キミは本物なのか。 私は本物です。
「…こちらは?」
「はい。ウチの領地の有名な占い師です。この方の力は本物ですよ。
赤い稲妻を成仏させました。後ろは護衛です。」
ネモさんが紹介する。
そして白鬼を見て嫌な顔をするアンちゃんとアラン様。
「初めてお目にかかります。メアリアンと申します。」
「ミノタウロスだ。」
「従えているのか。」
一同ざわめいている。
「あら?護衛の騎士はハイバルク伯爵夫人のお兄さんね。」
「はい、王妃様。私の義兄です。2人は婚約しております。」
アンちゃんが睨みを効かせるとまわりが静かになった。
元アメリアナことメアリアンさんが、偽物アメリアナに近寄って行く。
「ふふふふ。アメリアナの名前を語るなんて。へえ。ふふふふふ。ふふふふふ。」
うわー。怒ってるわ。
偽物のアゴにしっかりと手をかけて目を覗きこむ。
怒りのアゴクイだ。
ホンモノとニセモノの対決だ。じゃじゃーん!
事情を知ってる王族たちや、護衛、
その他ブルーウォーター公国から来た面々は息を飲む。
メアリアンさんの目が見開く。
「覚悟はいい?」
「な、何を言ってるの?」
「この女の本当の名前はジーン。ギガント王の落とし子を名乗っていた、マックスことミズーリの妹ですわ。」
どよめきが広がる。
「な、何を!」
「ギガント王が確かにこの者の母に通っていたのは本当のようですわ。
しかしそれもミズーリが生まれるまで。
この娘の父はギガント王ではない。」
「何で!そんな事が、わかるのよっ!」
「…ここに貴女の母親が来ています。シーナ?と言うのね。
貴女に語りかけています。どうして、ミールとメリダの口車に乗ったの、と。
貴女は昔、ひまわりとスミレが好きな心優しい少女だったのに、と。
私にシロツメクサの花冠をくれたわね、
胃が痛む私に七草粥を作ってくれた。
んー?フキ?フキの煮付けが好きで指をアクで黒くしながら、皮を一緒にむいたでしょ。
たけのこは孟宗竹より、姫竹が好きだったわね、
それから、椎の実を炒ったのも好きだった、
庭の渋柿を干し柿にして売って、形が悪いのはおやつにしたじゃないの。
銀杏が沢山なったときは早起きして一緒に拾いにいった。朝1番でないと他の人に拾われてしまうから。
それから、、。」
「もう!やめて!信じるから!間違いなくお母さんが来てるのね!!」
うん、苦労したのね。季節の山野のめぐみを精一杯受け取って頑張っていたのね。
ランド兄や下級貴族出身の人たちは涙目になっている。身につまされる感じがするのね。
私も銀杏好きだし。取ったし。洗ったし乾かしたし。出荷した。
クリもね。イガから出すとき痛いのよ、虫もつきやすいから丸い穴が開いてないか良くみたりしてね。
出荷した。
うーさーぎーおーいし、かのやまー♪
おや、郷愁にひたっていたらふるさとが脳内に流れた。
ウサギは美味しいではなく、追いし、ね。
どっちにしろ食べると違うのん。
小ブナも釣ったら食べるんやろ。
「それで、なるほど。王都の神殿の巫女になったのね。
マレイネの同僚で筆頭巫女だったのか。
その頃からアメリアナと似てる外見で、王の落とし子かも?と言われていたのね。」
「何でそんな事まで。」
「マレイネもここに来てる。」
「彼女、亡くなったの?!スイーツを作って幸せに暮らしてると?」
「あー、アメリアナが生き残って整形してる、というウワサを流したのは貴女なのね?
それをマレイネが聞いたと。
マレイネはね、神罰が下ってこの世にはいない。
蒼き光に焼かれたの。」
「蒼き光とは、こないだ空を染めたあの花火か。」
「ええ、王妃様。私とエドワードさんの言う事しか聞かない、キューちゃんの仕業です。
でもね、それは聞いてくれてるだけです。
本来なら、彼は我ら人間が扱えるものではありません。
マレイネへの処罰だって、彼が勝手にやったことなんです。」
ネモさんの言葉に、姿を現す九尾のキツネ。
神々しい蒼い光があたりをつつむ。
「な、何故かしら。震えが止まらない。」
「貴女に取り憑いたマレイネが怯えているの。わかった、解放してあげる。
貴女に聞くことはもう、ない、」
メアリアンさんが手を叩くと光の粒が現れて消えていった。
「おおう。本物だ。」
一斉に声があがる。
「お母さんは?一緒に成仏できたの?」
「いいえ?貴女が心配だからって留まってる。
逆にミズーリの方は居ないわね。」
「ジーンとやら。さっき其方がいった事は本当か。ミール公爵とメリダ公爵の口車に乗ったとは。」
「…はい。王様。神殿がなくなってしまって、途方にくれました。
兄の親友という人が来て、場所を用意してくれて。
巫女仲間たちと巫女舞をみせてお布施をもらって。
祈祷や占いの真似事をしてました。
そこへ、公爵たちの使いが来たんです。
美しい王子様の写真を見せられました。」
「ふん。箱入りだったからそれが、王太子の私か、
次男のリードかもわからなかったのか。」
「…はい。アメリアナ様が王子様と、婚約したとしか。
私たちも王太后様に祈祷を言いつけられて。
ろくに休めず、外の事なんか知りませんでした。
王子様のお名前もお顔も。
そのうちアメリアナ様が行方不明になってると。入れ替わらないか、と。彼女は整形して顔が変わったと聞いている。
強気で押し倒せば通るはずだ、と。」
「それは、ゴッドハンドの医者があちこちの少女を救った。その流れでの伝説のようですな。」
「私はアメリアナさんの身代わりになる為、教育を受けました。先ほど一緒にいた子たちも元巫女です。
マレイネは見事な金髪の為、すぐにお貴族様に目をつけられて身の危険を感じて逃げました。」
「ウチに逃げ込んできました。だから保護したのです。
だけどね、人を傷つけて九尾の狐の怒りに触れたのですよ。」
ネモさんは吐き捨てた。
そこへ。
「王都が閉鎖されて出られません!一大事ですぞ!」
ミール公爵と、メリダ公爵が現れた。
そして拘束されている、ジーンを見て目を見開いた。
「出られないのはそなた達だけだ。
エラ妃を亡き者にしようとしたそうだな。」
「我が娘を側妃にだったか?バカなことを言うものだな!」
王とアラン様の怒りは凄まじかった。
「王妃様。ミドリナ様、メアリアンさん。レイカさん。
ご退出を。とばっちりを食うといけませんから。」
ネモさんが言うと、
「そうだね、これからのことは見ない方がいいよ。
護衛は、ランちゃんと、、ミノタウロスと、仕方ないからオマエに頼むか!白鬼!」
アンちゃんが嫌そうに言う。
「ちょっとまって白鬼くん。キューちゃんが吸い取りたいそうだ。
キミからも負のエネルギーを感じるとかでね。」
いきなり、キューちゃんが白鬼の手をかむ!
「えええええー!!」
「大丈夫だよ、甘噛みだ。」
「いえ、普通に痛いですよおおお!」
「さあ、もう行っていいよ。」
ネモさんの発言と同時に、ぺっ!!と
手を吐き出すキューちゃん。
「ひどいっ!!…でも身体が軽い!」
「あなたに憑いてたものが25%offになっているわ!」
「こんなに痛かったのにたった25%off!」
おお、キューちゃんの身体が灰色になってる!
「危ないですわ!出来るだけ遠くへ!」
「エリーフラワーの研究所に逃げようぞ。あそこは堅固じゃ!」
流石、王妃様。御当主不在でも
なかに入れた。
それから、10分後。
どどーーん!!
轟音が響き渡った。
タイトル元ネタ。映画トリックのラスト。泣けますね。