フェミニスト。
次の日。ウチの両親は帰郷した。
「アンディ殿が帰ってきて安心だ。
ランド、メアリアンさんと仲良くね。」
さて、アンちゃんは王妃様に呼び出された。
「一緒に来てえ、レイカちゃん。」
アンちゃんに頼まれたから一緒にきたが。何故だ。
トイレに一緒にいこ?と言うぼっちが嫌いな女子中学生か。
何を上目遣いでモジモジしてるんだ。
(あ、でも今は防犯の為1人で行かない方がいいのか。嫌な時代だ。)
色んなことをめまぐるしく考えながらついて行った。
「王妃様のご機嫌が悪くなったらヨロシクね?レイカちゃんだけだよ、王妃様にポンポン言えるの。」
「昨日は祝いの席だから聞かなかっだけど、王都はどうなってるの?」
「はい。王妃様。あの時の光は王宮内部を四方八方照らして粛正した後、
長く伸びてメリダ領とミール領まで届き、焼き払いました。」
「そうだったわね。陸蒸気で焼け焦げた後を見たわ。」
「キューちゃんの、断罪の基準は私たちではよくわからなくて。
跡形なく消え去ったものもいれば、手や足に軽い怪我をしたもの。無傷なものとおります。
私たちは残党狩りに向かいました。
逆に言うと怪我したものは粛正された証ですからね。」
アンちゃんが硬い声で報告する。
隣でリード様夫妻も聞いている。
この王妃様の別荘は、彼等の自宅だものね。
ネモさんとエリーフラワー様夫婦も呼ばれていた。
なるほどね。
「あとでアラン様からお話があるとは思いますが、
陸蒸気から見えたあたりの焼け野原ですね、ミール公爵領なんですが。そちらがブルーウォーター公国に接してますから、」
「ウチに取り込めとおっしゃるのですね。」
「もちろん、ネモさんには断る権利がある。」
アンちゃんが冷や汗をかいている。
「〜うーん。しかしね。お狐様の仕業ですから。
それに大地の再生はなかなか他の人には難しいでしょ。」
ネモさんは苦笑している。良い人だな。
「もう少し良い土地も抱き合わせでくれ、と言っても良いのではないか?」
リード様が冷たい声で言う。半眼になって宙を睨んでいる。
「リード、そんな怖い顔をしないのよ。」
「アンディ様。他になにか懸念事項があるのでしょう。
お顔の色が悪いですよ。」
ヴィヴィアンナ様が静かに言う。
「は、はい、実は。何というか。」
下を向いて言い淀むアンちゃん。どうした。
「キューちゃんは子供にはたいそう甘い。今回の粛正でも14歳以下の子供はお咎めなしです。
そして女性、特に妊婦にも優しい。
よほどのことをしなかった限り、無傷だったんです。
…それでですね。まあ男性が割と焼かれてしまったんです。」
「女子供が残ったと言うわけですね?」
「ええ、ヴィヴィアンナ様。
保護を求めて王都に女性と子供がやってきました。
物騒ですからね。」
「まあ、大変。」
エリーフラワー様が顔をしかめた。
「保護施設を用意したり、騎士団を派遣したりと、治安に務めてはいます。
だけども、この2つの領はお家はお取り潰しで土地は王家へ戻されるでしょう。
元々王家の分家ですからね。」
「使い物のならない土地をネモさんに押し付けてからね。」
「リード様。ウチのキューちゃんのせいなんですから、申し訳ござらん。
復興にはできるだけの事はしますぞ。」
エドワードさまが眉を下げる。
「違うわね。キューちゃんのおかげで被害が少なく済んだと言えるわね。アランが攻めにいったら、もっと犠牲が出たでしょ。」
「それもそうですな!母上の言う通りで!」
リード様。その通りですが、もう少しご自分の意見をしっかり持ちましょう。
「それでですね。アラン様と一緒にミール領内に行ったのですが。
かなり領主の館が壊れていました。
キューちゃんの放つ光で焦げた後をみれば、そこに悪心をもっていた人がいたのがわかるのです。」
「それで?女子供を保護したんでしょ。何か問題が?」
「…問題はもうひとつのほうです。メリダ領。
そっちは白鬼に任せてたんです。
アラン様がアイツをお嫌いなので別行動したのですが。」
アンちゃんの顔に脂汗が。どうした。
「アイツが保護してきた女性が、問題でして。
21になる、メリダ家の生き残りのご令嬢。
アラン様の王妃に成り替わりたかった、まあある意味、この騒動の中心だった娘です。」
「リーリエ嬢か。確かミールのほうにもいたであろうよ。カナン嬢か?」
王妃様の眉間のシワは深くなる。
アンちゃんは静かに続ける。
「カナン嬢はもともと恋人がいました、そこの騎士です。
今回の事件には噛んでません。
以前リード様にお会いしたのも一度きりでしたよね。どうせ自分はお妃の器では無いと思っていたようですよ。
親のミール公爵の暴走です。
リーリエ嬢への対抗馬としての。
恋人と引き裂かれそうになって困っていて、駆け落ち寸前だったようで。」
「なるほどね。そのまま自由にどこにでも行けるわね。」
アンちゃんは低い声で、ええ、と言った。
「アラン様はそれでも、彼女の中に流れる王家の血脈が厄介だ。始末すべきとおっしゃって。
ですが、王がそれをお止めになりました。」
「あの人、女の人に甘いからね。
でもアランもやり過ぎよ。」
そこで、アンちゃんはため息を。
「問題はさっきのリーリエ嬢です。後見人として、メリダ公爵の愛人だった女性が付いてきました。」
なんじゃ、それ。
「私が行ってたら秘密裏に、その女を始末してました!
それは、王の従姉妹でマナカ国の大臣の1人に嫁いた、ミミ様です。
確かに嫁いだ大臣は高齢でしたから未亡人になった、とは聞いてました。
まさか、メリダに潜伏していたとは!」
え、なんか物騒なワードが?
「なんじゃと!あのミミが!王に迫りまくっていて、遠くに嫁に行ってホッとしていたのに!
あの女にどれだけ煮湯を飲まされたことか!!」
ポキリ。
王妃様の手の中で扇が折れた。
鉄扇ではないよね?
「つまりの、シンディはそのリーリエとミミを保護して、お城に連れ込んだのかえ!」
「…はい。」
「アイツは隣国に潜入を繰り返してましたから、内情にうとく、王の従姉妹と名乗るご婦人を扱いかねたのでしょう。」
「何ということじゃ!私がどれだけあの女にイジめられたか!王はお忘れになったのか!」
物すごい怒りのオーラだ。
アンちゃんがすがりつくような目で私を見ている。
ええー、どうやって収めろと言うの?
どうする?アイフル?




