まあ、とりあえず腹ごしらえだ。
ブルーウォーター公国に戻ると日が暮れて来た。
「ははうえーー!!」
リード様が溢れる笑顔でお出迎えだ。
ブレないマザコン振りである。流石である。
「よく私が来るとわかったわね?」
「私が鳥で知らせましたから。妻に。そこからご連絡したのです。」
ニコニコしながらネモさんの妻、ローリアさんもお出迎えだ。
「アンディもシンディもいないのか。よっぽどの事があったんだな。」
周りを見渡して、リード様が眉をひそめる。
「そうね、、。」王妃様がいいよどむ。
「リード様。ヴィヴィアンナ様とウチに来ませんか。レストランで何かお出ししますよ。
そこで王妃様からお聞きになって下さい。
メアリアンさんもご説明を。
エリーフラワー様にも話さなくては。良ければネモさんたちも来ていただけますか。」
「ええ、私からも説明を。」
ネモさんは快諾した。
「わかりました。お手伝いしますわ。」
とローリアさん。
「私も。是非。最近はお料理のお手伝いもカフェでしてますから。」
おや、メアリアンさんからも申し出だ。
あのワガママな元王女様がねえ。変われば変わるものだ。
駅から電話した。
「アネさん。ご飯炊いておきました。」
「卵割ってます。」
「ジャガイモ茹でておきました。」
「タマネギと人参刻んでおきました。」
「豆腐も軽く茹でておりますよ。」
「線キャベツは私が。」
「肉を刻んでおきました。」
「ありがとう!」
そう、炒飯とコロッケと麻婆豆腐である。
卵スープつき。
若い忍びが手伝ってくれてスムーズだったよ。
辛いものがダメな人はコロッケ食べてね。
多めに揚げて忍びさんたちにお裾分けだ。
彼らの賄いにポテトフライも揚げたら、リードさま?ご興味がおありですか、そうですか。
一度出したこともあったような。
「私も!懐かしいわー!ファーストフードのポテト!」
あっ、ハイ。王妃様もですね。
後は野菜炒め。
「シャキシャキしてますね。」
ヴィヴィアンナ様、キャベツは一度軽く油通しをするのがコツです。
食後の烏龍茶を飲みながら、
(この世界には緑茶もウーロン茶もある。)
まず、私か。
「…と言うわけでアンディさんから、ネモさんへの連絡を頼まれたんです。」
「私は,その時傷薬を王に塗ってもらっていたのよ。とりあえず、ツッチーを外に出したの。」
「ええ!父上が!!えー!」
驚きのリード様。
(その手にはまだフライドポテトがある。
追加で揚げさせられた。)
「王とお仲良しで結構ではありませんか。」
ヴィヴィアンナ様がふわりと笑う。
「軟膏が効いたみたいで嬉しいですわ!」
感激のエリーフラワー様だ。
「それから私とメアリアンさんとランドさんが呼び出されたんです。キューちゃんとミノタウロスつきで。」
と、ネモさん。
いや、UMAは呼んでないけど、来てくれてよかった。キューちゃんは言うにおよばず。
ミノちゃんはすごい威圧をかけたから。
「ネモのヘビがあの女を拘束したの。」
と、王妃様。
(王妃様だけネモさんを呼びすてなのは、ネモさん本人が、王妃様に敬称をつけられたらいたたまれないそうなのだ。
王妃様に呼び捨てされるたび、ネモさんが軽く震えて愉悦の表情を浮かべるような気がする。
歳上の異性に呼び捨てられるのが好きなのかもしれん。
人それぞれ性癖はあるものだ。)
「私は。ニセモノと対峙しましたの。」
おっと、メアリアンさんの証言が始まった。
「え!」
「アメリアナと名乗る女がいて王子様の側室か、王様のお手つきになりたいと。」
王妃様は鉄扇を握りしめた。
「何だと!!」
こんな怒ったリード様、初めて見た。
ご自分の絵姿が撒き餌になってると知ったら憤死するかもしれん。
怒って髪を振り乱す姿もお美しいが、指はフライドポテトの塩と油で汚れてますよ、
ちゃんとおしぼりで拭きましょう。
「大丈夫ですよ。その女も。エラ妃を亡き者にしようとした、両公爵家も。
そのほかの不穏な輩もです。
みな、キューちゃんの炎に焼かれました。」
ネモさんが無表情な顔で淡々という。かえって怖いです。
「ニセモノのアメリアナも、マレイネの同僚でしたわ。神殿の元巫女で食い詰めたところを利用されたのです。
ミドリナ義母さんの機転でバケの皮が剥がれました。それを私も横で聞いていたのですが。」
メアリアンさんが足の指の話をした。
「姉と兄の足の人差し指が長いのは本当なんです。
だけども、それは実はミドリナ義母さんの系統なのですわ。
何故か義母さんには出てませんけど。
彼女のご兄弟や父親がそうだったんですって。
ミドリナ義母さんは私が元アメリアナとバレないように、手を打ってくれたのです。」
サンダルから覗く彼女の足の指。
特に人差し指は長くは、なかった。
もう、ギガント王国の直系は他にはおりませんし、ミドリナ義母さんの御一家も鬼籍に入りましたから、
バレることはありませんわ、と
彼女は微笑んだ。




