かっているのだ。
ドナドナドーナ♫の気分である。
「ほほほ。良いじゃないのー。ホラ、そこに温泉があるわよ。湯布院という、いーい、温泉ではないけどね。」
「あっ、ハイ。日本エレキ○ル連合のネタですね。
それより、この温泉で茹でると黒卵になるんですよ。
…ではなくて!何故私がついて行かなくてはならないのですか?」
「エリーフラワーの許可は取ったわよ。もうかなりつわりも落ち着いてきたから、自分たちのことは自分で出来ます、と。」
それにね、と声をひそめる王妃様。
「アンディを止められるのはアナタだけ。」
…似たようなことをアンちゃんも言ってましたけどね。
私はみんなのストッパーか。
「私が女狐の化けの皮を剥がしてやりますわ。」
メアリアンさんだ。同行してくれた。
是非是非やってくれい。ハニトラかける人は嫌いなんだよ、あたしゃ。
そしてネモさんがついて来てくれてる。
今回はキューちゃんはお留守番だって。
「また、城を壊されても困りますから。」
アンちゃんは厳しい顔であたりを見回してる。
虎男くんと虎子ちゃんが横を走ってるよ。
美しいよ。強そうだよ。
「素敵なネコちゃん達。ウフフ♡」
相変わらずビッグキャットがお好きだな。
厳しい顔はニヤケるのを堪えていたんかーい!
「あとはね、ツチノコたちが姿を消して貼り付いてますよ。馬車にね。」
ありがとう、ネモさん。
しばらく山の中を縫うように走って、王都に馬車は着いた。
岩肌に隠し扉があった。
また、コレ、王家の秘密よね、ああ、知りとうなかった。
王妃様を待ち構えていたのはスケカクさんだ。
「王妃様。お疲れ様でした。」
「今はどういう感じなのじゃ?」
隠し通路を急ぎ足で歩きながらの問いに、
「王の従姉妹が助けを求めているのだから、それなりの対応をしろ、と言っております。
リーリエ嬢が。」
スケさんがにがりきった顔で言う。
「ミミ様ご本人でなくてか。お偉いことだわね。」
「リーリエ嬢は、今日は白鬼と仲良く出かけてますよ。」
「へえ。ハニトラ上手くいってるの。」
アンちゃんがニヤリと悪い顔で笑う。
バーン!
「あなた!帰りましたわよ!」
いきなり王妃様が前触れもなく、王様の私室を開けた。
そこには中年女性が一緒にいて王とお茶をしていた。
あららら。
「…あら。お久しぶりね。ミミさん。」
がちゃん。
王とミミさんがカップを落とした。怖いよう。
「…アラン様を呼べ。」
アンちゃんの声が冷たく冷えていた。
「元ルルド国のルララさん、お久しぶりね?イトコ同志の語らいに無粋ではないかしら?」
それでも強気で返すんだ。すげえ。
「ほほほほ。今はここの王妃ですわよ。
わざわざ嫁ぐ前の国の名前で呼ぶなんて。
物忘れするお年なのね。
ミミさん。ひとの夫と親密にしていて、妻がきても悪びれないなんて。
ずっと愛人をなさっていただけのことはありますわ?
…貴方。お茶をなさるのに私室にお呼びになるなんて。迂闊ですわね。」
「なっ!!」
怒りで青ざめるミミ様。
あああ!昼ドラみたいじゃないの。
こ、怖い。怖すぎる?
私はドロドロ系のドラマは嫌いなのよ。
えーん。
「…貴女がご苦労されていたのを聞いて同情していたのが馬鹿みたい。」
「王妃よ、そこまで言うことはないであろう。
ミミが内密の話があると言うのでな。」
そこへ。ピリリと張り詰めた冷たい気をまとってアラン様が現れた。
触ったら感電しそうだ。
「父上。お優しいのは結構ですが。この毒婦たちに王家の乗っ取りをさせるおつもりで?」
その笑顔は狂気に満ちていた。
「何のことだ?アラン。」
ミミ様は震え出した。
「何故、この2人を王宮に入れたのですか?母上の留守に。」
「いや。従姉妹が、焼け出されて困っていたのでな。」
「彼女達の部屋からコレが見つかりましたよ。」
ミミ様は顔をおおってうずくまった。
流石に、王も顔色を変えた。
「これは強力な媚薬ではないか!!」
「ええ、私も父上も、リードも。これには悩まされて来ました。
おかげで耐性がありますよ。
…おや、震えてらっしゃる。貴女の義娘?でいいのかな。
リーリエ嬢はコレを誰に使うつもりだったのか!?
アンディ、締め付けてやれ!」
「はっ。」
「やめよ、アンディ。お前が本気になると死んでしまうではないか!」
「しかし、王様。」
「ネモ。ヘビを貸して。アラン、アンディ、それで良いわね。」
「母上がそうおっしゃるなら。」
アンちゃんも無言で頷いた。
ひええ。ナイフを両手に持っていたよ。
ネモさんの袖から白蛇が出て、ミミさんを拘束した。
「あんまりではないか。」
「父上。リーリエが身籠っているのをご存じか。
私か、父上の寝所に忍びこんで御子を身籠ったと言い、王家の子供として托卵しようとしてるのですよ!
その薬を使ってね!立派な王家の乗っ取りだ!
しかも!エラを亡き者にしてなりかわろうとしているようです!」
「…なんだと?!」
「ーー!!
だから、だから、止めようとしました!
こうやって私が王のところにいれば、あの子はやってきません!
私たちが従姉妹で昔は一時期婚約の話が出た仲だと、知ってるから!!」
うわあ。アンちゃんとアラン様の瞳孔が開ききってる。
怖いよう。
どうにかしなくては。
よしっ、息を吸って丹田にチカラをこめる。
「無礼を承知で、よ、よろしいですか?」
「何、レイカ?」
「レイカちゃん?」
「ハイバルク伯爵夫人か。申してみよ。」
メアリアンさんに向き直る。
「リーリエさんとメアリアンさんを対峙させましょう。
メアリアンさん、頼めるかしら。」
「…もちろんですわ。エラ様の為に頑張りますわ。」
「メアリアン、そなた。」
アラン様がはっとなって、メアリアンさんを見た。
彼女が自分の元婚約者、アメリアナさんだったことを今さら思いだしたようだ。
もう、彼女の目にはアラン様への未練はカケラもない。
「ネモ。白鬼を呼べるかしら。」
「お任せを。王妃様。
彼の髪に仕込んだ我がヘビが、眷属を呼んで彼等を引きずってくるでしょう。」
「彼等とは?ブルーウォーター公。」
「グランディ王様。アラン様。
リーリエ嬢と、白鬼君が王宮内の某所で逢引きしているのを、我がヘビが教えてくれております。」
「彼等が仲良しだと言うウワサはね、ブルーウォーター公国まで聞こえて来たの。
白鬼が貴女たちをここに連れてきたんでしょ。
彼がいるところにリーリエ嬢あり。と思っていたけど。当たりだったわね。」
ふふん、と鼻で笑う王妃様。
とりあえず玉座の広間に移動した。
いつまでもこの大人数で王様の私室には居られないよ。
ミミさんは手を蛇に巻かれたままでうなだれてついてくる。
多分。断罪が始まる。
やだなぁ。
そこへ。ヘビ団子になった男女が転がり込んで来た。
ネモさんが口笛を吹くとヘビが四方に散る。
あらら。
ヘビがいなくなったら、結構セクシーな格好ですね。お二人さん。
服がはだけてますよ。
へえ。白鬼のむき出しの胸元にはキスマークが付いているわ。
大胆なこと。